International Symposium on Eco city Bogor 開催報告

2019年3月21日 於 ボゴール市(インドネシア)
2019.5.8

国立研究開発法人国立環境研究所(NIES)は、環境省、インドネシア環境林業省、ボゴール市、ボゴール農科大学(IPB)、バンドン工科大学(ITB)らと共に、2019 年3 月21 日(木)に、インドネシア・ボゴール市において「International Symposium on Eco city Bogor」を開催いたしました。本シンポジウムは、環境省の委託事業として、NIESがIPB、 ITBらと連携して実施している「二国間クレジット(JCM)促進のためのMRV*等関連するインドネシアにおける技術高度化事業」の一環として開催したものです。
 本シンポジウムは、都市・産業モニタリングシステムに関する研究・調査を通じて得られた経験や低炭素都市づくりに向けた技術的・政策的課題を共有することを目的とし、インドネシアの政府機関、ボゴール市政府、ボゴール市民、及び日本ならびにインドネシアの大学・研究機関等から約130名が参加しました。

*MRV:Measurable, Reportable, Verifiableの略。測定・報告・検証の意味。

International Symposium on Eco City Bogorの参加者

1. 開催概要

日時:2019年3月21日(木)13:00-17:00
場所:Grand Savero Hotel(インドネシア・ボゴール市) 
主催:日本国環境省、インドネシア共和国 環境・林業省、ボゴール市、国立研究開発法人国立環境研究所(NIES)、ボゴール農科大学(IPB)、バンドン工科大学(ITB)

開催プログラム
13:00-13:30

Opening Remarks

  • Dr. Ir. Ruandha Agung Sugardiman, Director General of Climate Change, Ministry of Environment and Forestry, Indonesia
  • Iceu Pujiati, SH, M.M, Secretary of BAPPEDA of Bogor City, Indonesia on behalf of Dr. Bima Arya Sugiarto, Mayor of Bogor City, Indonesia
  • Prof. Tsuyoshi Fujita, NIES, Japan  
  • Prof. Dr. Ir. Dodik Ridho Nurrochmat, M.Sc.F., Vice Chancellor, Bogor Agricultural University, Indonesia 
13:40-14:40

Keynote Speech

·        Franky Zamzani, S.Hut., M.Env, Ministry of Environment and Forestry Indonesia
NDC and Role of Green City

·        Drs. Sonny Rijadi, MM, BAPPEDA Bogor City
Green City Strategy of Bogor city

·        Prof. Rizaldi Boer, Agricultural University
Integrated Research for Supporting Low Carbon Development Policy

·        Prof. Tsuyoshi Fujita, NIES Japan
Integrative Research for Strategic Project Design toward Sustainable Development Goals in Asian Cities

 
Coffee Break
15:00-16:00

Presentations

·        Naufal Isnaeni, S. Si, MT., BAPPEDA Bogor City
Bogor City Challenges in Eco City

·        Prof. Retno Gumilang Dewi, Bandung Institute of Technology
The Assessment on the Impact of Lower Carbon Footprint in PLN’s Grid JAMALI to the Indirect GHG Emissions Generation in Greater Jakarta (JABODETABEK) Area

·        Dr. Minoru Fujii, NIES Japan
Creation of Reginal Circular Economy Spheres - High efficient energy recovery from waste

·        Dr. Kei Gomi, NIES Japan 
Identifying appropriate climate change mitigation actions in transport and residential sectors in Bogor City

16:00-16:55

Panel Discussion

ModeratorProf. Rizaldi Boer, CCROM SEAP IPB
Panelists:

  • Dr. Shuichi Ashina (NIES Japan) (5 min. presentation)
  • Naufal Isnaeni, S. Si, MT. (BAPPEDA Bogor City)
  • Prof. Retno Gumilang Dewi (ITB)
  • Prof. Tsuyoshi Fujita (NIES Japan)
16:55
Closing Remarks

2.各セッション報告

(1)開会挨拶

インドネシア環境林業省(MOFEI)、ボゴール市、NIES、及びIPBの代表者からの開会挨拶では、本事業をボゴール市のエコシティ推進の一環とし、国際的な枠組みで協力しエコシティの実現を進めていくことへの期待が示されました。また、政策側から低炭素化を進めるだけでなく市民の理解と協力が必要であること、そのために本事業を活用したいという意向が述べられました。

(2)主な講演内容

【Keynote Speech】
Franky Zamzani, S.Hut., M.Env, Ministry of Environment and Forestry Indonesia / NDC and Role of Green City
インドネシアの最初のNDCとして、低炭素化と気候レジリエンスの開発、フレームワークの透明性、国際協調などの重要性について言及し、特に都市レベルでの温暖化対策が重要であることを強調しました。急激な都市化の進展の影響や温暖化への脆弱性、経済的なダメージを減らすために、市レベルでの簡易で低コストの対策が重要であり、ボゴール市では、意識啓発、規制の導入、市民のネットワーク化、エネルギー効率向上や交通問題の緩和等の重要性について述べました。

Drs. Sonny Rijadi, MM, BAPPEDA Bogor City / Green City Strategy of Bogor city
ボゴール市では、人口の増加、ジャカルタへの通勤の増加による交通量の増加などが課題となっており、その中で2030年の温暖化ガス排出量を現状予想より35%削減する目標を掲げています。現在の5年間の中期施策としては、都市計画の見直し、緑地の改善、都市化による汚染及び廃棄物の削減、都市交通システム及び歩行者道路の改善などに取り組んでいることを紹介しました。温暖化対策としては、バスや徒歩、自転車利用の推進、建物のエネルギー使用効率の向上が重要課題です。IPBやNIESの取り組みに感謝し、研究成果を将来計画に活かしていくことが述べられました。

Prof. Rizaldi Boer, Bogor Agricultural University / Integrated Research for Supporting Low Carbon Development Policy
最初に温暖化影響抑制のための1.5℃目標の意義、アジアでの低炭素化社会実現のための革新的技術導入の重要性を示しました。さらに社会経済シナリオに基づいて、エネルギー、工業、交通、農業、森林及び土地利用、廃棄物、人口および建物などの各分野からのGHG排出、さらに人の行動変化や削減技術の普及等を統合したモデルと、それを反映させた政策やステークホルダー間の対話の重要性についても強調しました。

Prof. Tsuyoshi Fujita, NIES Japan / Integrative Research for Strategic Project Design toward Sustainable Development Goals in Asian Cities
インドネシアMRV事業におけるエネルギー消費モニタリング及び広域展開、エネルギー需要についてのシナリオ及びモデルの開発、日本での環境配慮都市への取り組み事例紹介とともに、SDGs政策の影響評価等について発表しました。

【Presentations】
Naufal Isnaeni, S. Si, MT., BAPPEDA Bogor City / Bogor City Challenges in Eco City
環境都市ボゴールにおける2015-2019年の開発プログラムとして、温暖化対策、エネルギー効率、交通、農業、緑化、廃棄物管理を掲げています。廃棄物に関しては、約2/3が食品廃棄物であり、家庭からの排出が多くを占めています。その対策として、リサイクルの推進、新しい処分場の整備に取り組んでいます。IPB、NIESとの研究成果の活用に関しては、特に交通に関する市民への調査を通して、よりよい公共交通網の整備に取り組んでいきます。さらに、環境負荷の少ないエコ住宅地区や環境に配慮した建物の推進にも取り組んでいることを述べました。

Prof. Retno Gumilang Dewi, Bandung Institute of Technology / The Assessment on the Impact of Lower Carbon Footprint in PLN’s Grid JAMALI to the Indirect GHG Emissions Generation in Greater Jakarta (JABODETABEK) Area
Jamari電力供給グリッドにおいては、毎年発電量が増加し、その多くが石炭火力によるものです。需要側では、家庭、産業、業務/商業のいずれの分野でも増加し、それに伴ってCO2排出量も増加しています。DKIジャカルタにおける将来予測として、経済成長、人口増、産業構造、交通、技術、電力消費効率等の要因を考慮し、現状と効率化シナリオの評価を行った結果、現状のままでは20年後にはCO2排出量が現在の3倍近くに増加しますが、高効率シナリオでは、約2倍程度に抑制できることが分かりました。さらにJABODETABEK地域全体においても、2倍以内に抑制可能であることを示しました。

Dr. Minoru Fujii, NIES Japan / Creation of Reginal Circular Economy Spheres - High efficient energy recovery from waste
都市域と山村・農業地域を含めた地域物質循環への日本の取り組みとして、法規制の強化及びそれに伴う再資源化等の推進、廃棄物のエネルギー資源としての活用、工場群におけるエネルギー供給の共有化の事例、IOTの活用による廃棄物の有効活用、都市域等も含めた低炭素エネルギー供給システム等について発表しました。

Dr. Kei Gomi, NIES Japan / Identifying appropriate climate change mitigation actions in transport and residential sectors in Bogor City
AIM/ExSS + AFOLUAモデルの概要、ボゴール市の低炭素化政策に基づいた2030年におけるGHG排出削減効果のシミュレーション結果、環境問題への認識や交通手段の現状と課題、家電の使用状況と節電意識等に関するボゴール市民に対するアンケート調査結果等について紹介しました。


【Panel Discussion】
Dr. Shuichi Ashina (NIES Japan) / Role of Integrated Assessment Models for Designing Eco City
エネルギー、経済、環境の統合モデルであるAIMモデルにおいて、サブナショナル/地域レベルおよび都市レベルへの展開手法と、国内において得られた低炭素化の将来予測結果の事例について述べました。

パネルディスカッションにおいては、参加者から、「ボゴール市のエコシティの目標」「原子力エネルギーの利用」「電気自動車導入のポテンシャル」等について積極的な関心が示されました。

3.プロジェクト概要

本プロジェクトの主な目的は、都市レベルでのエネルギー消費量の測定と可視化のプロセスを通じて低炭素社会の構築に段階的なアプローチを開始し、将来の衛星を利用したMRV(温室効果ガス排出量の測定、報告及び検証)技術に繋がる知見を得ることです。また、エネルギー消費量を測定するだけではエネルギー消費量を効率的に削減することはできないため、社会的行動パターンとインフラ設計の分析とを組み合わせて実施していきます。