昨年9月に環境科学会奨励賞を受賞された、金森有子主任研究員にインタビューを行いました。
後編はライフスタイルの将来について、お届けしたいと思います。

昨年9月に環境科学会奨励賞を受賞された、金森有子主任研究員にインタビューを行いました。
後編はライフスタイルの将来について、お届けしたいと思います。
環境負荷の低いライフスタイルにならないか、なるか…なったら良いなと思うけど、多分あまり簡単じゃないと思う。宣伝するとか、色んなキャンペーンするとかだけだと限界があると思っている。理由は皆既にできることはやっていると思っている気がするから。「もう分別をしているけど?」、「エアコンの温度1度上げたけど・下げたけど?」と、思っている人は結構多いじゃないかと思う。でもそれがどれほどの効果があったかというのは皆よくわかってない。やれと言われているし、それが良い事のように言われているから、やっているのだと思う。身の回りにある環境への配慮行動を全くしていない人の方が少ない。
省エネに関して言えば、現状と比べてから明らかな効果が表れるかは、別のステップだよね。
皆していると思っているだけに、さらにさせるのは大変だと思う。楽な事は多分既にしていると思うな。
どうだろう?研究的にはすごく難しい。例えば、統計で出て来る数字を見た時に統計で出てきた数字を表現できる理論があったり、過去の状況を再現出来る様なモデルを作ったりする訳じゃない。学問の世界において過去に示された理論や考えにはまらなくなって来ているからすごく難しい。それが一番、モデルを使って考える上では難しい。
例えば家で何かを買うのにお金をかけますか?というのを考えた時にめちゃくちゃ貧乏だったら、まず生きる為に食を得る事、つまり食べ物を得る事と、住まいを確保する“箱”と、あと洋服。衣食住、まさにこれが最低限。そこからおしゃれな物を着たいとか、食べ物も貧しかったけどもう少し色んな物を食べたいとかなっていく。さらにそこから発展していくと、もっと便利さや快適な生活をしたいよねってなったはず。例えば、テレビを見たいとか、冷蔵庫を持ちたいとか。日本はとっくにその段階を超えているから、多くの家庭がテレビ、冷蔵庫を持っているし、他にもいろいろな機器を持っている。もちろんまだまだもっと買いたいと思う人がいるかもしれないけど、でも実際のところ大分行き渡っているじゃない。そこまではモデルで再現出来る。過去にどこの国でも発展の過程で見られた現象だから。具体的に言えば消費支出の中で食費の割合が減って来て、他の割合が増えてきた。日本はもっと発展しているから、さらにどこにお金を使おうかという段階になりつつある。ここから先が訳が分からなくなって、モデルで再現しづらい。食事をもっと高級にする人もいる。めちゃくちゃ食に関心があって、材料をめちゃくめちゃ高い野菜を買うとか、外食をめちゃくちゃする人がいる。中には洋服に興味があって、めちゃくちゃ高いブランドの服を持つことにお金をかける人もいる。ひたすら高性能な機器の購入に興味がいく人もいる。生きるためとか快適にするためを超えると、そこからは個人の嗜好が出ちゃうんだよね。皆が目指すべき方向は無くなってしまって、今までよくいわれてきた理論がデータでは見づらくなってしまった。すると計算できない、パラメーターが決まらないということが起きる。それがすごく難しい。
まさにどうしようかと思っているところ。すごく曖昧な回答だけど、どうしようか、本当に思っている。
第2回インタビューは、金森有子主任研究員お相手に、ライフスタイルについての話題でお送りしました。 (聞き手:杦本友里(社会環境システム研究センター)、2015年9月28日インタビュー実施) (撮影:成田正司(企画部広報室))