第1回 環境経済学と政策形成のワークショップ

環境経済評価連携研究グループでは、日本の環境・資源・エネルギー経済学の研究者と政策立案者の架け橋を目指して、ワークショップを開催しました。当日は、環境経済学者に加え環境省、経済産業省、国際協力機構などから合計50名ほどの方々にご参加いただき、活発な議論を行いました。

開催日時・場所
2018年2月9日(金)AP東京八重洲通り 7階R室

企画趣旨
環境分野の政策の形成・評価において、経済学の知見を活用する新たな動きが増加している。例えば、環境省では日本版ナッジ・ユニットを発足させ、行動経済学の知見を活用して低炭素型の行動変容を促す事業が始まっている。また、これに先立って欧米では生態系サービスや生物多様性の保全・効果的な管理を目指して、ナッジを活用した行動変容策の検討が進んでいる。加えて、昨今の「エビデンスに基づく政策立案(Evidence-Based Policy Making: EBPM)」の議論を受けて、政策の計量経済学的な事後評価への関心も高まりつつある。これらに加えて、生態系と生物多様性の経済学(The Economics of Ecosystem and Biodiversity)や、経済的手法を用いた環境政策研究への行政ニーズも引き続き増加している。

国立環境研究所・環境経済評価連携研究グループでは、日本の環境・資源・エネルギー経済学の研究者と政策立案者の架け橋を目指して、ワークショップを開催する。研究者が最新の研究成果を発表し、行政官らに研究の政策的意義を解説する。また、政策立案者からのコメントや将来的な行政ニーズの共有を受ける。これらを通じて、環境分野の政策形成に資する経済学的研究の発展を目指す。

プログラム
10:00 開会のあいさつ・趣旨説明 亀山康子(国立環境研究所)/横尾英史(国立環境研究所・経済産業研究所)
10:15-10:30 参加者自己紹介の時間


Session 1:経済学と環境・エネルギー行政

10:30-10:45
岡川梓(国立環境研究所)「土地市場が評価する浸水被害額の計測」
Keywords: 気候変動適応策、ヘドニック・アプローチ、二段階推計

10:45-11:00
山口臨太郎(九州大学)「自然資本のシャドー価格と包括的富」
Keywords: 包括的富(IW)、自然資本、シャドー価格、割引率、持続可能な発展の指標


Session 2:環境・エネルギー政策と行動科学

11:00-11:30
作道真理(日本政策投資銀行設備投資研究所)「環境マネジメントシステムの波及効果:従業員の家庭における省エネ行動への影響」
Keywords: 環境マネジメントシステム、家計、省エネ行動、電力消費、波及効果

11:30-12:00
溝渕健一(松山大学)「エネルギー効率改善によるリバウンド効果の推定-省エネエアコンへの買い替えを事例として-」
Keywords: 省エネ、エアコン、リバウンド効果、データ分析

13:30-14:00
小西祥文(筑波大学)「自動車燃費規制の技術歪曲効果」
Keywords: 燃費規制、技術進歩、差分の差分の差分(DDD)法

14:00-14:15
池本忠弘(環境省)「行動科学の活用を通じた行動変容の促進に係る環境省の取組」
Keywords: 行動科学、低炭素

14:15-14:45
久保雄広(国立環境研究所)「エビデンスに基づく国立公園政策の立案に向けて:募金フィールド実験による一考察」
Keywords: 国立公園、フィールド実験、行動科学、募金


Session 3:森林と開発途上国

15:00-15:15
山本雅資(富山大学)「森林資源保全へのボーダー効果:北東アジアを例に」
Keywords: 森林、リモートセンシング・データ

15:15-15:45
山本裕基(長崎大学)「森林生態系サービスが農業生産性に与える影響:インドネシア家計調査と衛星データを用いた分析」
Keywords: 森林生態系サービス、農業生産、森林保全政策、リモートセンシング・データ、インドネシア

15:45-16:00
青柳恵太郎(メトリクスワークコンサルタンツ)「途上国におけるごみ分別の促進:JICAにおけるエビデンスに基づく開発援助の実践」
Keywords: インパクト評価、 RCT型フィールド実験、開発途上国、ごみ分別、モザンビーク

16:00-16:30
横尾英史(国立環境研究所・経済産業研究所)「政府主導型コミュニティ・ベース廃棄物管理の普及促進:インドネシアにおけるRCTからのエビデンス」
Keywords: 廃棄物収集、RCT型フィールド実験、行動経済学、開発途上国


16:30 閉会のあいさつ 日引聡(東北大学・国立環境研究所)