温室効果ガス排出量の削減の進捗を評価する-グローバルとローカルー
パリ協定からアメリカが離脱するということを宣言しています。アメリカは、現在温室効果ガスの排出量が世界で2番目に大きい国です。二酸化炭素だけで言うと世界の15%程度の排出寄与があるとされています(2014、CDIACデータベース)。もし、二酸化炭素を含む温室効果ガス(GHG)の削減が世界で適切に行われないとすると、現在の温暖化シミュレーションの予測では地球の平均気温上昇は工業化が始まってきた19世紀半ば以来2℃(パリ協定の目標)を超え、より大きな自然変化、一次産業の継続困難や気象災害などの影響を各地で受ける可能性が高まると考えられています。この2℃目標(もしくは1.5℃目標)は、パリ協定で合意された世界共通の長期目標として産業革命後の気温上昇を2℃以内(もしくは1.5℃)に抑えるものであり、2100年ごろまでの温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを含んでいます。
従って、もし、アメリカだけが今の排出量をずっと出し続けるならば、他の全世界の国が排出量ゼロにした場合でも、2℃目標は非常に困難になると考えられます。
温暖化対策は、大きくはエネルギーや産業、商業、家庭などの各分野においてなされますが、例えば日本では地域ごとに特色あるGHG排出量削減計画が作られて、緩和策が推進されてきています。このような場合、日本で言うと東京大都市圏のような排出寄与の大きな都市域での排出削減実態がどのようであるかを客観的に評価していくことが重要になってきます。本プロジェクトでは、GHG排出削減の実態を単に紙の上で統計量から推定するだけではなく、実際の排出量削減効果を大気のGHG濃度レベルや変動の変化を観測することで評価していくことを含んでいます。実のところ、これはそう簡単ではないのですが、そういう評価のための観測技術や評価技術の開発や観測点の追加が検討されています。これまで、本研究所では、地上、海洋上、航空機、衛星など各種のプラットフォームを駆使してグローバルな観測が行われてきましたが、今後はより一層ローカルスケールの観測による地域的排出量の把握のための取り組みの充実が重要になってきたということです。例えば、本プロジェクトでの東京スカイツリーにおける東京での観測の開始などは、そういった新たな目標に向かって進むための布石となっています。
本プロジェクトでは上記のように気候変動影響把握などを含み、かつグローバルからローカルなマルチなスケールでの観測活動により、今世紀末へ向けての地域や都市域でのGHG等の削減の状況の把握ならびに気候変動による各種生態系機能や人間活動の変化による気候変化へのフィードバックなどについて長期的な研究を行っていきます。同時に本プロジェクトでは、緩和策、適応策の展開のために常にアップデートされた情報発信も積極的に行っていきたいと考えております。本特集号では、本プロジェクト研究の研究内容並びに関連する研究の紹介を行っています。