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流域圏生態系研究プログラム

   慢性的な汚濁高負荷状態にある流域圏(森林、湖沼、沿岸)や開発により生態系機能が低下している大河川流域圏を対象として、生態系機能の新たな評価手法,長期・戦略的モニタリング、およびモデル解析を駆使して、生態系機能と様々な環境因子との連動関係を具体的に評価します。

   生物多様性国家戦略2010において生物多様性と生態系の回復はとても重要な国家戦略と位置付けられました。生物多様性のホットスポットとして重要な生態系の保全と、生態系機能(基本的に、生物に関わる化学的反応であり、物質の現存量やそのフローとして測定可能なパラメータを示す)を最大限に活用して生物多様性の減少を防止することが強く求められています。
   生態系機能は測定できるものですから、生態系機能を活用するためには、ちゃんと測定して数字で(定量的に)表す必要があります。ところが、定量的な評価法はほとんど確立されていません。また、生態系機能の活用には、生態系機能とその環境のあり方をコントロールする要因、すなわち環境因子との関係(連動関係、リンケージ)が明確にわからないと、どうやって活用するかの道標も作れません。しかし、その連動関係については全然わかっていないのが現状です。
   そこで、私たちは、水が循環している環境(流域圏と呼ぶ、例えば森林域、湖沼域、沿岸域)における生態系を対象として、物質の循環に着目し、生態系機能の新たな定量手法の開発・確立を目指します。さらに、長期・戦略的モニタリング、新規性の高い測定法、迅速・簡便・高感度な測定法、およびモデル解析を使って、生態系機能や生態系サービスと様々な環境因子との連動関係を定量的に評価します。対象となる流域圏は二つです。ひとつは、慢性的に窒素、リンおよび有機物が大量に入ってくる流域圏(国内)、もう一つは広域的なスケールで、開発に晒され生態系機能が低下しつつある大河川(メコン河等)の流域圏です。対象スケールに違いによって、生態系機能と環境因子の関係が変化するかについても検討します。
   これらの成果に基づき流域圏の健全性を評価して、生態系機能の保全、創造、環境修復や自然再生のあり方を提言します。さらに、研究成果に基づいて、流域圏において環境因子と生態系機能、環境因子と生物多様性、生態系機能と生物多様性を具体的に繋げる方向性やアプローチを展望します。

   本先導プロジェクトは二つの研究プロジェクトからなります。

プロジェクト1(PJ1)

流域圏における生態系機能と環境因子の連動関係の定量評価に関する研究

   PJ1は、慢性的な高負荷状態にある流域圏(国内)を対象として、生態系機能と環境因子の関係を定量的に明らかにします。物質循環・収支の算定、長期モニタリング、新規性の高い分析法やモデル解析を実施します。詳細な研究を展開する予定です。

プロジェクト2(PJ2)

戦略的環境アセスメント技術の開発と自然再生の評価に関する研究

   PJ2では、開発に瀕して生物多様性や生態系機能の劣化に直面している大河川(メコン河)流域圏を対象とします。広域なスケールで切迫した環境問題に直面している流域において、環境問題に対応した評価方法である戦略的環境アセスメント技術、それも迅速・簡便・高感度な技術の開発を行い、自然再生の評価やダム開発に係るリスク回避や影響緩和についての戦略的な保全シナリオを提言します。

関連情報のリンク

国立環境研究所研究プロジェクト報告 SR-117-2016
流域圏生態系研究プログラム(先導研究プログラム) 平成23~27年度