コンパクトシティ政策における炭素削減の隠れたメカニズムの解明:日中韓比較(令和 8年度)
Uncovering the Hidden Carbon Reduction Mechanisms of Compact City Policies: A Comparative Study of Japan, China, and South Korea

予算区分
若手研究
研究課題コード
2629CD005
開始/終了年度
2026~2029年
キーワード(日本語)
コンパクトシティ,低炭素都市,気候モデリング
キーワード(英語)
compact city,low carbon city,climate modeling

課題代表者

樊 天惠

  • 資源循環領域
    国際資源持続性研究室
  • 特別研究員
  • 博士(経済学)
  • 経済学,社会学

研究概要

2050年カーボンニュートラル実現に向け、コンパクトシティ(CC)政策は低炭素都市の核心戦略とされてきた。しかし先行研究や申請者の予備調査では、交通部門の削減寄与が報告される一方、中韓の高密度都市では建築能耗増により排出量が増加する事例も確認されている。この効果
の差異は、政策そのものではなく、都市固有の社会経済構造やエネルギー供給体制との相互作用、即ち「隠れた炭素メカニズム」に起因すると考えられる。
本研究は、日中韓の都市比較を通じ、このメカニズムを解明することを目的とする。さらに、人口減少や再エネ普及等の都市条件の変化を踏まえ、将来的なCC政策の削減ポテンシャルと限界を評価する。
「なぜ同様の政策が異なる効果を示すのか、その背後にある機序は何か」。本研究はこの核心的問いに答え、エビデンスに基づく実効性の高い気候変動対策の策定に貢献する。

研究の性格

  • 主たるもの:応用科学研究
  • 従たるもの:政策研究

全体計画

上記の学術的問いに答えるために、本研究では、日中韓3カ国におけるコンパクトシティ政策の導入状況とその炭素削減効果を比較可能な枠組みで明らかにすることを主たる目的とする。環境経済学(環境政策評価、持続可能性移行研究)と都市計画学(都市政策論、都市環境計画)の理論と方法論を統合し、以下の4つのWork Packages(WP)を遂行する。
WP1 政策体系の整理と比較分析:本WPでは、日中韓の主要都市におけるコンパクトシティ関連政策を体系的に収集・整理し、比較可能なデータベースを構築する。都市計画文書や環境基本計画、交通整備方針、建築規制、環境税制等を収集し、政策を対象分野・政策手段・強度の観点からコード化する。これにより、各国の制度的・文化的背景に基づく政策ミックスを定量化し、相違点を明示することが可能となる。
WP2 コンパクトシティ政策の炭素削減効果の実証分析:本WPでは、コンパクトシティ政策が都市のCO2;排出削減に与える効果を実証的に解明する。都市別排出データや人口密度・土地利用・エネルギー供給構成等の属性データをGISで整備し、差分の差分法(DID)により導入効果を比較推定する。さらに、Double Machine Learning(DML)で交絡因子を制御し、地理加重回帰により空間的異質性を把握することで、同一政策が都市文脈によって異なる「隠れた炭素メカニズム(空間・環境経路)」を定量的に特定する。
WP3 住民行動・政策受容性の検証:本WPでは、住民行動や文化的要因が政策効果をどのように制約・強化するかを明らかにする。移動習慣、居住選好、エネルギー利用意識、政策認識に関するアンケートやインタビューを実施し、質的比較分析(QCA)を用いて受容性を規定する要因の組み合わせを検証する。これにより、政策の現場での実効性を左右する社会的・文化的条件を把握し、「隠れた炭素メカニズム」を解明することを目指す。
WP4 炭素削減メカニズムの建模と将来シナリオ分析:本WPでは、WP1, 2, 3の成果を統合し、都市政策・空間特性・住民行動の相互作用を反映した削減メカニズムモデルを構築する。XGBoostとSHAPにより主要決定因子と非線形的相互作用を特定し、都市エネルギーモデルとライフサイクルアセスメント(LCA)を組み合わせた将来シナリオを設計する。人口減少、再生可能エネルギー普及、技術革新を考慮した2050年までの削減ポテンシャルと限界を定量化し、政策効果の臨界点・飽和点を科学的に提示する。

今年度の研究概要

本年度は、3年間の研究計画の基盤となる「政策体系の整理と比較分析(WP1)」を実施する。具体的には、日中韓の主要都市を対象として、都市計画文書、環境基本計画、交通整備方針、建築規制、環境税制等のコンパクトシティ関連政策を体系的に収集・整理する。
収集した政策について、対象分野、政策手段、政策強度等の観点からコーディングを行い、日中韓の都市間で比較可能な政策データベースを構築する。これにより、各国・各都市におけるコンパクトシティ政策の特徴および政策ミックスの相違を定量的に明らかにする。
本年度は、以上の政策データベースの構築と比較分析を完了し、次年度以降に実施する政策の炭素削減効果に関する実証分析(WP2)の基盤を整備することを目標とする。

外部との連携

該当なし

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