ネイチャーポジティブの実現に向けた海生生物の種分布・機能・多様性の評価・予測(令和 8年度)Assessment and projection of the distribution, functions, and diversity of marine species toward achieving Nature Positive
- 予算区分
- S-25
- 研究課題コード
- 2630BA001
- 開始/終了年度
- 2026~2030年
- キーワード(日本語)
- 洋上風力,ネイチャーポジティブ,海洋生態系
- キーワード(英語)
- offshore wind farm,nature positive,marine ecosystem
課題代表者
阿部 博哉
- 気候変動適応センター
アジア太平洋気候変動適応研究室 - 主任研究員
- 環境科学博士
- 水産学,生物学
研究概要
洋上風力発電施設が海域に設置されると、構造物に付着する生物が増加し、餌生物や隠れ場を求めて魚類等が蝟集し、新たな生息場が創出される。基質としての洋上風車の出現により底生生物の種数が増加し、生物多様性のホットスポットが形成されると共に、新たに創出された生息基盤が海生生物のさらなる分布拡大のための飛び石の機能も持つと考えられている。よって洋上風車の設置・運用には、生物多様性を高め、そこに蝟集する魚類資源の生産の場として機能する副次的な効果も期待される。また、カーボンニュートラル実現に向けて、洋上風車の周辺海域での海藻養殖・藻場造成を行うことで、CO2吸収源という価値の付加や、発電基盤を利用して効率的に藻場育成施設を建設できる等の利点が期待される。本研究では、海生生物の生息基盤としての洋上風力発電施設の周辺海域での海藻養殖・藻場造成の新たな展開が海洋における生物多様性の保全にも直接的に貢献し得るかどうかという問いに向き合うべく、2種類の数理モデルを開発・適用し、洋上風力発電設備の周辺海域での藻場造成・海藻養殖が海生生物の種分布・機能・多様性・コネクティビティに対する影響を定量的に評価・予測した上で、期待されるネイチャーポジティブの実現に向けた最適解を求める。また、養殖藻場を含む沿岸生態系を考慮した従来のモデルに浮体式洋上風力の設置場所となる沖合での海藻生態系を導入した海洋炭素循環モデルを開発し、カーボンニュートラルの実現に向けて洋上風力施設周辺の生態系によって新たに創出されるブルーカーボンによる気候変動緩和効果を定量化する。その上で、本研究で構築した評価・予測手法を、行政・地域・産業による意思決定支援に資する科学的基盤として位置づけ、当該海域での藻場造成・海藻養殖によるネイチャーポジティブ・クライメートポジティブの実現に向けた具体的な提言を行う。
研究の性格
- 主たるもの:応用科学研究
- 従たるもの:技術開発・評価
全体計画
洋上風力発電施設の周辺海域で藻場造成・海藻養殖を新たに展開する場合に見込まれる海生生物の種分布・機能・多様性・コネクティビティに関する影響とネイチャーポジティブ効果を、本研究で開発する分布推定モデルと幼生分散モデルを組み合わせて用いることで包括的・定量的に評価する。洋上風力発電施設が運用される今後数十年間の気候変動や社会変化の影響も考慮すべく、サブテーマ3-2で扱うクライメートポジティブや、ソーシャルポジティブの観点とも結びつけて可視化する枠組みを構築した上で、当該海域での藻場造成・海藻養殖が海生生物に及ぼす影響を自然資本会計に資する形で定量化し、ネイチャーポジティブの実現に向けた最適解を求めると共に、当該海域での藻場造成・海藻養殖の実施に向けた具体的な提言を行う。
今年度の研究概要
洋上風力発電設備の周辺海域において、対象とする解析範囲の設定と海生生物の選定を行う。対象海域における水温、塩分、流動場、水深、光環境、クロロフィル濃度等の環境因子に関する海洋環境データと、対象とする海生生物の分布データを、既往文献もしくはオープンデータベース等から広く収集する。得られた海洋環境データと海生生物の分布データを統合解析し、海生生物の確認位置とそれぞれの環境因子との関係性を定量化した上で、現在の海洋環境におけるそれぞれの海生生物の生息適地や分布域を規定する環境因子を推定する分布推定モデルと、ソース・シンクの関係性(コネクティビティ)を推定する幼生分散モデルの開発を並行して行う。
外部との連携
サブテーマの研究代表者は東京大学大気海洋研究所の藤井賢彦氏。
備考
S-25-3(1)-1