ブルーム形成ラン藻の塩分耐性獲得の解明に関する研究(令和 8年度)
Elucidating How Bloom-Forming Cyanobacteria Acquire Salt Tolerance

研究課題コード
2628CD008
開始/終了年度
2026~2028年
キーワード(日本語)
ラン藻ブルーム,細菌ゲノム,ウイルスゲノム,遺伝水水平伝播,汽水湖
キーワード(英語)
cyanobacteria bloom,bacteria genome,virus genome,horizontal gene transfer,brackish water lake

課題代表者

田辺 雄彦

  • 生物多様性領域
    生物多様性資源活用研究推進室
  • 主幹研究員

研究概要

本研究では、汽水環境でのブルーム形成ラン藻を含む細菌群集における塩分耐性遺伝子の水平伝播動態の多様性・環境動態・機能獲得メカニズムを明らかにするため、(1)網走湖における細菌に起こる遺伝子水平伝播の全容の解明、(2)国内(外)の汽水湖における遺伝子水平伝播動態の多様性の解明、(3)in vitro遺伝子導入実験による遺伝子水平伝播による塩分耐性獲得の実証、の3課題に取り組む。得られた結果をもとに、微生物間の遺伝子水平伝播が湖沼の微生物生態系と生物多様性におよぼす影響について評価・考察する。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:モニタリング・研究基盤整備

全体計画

細菌群集に起こる遺伝子水平伝播の全容の解明を目指し、はじめに塩分耐性遺伝子の水平伝播のホットスポットと推定した網走湖(北海道)をフィールドに設定して研究を行う。網走湖の複数地点にて表層水に加えて適切な深度からラン藻ブルームと細菌含有環境水の採集を行う。ブルーム形成ラン藻を含む細菌類とウイルスについて、単離株ゲノム解析・メタゲノム解析を用いて網羅的に塩分耐性遺伝子の水平伝播の痕跡を調べる。各採取箇所について、クロロフィル濃度、塩分、溶存酸素濃度等の環境変数を取得し、微生物の生息に大きく影響を与える湖の温度・塩分成層構造を明らかにする。(1年目以降)
国内外の汽水湖における遺伝子水平伝播動態の多様性の解明のため、宍道湖等のラン藻ブルームの発生が見られる他の国内汽水湖にも調査範囲を広げる。網走湖と同様の解析を行い、汽水湖における塩分耐性遺伝子の水平伝播動態の多様性と環境動態を調べる。公開データベースにある海外湖沼のメタゲノムデータを参照・解析する。取得された国内外の湖沼の塩分耐性遺伝子配列の比較解析を行い、地域及び地球規模のスケールでの多様性の全容と進化的背景を探索する。(1年目以降)
in vitro形質転換実験による遺伝子水平伝播による塩分耐性獲得の実証を行う。ミクロシスティス塩分耐性株のスクロース合成遺伝子(スクロースは塩分耐性を付与する)のノックアウト、ミクロシスティス塩分感受性株にスクロース合成遺伝子をノックインすることにより、遺伝子水平伝播による塩分耐性の喪失と獲得を実証する。ラン藻以外の細菌のゲノムに塩分耐性遺伝子の水平伝播の痕跡が検出された場合、その細菌の分類学情報を参考に単離を試みて生物の実体をとらえる。塩分耐性遺伝子がコードされているウイルスがメタゲノム解析から見つかった場合、湖水サンプルのウイルス画分をミクロシスティスの網走湖産株に添加してインキュベートし、「溶藻」した培養液からのウイルスの単離にもチャレンジする。ウイルス単離に成功した場合は、ミクロシスティスへの感染試験による塩分耐性の獲得も実証する。(2年目以降)
以上の結果に基づき、細菌における塩分耐性遺伝子の地域、地球レベルのそれぞれのスケールにおける多様性を系統学的に整理し、その伝播ルートおよび伝播様式を明らかにする。さらに遺伝子水平伝播の動態と水質・水理データとの相関分析等により、変動環境における細菌群集の遺伝子水平伝播に関する先駆的な知見と位置付けて成果をとりまとめ、学術的体系化を試みる。また、人間活動と気候変動の視点を加味し、近年大きく変動している水圏環境の生態系への遺伝子水平伝播の影響について総合考察を行う。(3年目)

今年度の研究概要

細菌群集に起こる遺伝子水平伝播の全容の解明を目指し、はじめに塩分耐性遺伝子の水平伝播のホットスポットと推定した網走湖(北海道)をフィールドに設定して研究を行う。網走湖の複数地点にて表層水に加えて適切な深度からラン藻ブルームと細菌含有環境水の採集を行う。ブルーム形成ラン藻を含む細菌類とウイルスについて、単離株ゲノム解析・メタゲノム解析を用いて網羅的に塩分耐性遺伝子の水平伝播の痕跡を調べる。各採取箇所について、クロロフィル濃度、塩分、溶存酸素濃度等の環境変数を取得し、微生物の生息に大きく影響を与える湖の温度・塩分成層構造を明らかにする。国内外の汽水湖における遺伝子水平伝播動態の多様性の解明のため、宍道湖等のラン藻ブルームの発生が見られる他の国内汽水湖にも調査範囲を広げる。網走湖と同様の解析を行い、汽水湖における塩分耐性遺伝子の水平伝播動態の多様性と環境動態を調べる。公開データベースにある海外湖沼のメタゲノムデータを参照・解析する。取得された国内外の湖沼の塩分耐性遺伝子配列の比較解析を行い、地域及び地球規模のスケールでの多様性の全容と進化的背景を探索する。

外部との連携

京都大学化学研究所(岡崎友輔氏)を分担者とした共同研究。

備考

基盤研究(B)

関連する研究課題