生物多様性領域:知的研究基盤整備(令和 8年度)
Biodiversity Division (Intellectual Research Infrastructure Development

研究課題コード
2630AX105
開始/終了年度
2026~2030年
キーワード(日本語)
絶滅危惧種,オープンサイエンス,長期モニタリング,全ゲノム情報,琵琶湖データベース
キーワード(英語)
Endengered species,Open science,Long-term monitoring,Whole-genome data,lake Biwa database

課題代表者

玉置 雅紀

  • 生物多様性領域
  • 領域長
  • 博士(農学)
  • 生物学,農学,生物工学

担当者

研究概要

生物多様性にかかる試料やデータ基盤の整備のため以下の課題を行う。
(1)絶滅のおそれのある野生動物種を対象する遺伝資源保存、(2)生物多様性・生態系情報基盤整備、(3)湖沼長期モニタリングと国内外観測ネットワークへの貢献、(4)環境遺伝情報基盤整備、(5)琵琶湖モニタリング、を行う。
(1)では、野生動物から培養細胞や生殖細胞などの遺伝資源を収集し、長期凍結保存及びゲノム情報の付加を行うなど、生物多様性保全に資する基盤整備を行う。特に、国内の世界自然遺産地域に分布し、環境省レッドリストに掲載される絶滅危惧種から得られる試料の収集と保存を重点的に行う。
(2)では、生物多様性・生態系情報に関するデータ標準化に対応し、各種調査研究で得られた生物多様性情報を共通フォーマットで整備・更新するとともに国内外に発信することで、生物多様性・生態系情報の利活用とオープンサイエンスに貢献する。
(3)では、霞ヶ浦等の湖沼長期モニタリングを継続して実施し、観測データを公開するとともに、国連の実施するGEMS/Water、GBIF等の国内外観測ネットワークへのデータ提供を行う。また、モニタリング手法の開発、長期モニタリングデータの時系列解析、国内外湖沼との比較研究を通じて、湖沼環境研究を発展させる。
(4)では、生物多様性情報の基盤として、環境問題に密接に関わる生物の全ゲノム情報および環境DNA解析のリファレンス情報等の遺伝情報を収集・整備し、国際データベースや国環研で運営するデータベースにて一般に公開する。また、国環研内のDNA/RNA関連研究に対する解析支援を行うことで、国環研内の遺伝情報に関わる環境研究のハブとなり、これを広く推進する。
(5)では、琵琶湖水系の生物分布のモニタリングを継続する。分布の証拠となる標本や画像データ、DNA解析用の組織・卵サンプルを保存・整理し、採集・検出の日付・場所や塩基配列情報などの付随情報をデータベース(DB)化し、Web上で公開する。環境DNAデータの収集とDBの整備も試みる。

研究の性格

  • 主たるもの:モニタリング・研究基盤整備
  • 従たるもの:基礎科学研究

全体計画

(1)では、絶滅危惧種の死亡個体を収集し組織や血液等の長期凍結保存を行う(年間50個体程度)。あわせて細胞培養を試み研究資源として凍結保存する。また、生殖細胞の収集および凍結保存を試みる。これらの遺伝資源について、全ゲノム解析(年間2種程度)による遺伝情報の付加、培養細胞を用いた各種生物学的・環境影響評価研究への活用、生殖細胞による飼育下繁殖の支援や繁殖生理学的研究への活用を進める。
(2)では、生物多様性・生態系情報に関するデータ標準化への対応(50万レコード程度)、FAIR原則に沿ったデータ公開の推進、データ利用促進のための既存データベースのシステム改修(標準化対応6件・改修4件、新規追加3件程度)、および新規データセットの受入れとデータ提供依頼への対応を進める。
(3)では、霞ケ浦での毎月10地点の物理環境、水質、プランクトン、底生動物の調査、隔月1地点の魚類モニタリング調査、ならびにブイを用いた高頻度自動観測を継続して実施し、毎年、最新のデータ(40項目✕12ヶ月✕10地点)をウェブデータベースに公開する。また、モニタリング手法の開発、長期データの解析も進める。
(4)では、有害藻類などの環境問題に密接な生物や、保全策が必要とされる主に無脊椎動物の希少生物ついて、遺伝的多様性やその機能を理解するために全ゲノム情報を5年間で25種もしくは株の全ゲノム情報を取得する。また、日本に生息する生物のDNAバーコード情報を5年間で100種以上、日本産生物のDNAバーコード情報500配列を取得する。
(5)では、琵琶湖水系の生物多様性の現状を示す基礎データを蓄積・整理し、研究者コミュニティーには既報研究の検証と新たな研究の基礎となる試資料を、一般の方には琵琶湖生態系の現状を知っていただくための科学的データを提示する。これまでの公開データに加えて、5年目までに生物体標本500件、魚卵分布データ1000件、動物目線の水中映像100件を追加し、公開につなげる。魚類個体の移動データでは100個体分の公開を目指す。

今年度の研究概要

(1)今年度は、世界自然遺産地域の中でも小笠原諸島を重点対象とし、絶滅危惧種の死亡個体等から組織・血液等を収集し、遺伝資源保存を進める。特に培養細胞の樹立および生殖細胞の保存に注力する。また、少なくとも哺乳類1種、鳥類1種について全ゲノム解析情報を付加し、研究資源としての価値向上を進める。
(2)では、生物多様性・生態系情報に関するデータ標準化への対応を実施する(10万レコード程度)とともに、中長期期間における生物多様性関連DBの整備計画を策定する。
(3)では、定期調査、取得データの公開、国内外データベースへのデータ登録を着実に行う。今年度は高頻度自動観測データの解析を進めることに加え、湖心に観測ブイを新たに設置する。また、全球湖沼動物プランクトンデータを統合する国際プロジェクトに参加し、データペーパーを取りまとめる作業に貢献する。
(4)では、環境問題に密接な藻類の全ゲノムの取得を進める。DNAバーコード取得のため、両生類および昆虫を中心に同定が確かな標本の収集を進める。所内向けの次世代シーケンサーを用いた無料解析を全3回実施するほか、要請に応じた所内技術支援を行う。
(5)では、琵琶湖水系の魚類を中心とした水生生物の分布のモニタリングを標本採集などにより継続し、魚類個体の追跡による移動データの取得も継続して行う。環境DNAによる分布データの取得を開始する。

外部との連携

釧路市動物園、猛禽類医学研究所、秋田市大森山動物園、盛岡市動物公園、岩手大学、環境省猛禽類保護センター、富山市ファミリーパーク、千葉市動物公園、東京都多摩動物公園、環境省小笠原自然保護官事務所、横浜市立よこはま動物園、横浜市繁殖センター、名古屋市東山動植物園、株式会社イーグレット・オフィス、NPO法人四国自然史科学研究センター、環境省対馬自然保護官事務所・対馬野生生物保護センター、福岡市動物園、環境省奄美自然保護官事務所・奄美野生生物保護センター、環境省徳之島管理官事務所、環境省やんばる自然保護官事務所・やんばる野生生物保護センター、今帰仁村、NPO法人どうぶつたちの病院 沖縄、琉球大学、沖縄こどもの国、環境省沖縄奄美自然環境事務所、環境省石垣島自然保護官事務所、環境省西表自然保護官事務所・西表野生生物保護センター、環境省生物多様性センター、辻彰洋(国立科学博物館)、牧野渡(東北大学)、霞ケ浦環境科学センター、茨城県内水面水産試験場、霞ヶ浦河川事務所を含む霞ヶ浦関係機関連絡会議、摩周湖環境保全連絡協議会、滋賀県 琵琶湖環境科学研究センター、滋賀県水産試験場、琵琶湖博物館、東京大学大気海洋研究所、福知山公立大学、近畿大学、長浜バイオ大学