持続可能な里海づくりに資する統合学際研究 —リジェネラティブな生態系・観光・社会の好循環モデル構築へ—(令和 8年度)
An Interdisciplinary Study for Sustainable Satoumi Development: Toward a Virtuous Cycle Model of Regenerative Ecosystems, Tourism, and Society

予算区分
1-2604
研究課題コード
2628BA001
開始/終了年度
2026~2028年
キーワード(日本語)
干潟生態系,サメ・エイ類,ウェルビーイング,有明海,生態系モデル
キーワード(英語)
tidal flat ecosystem,sharks and rays,well-being,the Ariake Sea,ecosystem model

課題代表者

東 博紀

  • 地域環境保全領域
    海域環境研究室
  • 上級主幹研究員
  • 博士(工学)
  • 土木工学,農学,水産学

研究概要

 環境省の新たな沿岸管理施策として推進する里海づくりについて、生態系の保全・再生・創出、取り組みの持続性、連携に関する課題の解決が必要との提言を受け、本研究は持続可能な里海づくりに貢献し、その課題解決を図るものである。環境省の求める良好な環境を「健全な生態系」と捉え、その利活用にあたっては「再生型の観光」に着目し、更に発展的なリジェネラティブな環境・社会の好循環モデル構築を目指す。
 従来、里海の基盤となる干潟の環境施策では、低次生態系のみが着目され、十分な効果が得られなかった。先行研究では高次捕食者に着目し、全栄養段階の食性解析に基づく実証的な生態系モデルを構築、頂点捕食者(サメ)からのトップダウン効果を初めて実証、それらの保全により効果的に生物多様性・生産性を確保できることをモデルで示すなど、多くの初知見を得た。本研究では新たに干潟の基礎生産量、特定されたKeystone種の生態的知見を加え、トップダウン/ボトムアップ双方からの定量評価可能な生態系モデルの高度化を図る。水質、基礎生産、気候変動の影響等を予測可能な統合モニタリング手法を確立する。地域主体の持続可能な里海づくりに資するため、環境教育、生態系を向上させる観光モデルの作成、ウェルビーイング評価指標の策定を行う。社会実装に向け、必要な規律について検討しておく。以上より、科学に基づく新しい里海モデルを提案することを目的とする。成果は有明海・日本の里海づくり活性化に貢献し、日本発のSatoumiモデルとして世界へ発信する。

研究の性格

  • 主たるもの:応用科学研究
  • 従たるもの:基礎科学研究

全体計画

有明海におけるKeystone種(アカシュモクザメ、アカエイなど)の生態的知見(成長、繁殖力、生物量など)を明らかにした上で、干潟の基礎・二次生産を定量化し、生態系モデルの高度化を図り、トップダウン/ボトムアップ双方からの定量評価を可能とする。衛星・現地・数値解析を融合した沿岸生態系モニタリングの新たな枠組みを提示し、水質、基礎生産、気候変動の影響等を予測可能な統合モニタリング手法を確立する。地域主体の持続可能な里海づくりに役立てるため、Keystone種の個体群管理とアミ類などのStructuring種のモニタリング基盤を構築する。環境教育、観光資源特定、生態系を向上させる観光モデル作成、総合的な地域ウェルビーイングの評価指標策定を行う。生物多様性保全や観光活用を踏まえた法制度の検討も併せて行う。以上の学際的アプローチにより、リジェネラティブな生態系・観光・社会の好循環モデルを構築し、科学に基づく新たな里海モデルを提案することを目的とする。

今年度の研究概要

国立環境研究所が参画するサブテーマ2の今年度の研究計画・内容は次のとおりである。有明海の干潟および浅海域における基礎生産量推定モデルの基礎データ収集を行う。干潟ではチャンバー法およびPAM測定により光—光合成関係式を取得し、光環境やクロロフィル量との関係を明らかにする。並行して、衛星データ(SGLI, Planet, GOCI-IIなど)およびモニタリングポストの観測値を用い、水温・塩分・光・クロロフィルの関係を整理する。得られたデータに基づき、機械学習モデルによる基礎生産量推定法を試作し、現場実測値との比較により精度検証を行う。加えて、出水後の干潟泥堆積状況をドローンで把握し、物理環境と生産特性の関係を評価する。さらに二次生産者であるベントスについては、経験式に基づき二次生産量を算出する。

外部との連携

長崎大学(代表:山口敦子教授)、熊本県立大学、横浜国立大学、和歌山大学、追手門学院大学、国立環境研究所

関連する研究課題