炭素循環を観測する
地球上にある元素の総量は有限でありますし、地球に存在したとしても実際使われる量はさらに限られることになります。極端な話をすると、炭素というものが地球上に存在しないか、もしくは炭素が地中深く潜り込んで地表にはめったに現れないというならば、現在あるような生物というものも存在しなかったということになります。地球という系での生物に必須である元素の内、主要な炭素、窒素、硫黄、酸素などの存在とその循環過程があることが生物にとって重要であります。逆に、生物が存在していることが地球の大気の構成成分量の比率を他の惑星とはまったく異なるものにしていると説いたのはガイアの理論を提唱したラブロックです。地球大気にはCO2が相対的に少なく(0.04%)、一方、O2が20%もあることが他の惑星からみると特異です。ラブロックは、その意味から大気組成を見れば生物がいるかどうか、ある程度分かるだろうと述べています。
悩ましいのは、CO2を発生、吸収する物は陸上生態系、海洋、人類と大きく分けても3つのカテゴリーで存在することです。陸にはいわゆる自然生態系のようなCO2を吸収するものと人類のようなCO2を放出するものが共存しています。海洋に住む人はあまりいないとしても(船が行き来していますが)、「大気の濃度」だけを求めるものにしていると、吸収するものと放出するものの総量しか情報になっていないので、例えば仮に人為起源CO2の放出と生態系の吸収が同じ地域があったとすると、インバース解析の結果は原理的にはその地域のCO2の発生量はゼロという情報しか与えません。もし私たちが人為起源の発生量を別に与えると、その差分として生態系による吸収量が推定できます(その逆も可能です)。これでは、情報としてはあまり面白くありません。これに対して、例えば放射性炭素同位体比など人為起源炭素放出に特徴のある炭素の情報としていれると、人為起源CO2と生態系CO2を分離することが可能になってくると考えられ、アメリカなどで研究が進んできています。その他、酸素や安定同位体比などもトレーサーとしてはある程度使える可能性もあり、今後のモデリングの拡張が期待できます。
現在プロジェクトでは、地上での発生量、吸収量推定を現場観測(ボトムアップ的手法)とトップダウン的手法で求められた地域的発生吸収量推定値の比較を行いながら、それぞれの不確実性を議論し、その推定精度の向上を行うという段階にあります。残り2年でいろいろの意味で整合性のある結果が出てくれることを期待しています。
執筆者プロフィール
基本このごろはいろいろのストレス(締め切り)をどう処理するかという課題に明けくれる毎日です。正月に引いたおみくじには「仕事は自ら創るべきで、与えられるべきではない!」と書かかれていました。きっと、周りの人が、それを実行してるんだろうな。