環境回復研究の現状と国立環境研究所で進める災害環境研究
日本では
東京電力福島第一原子力発電所事故に由来する環境中の放射性物質を対象とした調査研究は、様々な研究機関、行政機関、研究者によって実施されてきました。その対象は、放射性物質の計測手法、環境中での動態と影響、除染、廃棄物の処理・処分など多様であり、従事する専門家の学術分野も多岐に及んでいます。その全容を正確に把握するのは困難ですが、日本学術会議が2014年9月10日に発表した提言「復興に向けた長期的な放射能対策のために-学術専門家を交えた省庁横断的な放射能対策の必要性-」【注釈:1】における俯瞰的まとめが参考になります。その中の「放射性物質の領域間の移行と主な研究主体」の図には、環境省、文科省(現在は原子力規制庁)、福島県、国立環境研究所や日本原子力研究開発機構など12の研究機関 【注釈:2】、大学(筑波大、東大、東京海洋大、茨城大、東工大ほか)、東京電力がリストアップされています。また、文科省科学研究費補助金による新学術領域研究「福島原発事故により放出された放射性核種の環境動態に関する学際的研究」などの大型の分野横断研究プロジェクトも実施されています。
【注釈】
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2)日本原子力研究開発機構、国立環境研究所、気象庁気象研究所 、電力中央研究所、放射線医学総合研究所、海洋研究開発機構、農業・食品産業技術総合研究機構、農業環境技術研究所、森林総合研究所、水産総合研究センター、国立保健医療科学院、国立医薬品食品衛生研究所
国立環境研究所では
2011年度後半からは、研究所の研究活動が本格化し、災害廃棄物や放射能物質に汚染された廃棄物の適切な管理、処理・処分方法などに関する「放射性物質に汚染された廃棄物等の処理処分技術・システムの確立(以下、汚染廃棄物研究)」と、環境中における放射性物質の計測・シミュレーションを通した動態解明・将来予測、人の被ばく量解析および生物・生態系に対する影響評価に関する「放射性物質の環境動態解明、被ばく量の評価、生物・生態系への影響評価(以下、多媒体環境研究)」を中心に研究を進めてきました。現在は、これら2つの研究を、放射性物質により汚染された被災地の環境をできるだけ速やかに回復することを目的とした「環境回復研究プログラム」に統合し、研究を推進しています。
「汚染廃棄物研究」では、放射性物質に汚染された廃棄物・土壌等について、現地調査、基礎実験、フィールド実証試験およびシステム分析等により、放射性物質の基礎物性・挙動特性等を踏まえた、各処理プロセス(保管、焼却などによる減容化、再生利用、貯蔵、最終処分等)における制御技術・システムの開発・高度化・評価、関連処理施設の長期的管理および解体・廃止等手法に関する調査研究を行っています。また、測定分析・モニタリング技術、廃棄物処理・資源循環システム全体でのフロー・ストックおよび放射性物質管理方策、リスクコミュニケーション手法等に関する調査研究も実施しています。これらの科学的知見を環境省などに提供することにより、汚染廃棄物等の適正かつ円滑な処理の推進に貢献しています。
「多媒体環境研究」では、放射性物質に汚染された土壌、森林、河川、湖沼、沿岸等の汚染実態と環境動態を把握し、将来動向を予測するために、汚染程度の異なる流域圏を対象として、多媒体環境モデリング、環境動態計測、環境データ解析を統合した研究を実施しています。これらの研究成果は、国や自治体が実施する除染等の推進を科学的側面から支援しています。また、人の被ばく量の広域的な推計手法を開発して、被ばく実態を把握する研究や放射性物質による生物・生態系に対する影響に関する研究を進めるとともに、無人化や除染による生態系変化を把握する研究も始めています。
目次
目次
- 環境儀 NO.58
- Interview 研究者に聞く
- コラム1
- コラム2
- コラム3
- コラム4
- コラム5
- コラム6
- コラム7
- Summary
- 環境儀 NO.58 [9.5MB]
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