住宅用太陽光パネルのリユースやリサイクルの促進には設置世帯の選択意向や行動の改善が重要
—ウェブアンケートによる分析—

 国立環境研究所資源循環領域の山本悠久特別研究員らの研究チームは、自宅等に設置された太陽光パネルの排出時における、各世帯がリユースやリサイクルを自ら選択する意向の強さや、その要因についてウェブアンケートを用いて調査・分析しました。その結果、リユースやリサイクルを行う意向が強い世帯は全体の40%に満たず、リユースやリサイクルを実施する可能性が高い世帯になると、全体の2-12%にとどまる可能性が明らかになりました。また、太陽光パネルの撤去や廃棄に関する情報を見聞きした経験がある世帯や、太陽光パネルのメンテナンス等の実施経験や実施意向がある世帯は、リユースやリサイクルを行う意向が強い傾向がありました。さらに、太陽光パネルの処理費用や処理業者の信頼性の有無、処理基準の順守の程度などがそれらの行動の実施を抑制する可能性があることが示されました。
 この研究成果は、今後、大量廃棄が予測される住宅用太陽光パネルについて、ユーザーの低調な意向や行動を改善する要因を踏まえた、リユースやリサイクルの促進政策や制度設計に活用されることが期待されます。
 本研究の成果は、2026年4月15日付でElsevier社から刊行される資源循環分野の国際学術誌『Resources, Conservation and Recycling』に掲載されました。

参考図

1. 研究の背景と目的

 気候変動対策やエネルギー源の多角化などを目的に、2010年代前半から、住宅用を含めて、太陽光発電の導入が日本全国で進んでいます。しかし、太陽光発電に用いられる太陽光パネルは20年程度で寿命を迎えると考えられており、最大年間50万トンとも推定される大量の使用済太陽光パネルの発生による廃棄物処理への影響が懸念されています※1。廃棄物処理の負担を軽減しつつ、資源を有効活用するため、それらの使用済太陽光パネルをリユースやリサイクルすることが求められています。太陽光パネルのリサイクル等を進めるためには、パネルの所有者が、自らリユースやリサイクルされる方法で排出することが鍵となります。したがって、パネルの所有者がどの程度リユースやリサイクルを選択する可能性があるのか、またその促進・抑制要因は何かを把握することが重要です。

2. 研究手法

 本研究では、住宅用太陽光パネルに焦点を当てて、自宅等(庭や駐車場を含み、自宅から離れた場所は含まない)に太陽光パネルを設置している、日本全国の600世帯(うち分析の対象者数553世帯)を対象にウェブアンケート(2023年3月)を行い、太陽光パネルの容量やパネルの設置理由、利用時における検査や情報接触などの経験、パネルの排出時の処理業者の選択方法や重視する項目などについて調査しました。
 本研究では、パネル排出後にリユースやリサイクルが行われることを重視して、自ら処理業者を選択しようと考える世帯をリユースやリサイクルを行う意向が強い世帯と見なしました。そして、調査結果をもとに、パネルのみを撤去し、排出する場合と自宅等の解体に合わせてパネル等を撤去し排出する場合の2つの排出シナリオ、また処理業者がパネルをリユースする場合とリサイクルする場合の2つの循環形態を組み合わせた計4パターンのそれぞれについて、リユースやリサイクルを行う意向の強い回答者と意向の弱い回答者に分類し、その割合を算出しました。
 また、多重対応分析※2によって、リユースやリサイクルを行う意向に関する回答者グループとパネルの設置・利用に関する経験および回答者属性との関連を分析し、意向の強さに関連する促進要因の特定を試みました。
 その一方で、リユースやリサイクルを行う意向の強い回答者でも、リユースやリサイクル以外の条件が満たされない場合には、行動の実施まで至らない可能性があります。そこで、パネル処理業者の様々な条件への重視度を分析し、それらの条件がリユースやリサイクルの抑制要因となる可能性を考察しました。

3. 研究結果と考察

 リユースやリサイクルを行う意向が強いと分類された回答者の割合は32–38%と、排出シナリオ・循環形態のパターンによらず40%を下回りました。したがって、現状では60%以上の消費者が自ら積極的にリユースやリサイクルを選択するわけではなく、リユースやリサイクルが自然に選択されて進んでいく状況ではないことが示唆されます。
 意向の強さと関連のある変数を分析した結果、パネルの撤去や廃棄に関する情報を見聞きしたことのある回答者は、意向が強い傾向が確認されました。一方、パネルの検査・メンテナンスの実施経験および実施意向のない回答者は意向が弱い傾向がありました。このことから、パネルの撤去や廃棄に関する情報への接触およびパネルの検査・メンテナンスの実施経験・実施意向が、リユースやリサイクルを行う意向の高さと関連しており、それらの情報提供や検査・メンテナンスの実施によってリユースやリサイクルを促進できる可能性があると示唆されました。
 一方、リユースやリサイクルを行う意向が強い回答者のうち、パネルの処理にかかる費用の低さや業者の信頼性の高さ、処理基準が順守されることなどの条件を重視する割合は67–95%にのぼりました。もし、それらの条件が満たされない場合にリユースやリサイクルが抑制されるとすれば、リユースやリサイクルの実施に至る世帯の割合は最悪の場合には全体の2–12%にとどまる可能性が示唆されました。そのため、それらの項目がリユース・リサイクルの実施を抑制しないよう、排出時の費用を低減したり、業者の信頼性を高めたりするための対策が必要だと考えられます。

4. 今後の展望

 本研究から、住宅用太陽光パネルの所有者が排出時にリユースやリサイクルを行う意向や行動の可能性が、現状では低いことが明らかになりました。太陽光パネルのリユースやリサイクルを進めるためには、リサイクル技術の開発等に加えて、所有者がリユースやリサイクルを行う意向や実際の行動を促すことが鍵となります。本研究が示した促進・抑制要因を参考に、所有者の低調な意向や行動を改善し、太陽光パネルのリユースやリサイクルを促進する対策を実施することが必要です。今後は、本研究に含まれなかった要因も考慮して、特に有効な対策を特定することが望まれます。

5. 注釈

※1中央環境審議会循環型社会部会太陽光発電設備リサイクル制度小委員会・産業構造審議会イノベーション・環境分科会資源循環経済小委員会太陽光発電設備リサイクルワーキンググループ 合同会議(第10回)の資料から確認できます。https://www.env.go.jp/council/03recycle/page_00107.html(外部サイトに接続します)

※2多重対応分析とは、多数のカテゴリー変数の間の関連を低次元平面における距離として同時に示す分析手法です。

6. 研究助成

本研究の一部はJSPS科研費 24K03152 の助成を受けて実施されました。

7. 発表論文

論文名Motivational and constraining factors in household adoption of circular end‑of‑life management for residential photovoltaic panels: An exploratory study in Japan

著者名Haruhisa Yamamoto, Masahiro Oguchi, Eriko Minari, Afif Faiq Muhamad, Yago Guida

雑誌名Resources, Conservation and Recycling

DOI10.1016/j.resconrec.2026.108953(外部サイトに接続します)

8. 発表者

本報道発表の発表者は以下のとおりです。

国立環境研究所
資源循環領域資源循環社会システム研究室
特別研究員
山本 悠久
主幹研究員
小口 正弘
特別研究員
MUHAMAD Afif Faiq
資源循環領域持続循環先端技術研究室
研究員
三成 映理子

9. 問合せ先

【研究に関する問合せ】
国立研究開発法人国立環境研究所 資源循環領域
資源循環社会システム研究室 特別研究員 山本 悠久
資源循環社会システム研究室 主幹研究員 小口 正弘

【報道に関する問合せ】
国立研究開発法人国立環境研究所 企画部広報対話室
kouhou0(末尾に“@nies.go.jp”をつけてください)