三島町の子供たちに福島拠点や環境について学んでもらう見学ツアー[コミュタン福島・国環研 福島拠点 見学バスツアー]サムネイル
イベント

三島町の子供たちに福島拠点や環境について学んでもらう見学ツアー[コミュタン福島・国環研 福島拠点 見学バスツアー]

三島町に住む親子が福島拠点とコミュタン福島を見学

令和6年8月24日に、国立環境研究所(以下、国環研)と連携協定を結んでいる、福島県三島町に住む子どもたちを対象とした「コミュタン福島・国環研 福島拠点 見学バスツアー」を開催しました。

このツアーは国環研や福島地域協働研究拠点(以下、福島拠点)の研究・取り組みや環境について子どもたちに学んでもらうことを目的に、三島町公民館事業の一環として行われています。

バスに乗って移動する子どもたち
※福島拠点まで車で1時間半ほどかかる三島町からはるばる来てくれた子どもたち

国環研と三島町のこれまで

国環研と三島町は平成29年8月に連携協定を結び、これまで町のゼロカーボンビジョン策定や地域循環共生圏の推進に協力するなど、地域資源を活用した再生可能エネルギーの導入・普及、地域振興計画の調査研究などを行ってきました。

〇福島県三島町と国立研究開発法人国立環境研究所との連携・協力に関する基本協定の締結について
https://www.nies.go.jp/whatsnew/2017817/20170817.html
〇「三島町2050ゼロカーボン」を宣言しました。(三島町HP)
https://www.town.mishima.fukushima.jp/soshiki/chiiki-seisaku/5.html

実験や展示で福島拠点の研究を学ぶ

見学ツアーでははじめに、林誠二(はやし せいじ)研究グループ長からご挨拶があった後、中村省吾(なかむら しょうご)主任研究員から国環研全体と福島拠点についての紹介がありました。

研究所の紹介の後は、各研究室に関連した展示を見て回っていただきました。

参加する親子に研究所について説明する林研究グループ長
※林研究グループ長からご挨拶

■水の中で物質を混ぜて作ってくっつける吸着実験

廃棄物・資源循環研究室では、福島第一原子力発電所の事故後の除染によって出た放射性セシウムを含む大量の除染廃棄物を少なく(減容化)する研究などを行っています。

〇廃棄物・資源循環研究室の取り組み
https://www.nies.go.jp/fukushima/research/reconstruction/index.html

まず、燃やすことのできる廃棄物は燃やして灰にした後、添加物を加えて加熱処理をしてさらに少なくします。
その時に残る溶融飛灰に放射性セシウムは集まり、水に溶けやすい性質を持ちます。
水に溶かした放射性セシウムを吸着しやすい物質を水の中で混ぜ合わせて作って、その物質に放射性セシウムを吸着させると、除染廃棄物の量を当初の灰から1/数千から約1/数万前後にまで減らすことができます。

※除染廃棄物の減容化の例について詳しくは以下のページをご覧ください。

〇放射性セシウムに汚染された可燃性廃棄物はどの程度まで小さくできるのか?
https://www.nies.go.jp/fukushima/magazine/genba/202401.html
〇令和6年度環境創造センター成果報告会(除染・廃棄物部門)ポスター発表
田中 悠平、山田 一夫、遠藤 和人、特定廃棄物(飛灰)の最大減容化に向けた二段階化学共沈法
https://www.fukushima-kankyosozo.jp/2024seikahoukoku/page2.html

このように物質が他の物質に吸着する様子を再現した、「水の色が変わる吸着実験」を、田中悠平(たなか ゆうへい)特別研究員がみなさんの前で披露してくれました。

子どもたちに説明する田中特別研究員
※減容化のプロセスについて説明する田中特別研究員
実験を観察する子どもたち
※液体を混ぜ合わせて色が変わる瞬間

■立体地図に福島県のデータを映す3Dふくしま

地域環境創生研究室では災害からの持続可能な復興まちづくりなどの研究を行っています。

〇地域環境創生研究室の取り組み
https://www.nies.go.jp/fukushima/research/creation/index.html

ここでは福島県の立体白地図に様々なデータを映し出す「3Dふくしま」の展示を中村主任研究員が行いました。
東日本大震災の災害前と災害後の人口の様子、気候変動の影響で温暖化がこのまま進みつづけたら農作物はどうなるのかという将来予測、福島県内で熊やイノシシがどんなところに出没するのかといったデータを映しながら、福島県の環境と地形との関わりを学んでいただきました。

3Dふくしまで説明する中村主任研究員
※福島県の立体地図の上からプロジェクターで映像を映し出す3Dふくしま
3Dふくしまに投影された空間線量率のデータ
※福島第一原子力発電所の事故後から空間線量率が移り変わる様子を映写

■研究者が使う顕微鏡で見る昆虫観察

環境影響評価室では放射線による生き物への影響についての研究などを行っています。

〇環境影響評価研究室の取り組み
https://www.nies.go.jp/fukushima/research/evaluation/index.html

今回は昆虫等の生態を専門に研究をしているJO Jaeick(ちょう ちぇいっく)高度技能専門員がたくさんの昆虫標本を持ってきてくれました。
さらに、研究者が使用しているデジタル顕微鏡を使って、三島町でも見られる蝶であるキマダラルリツバメと同じシジミチョウ科に属するオオナガシジミを観察しながら、蝶の翅の構造によって光が屈折して様々な色に見える仕組みを解説してくれました。

標本を観察する親子とJo高度技能専門員
※昆虫の標本を興味深く観察する子どもたち
子どもたちに説明するJo高度技能専門員
※電子顕微鏡を使って拡大した蝶をみんなで観察

福島拠点の見学を終えた後は、みなさんで環境創造センター交流棟「コミュタン福島」に向かい、放射線や再生可能エネルギー、生態系についてなど、展示や体験を通じて環境のことを楽しみながら学んでいただきました。

模型を見ている子どもたち
※コミュタン福島で福島第一原子力発電所の模型を見学
展示で遊ぶ子どもたち
※砂場の形を変えると地形に適した発電所が浮かび上がる体験型展示

国環研の取り組みを色んな人に知って欲しい

福島拠点ではこれまでも三島町の町民の方に向けた出前講座を実施しておりましたが、町との協議の中で今回はより若い世代の皆さんへのアプローチする内容にしたいということで本企画を実施し、これまで交流する機会が少なかった子どもたちやその親御さんに我々の取り組みに触れていただく良い機会となったと考えています。

これからも見学対応やイベント展示、出前講座などを通じて、さまざまな方に国環研の取り組みを知っていただけたらと思います。

あわせて読みたい

概要

イベント名
コミュタン福島・国環研 福島拠点 見学バスツアー
開催日時
2024年8月24日(土)
会場
環境創造センター
対象
三島町に住む親子(小学生~中学生)
主催
三島町公民館

講師

林 誠二

福島地域協働研究拠点 研究グループ長/地域協働推進室長

中村省吾

福島地域協働研究拠点 地域環境創生研究室 主任研究員

田中悠平

福島地域協働研究拠点 廃棄物・資源循環研究室 特別研究員

JO Jaeick

福島地域協働研究拠点 環境影響評価研究室 高度技能専門員