領域長あいさつ
地球システム領域長 谷本 浩志
人間の住む地球の表面には、大気や海洋、そして陸域があり、これら地球表層の環境を保全することは持続可能な人間社会をつくる上で欠かすことができません。しかし近年、人間活動に起因する気候変動により気温上昇が続き、海面上昇や大雨の増加、熱波・干ばつによる食料生産への深刻な影響が懸念されています。
2015年のパリ協定以降、各国には温室効果ガス削減の加速が求められ、日本も2050年までの排出実質ゼロを掲げ、国会で「気候非常事態宣言」が採択されました。
こうした背景のもと、地球システム領域は第5期中長期計画に合わせて2021年に発足し、第6期中長期計画(2026年開始)では気候変動緩和と大気汚染改善に向けた研究を一層推進し、研究成果やデータをUNFCCCやIPCCなどの国際枠組みに積極的に提供することで、大気質改善と気候安定化を通じて1.5℃目標の実現に貢献することを目指します。また、1990年発足の観測・データ整備を担う知的研究基盤である地球環境研究センターや、GOSATシリーズを運用する衛星観測センターと連携し、研究の高度化を進めていきます。
私たち地球システム領域は「有言実行」を掲げ、最新の科学的知見をもって気候危機の克服と持続可能な地球環境の実現に貢献していきます。
研究概要
地球システム領域 研究概要
地球表層を構成する大気・海洋・陸域における物理・化学プロセスと生物地球化学的循環の解明、人間活動の影響を受けた気候及び地球環境の変動とそのリスクの将来予測、それらに必要となる先端的計測技術やモデリング手法の開発、並びに地球環境保全に関わる政策決定に必要な科学的基盤を提供するための研究を行います。また、気候安定化と持続可能な社会への移行に資するため、経済・社会に大きな影響を与える極端気象等への気候変動の影響の研究、地球観測データの複合利用による人為起源・自然起源の気候変動関連物質の動態把握、それに基づくパリ協定の目標達成に向けた緩和策の効果の確認等に関わる研究にも取り組みます。
なお、地球システム分野における知的研究基盤整備として、気候変動関連物質を中心にした地球環境の戦略的モニタリング、気候変動影響のモニタリング、地球環境変動に関わるデータの整備と利活用の推進、国際的な研究動向を踏まえた国内外共同研究やオフィス活動の支援、科学的知見の集約と社会への普及等を行います。以上の活動を通して、地球システム分野の中核的研究機関としての機能を一層強化します。
組織
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地球システム領域が行う活動成果を最大限とするため、地球環境研究を基盤的に支える知的基盤の支援、研究成果の積極的な発信などを進めます。
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温室効果ガスを含む化学物質の生物地球化学的循環を様々な時空間スケールで把握するための観測・計測技術を開発すると同時に、それらを応用して物質循環と気候変動との相互作用の解明を行います。
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私たちは、地球大気における物理・化学プロセスや、大気と海洋・陸域との物質交換を理解するため、重要な気体成分やエアロゾルの計測ならびにモデル技術の開発、室内実験、フィールド観測、モデルシミュレーションを行いながら、地球規模大気汚染および気候変動との関係を解析する研究を行っています。また、得られた科学的知見を政策立案に活かし、環境面から世界の持続可能性の推進に貢献しています。
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エアロゾル・雲の気候影響の評価を目的として、全球から領域規模での時空間変動の把握やその放射過程の理解に資する遠隔計測手法の開発とその応用についての研究を行っています。
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衛星リモートセンシングについて、観測機器の開発や運用、観測データの処理・解析や、観測結果を地上から検証する手法の開発・研究を進めています。また、衛星観測データを活用して地球規模の環境変動を把握するための研究をしています。
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力学・化学・放射過程など諸過程の統合モデリングに基づく地球環境システムとしての気候変動の解明と予測を行います。
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気候変動が進むことによる悪影響のリスクや、気候変動対策に伴う副作用のリスクを、主に地球全体の空間規模に注目して評価する研究をしています。主にコンピュータシミュレーションの手法を用いて研究を行います。得られた成果を政策立案の指針に役立てることを目指しています。
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地球環境の事業および地球環境データベース事業に係る事務を支援します。
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地上ステーションや船舶・航空機など多様なプラットフォームによる温室効果ガスやSLCFのモニタリングを推進します。
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温室効果気体など地球環境に影響を与える多様な物質の動態解析と収支評価を統合的に推進し、排出量評価の精緻化に貢献します。
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毎年の日本国の温室効果ガスインベントリの作成および関連調査研究、これに伴う国際対応等業務の遂行を目的として、2002年7月に国立環境研究所 地球環境研究センターに設置されました。
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地球温暖化問題に自然科学と社会科学を統合して地球規模で取り組む「グローバル・カーボン・プロジェクト(GCP)」の国際オフィスの一つとして2004年に開設され、日本およびアジアにおける研究ネットワーク構築、研究成果の国際発信、国際連携の推進を支援しています。
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国内外の研究及び行政機関との間の連携を強化することにより、それぞれの活動で得た知見を集約してGHG排出量の把握と削減に向けた科学的情報基盤とすることを目的としています。
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衛星観測事業を効率的かつ効果的に推進するための中核的存在として、関係する省庁や研究機関との協力・連携・連絡を強化することで、GOSATシリーズ衛星の研究面や政策面における価値を高めます。
グループ
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SLCF国家インベントリに向けた準備拠点、GHG-SLCFシナジーによるインベントリ高度化、インベントリ研究と実務の連携、情報発信・提言、及び関連する国内・国際活動に係る業務を行います。
研究者紹介
新着情報
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報道発表研究成果国立研究開発法人国立環境研究所(NIES)は、環境省および国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)とともに、気候変動に関する科学の発展、気候変動政策・取組評価への貢献を目的に、温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)シリーズを活用し、大気中の温室効果ガスの観測をしています。
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報道発表研究成果国立環境研究所 地球システム領域の所 立樹 特別研究員らの研究チームは、日本沿岸を含む北西太平洋(20–50°N, 120–160°E)において、日本の河川水が北西太平洋の広い範囲にどのような影響を与えているかを20 年間にわたる貨物船や観測船による観測データを用いて明らかにしました。
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報道発表国立環境研究所、大阪公立大学、米国Environmental Defense Fund、英国Royal Holloway University of Londonの研究チームは、強力な温室効果ガスであるメタンの濃度観測システムを自動車に搭載して東京都市圏を広く走行しました。
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報道発表都市域で排出されるメタンガスの削減は、気候変動対策において重要です。都市ガスの主成分はメタンですが、エタンも含有しているため、エタンを計測することで都市ガス起源のメタン排出を評価することができます。
研究成果
刊行物
環境儀
国立環境研究所ニュース(テーマ別記事)
国立環境研究所研究プロジェクト報告(旧特別研究報告)
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SR-142-2024
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SR-141-2024
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SR-140-2021
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SR-132-2018
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SR-129-2017
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SR-112-2016
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SR-105-2013
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SR-96-2011
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SR-82-2008
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SR-70-2006
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SR-69-2006
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SR-55-2003
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SR-54-2003
国立環境研究所研究報告
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R-194-2006
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R-187-2005
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R-180-2004
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R-173-2002
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R-169-2002
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R-163-2001
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R-162-2001
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R-159-2001
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R-157-2000
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R-149-'99
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R-148-'99
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R-145-'99
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R-140-'98
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R-139-'98
データベース/ツール
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地球温暖化をはじめとする地球環境問題に関する自然科学・社会科学分野の研究で得られたデータや成果を公開。
リアルタイム観測データ(地上モニタリングステーションで観測している温室効果ガスなど)や、
データ解析に有用な(オンライン)ツール(METEX:トラジェクトリ解析・気象場表示など)も提供。 -
全国公害研協議会酸性雨調査研究部会によって平成3年度以降実施された、全国的な酸性雨観測プロジェクトによって集められたデータ
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わが国の固定発生源に関する窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)および粒子状物質(PM)の排出係数を収録したデータベース
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大気汚染物質の排出構造を解析するために、中国、インド、韓国を対象として、地域別、部門別排出量別に作成された排出インベントリー
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紫外線の強さを人体への影響を考慮してわかりやすく表した国際的な指標:UV-インデックスを、北海道から沖縄までの全国14の地点について毎時オンラインで表示
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有害紫外線モニタリングネットワークのUVデータについて、観測サイトごとに「瞬時値」、「時別値」、「日別値」、「月別値」のグラフおよび「月別値のデジタルデータ」を提供
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成層圏の北極、南極域の特徴を持った空気塊の位置、形、大きさの予測。米国NCEP予報データを用いて計算した渦位という量の分布図で表示している。
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国内の最も北に位置する北海道の落石岬と陸別、南方の沖縄の辺戸岬と波照間および関東地方のつくばの5ヶ所の有害紫外線モニタリングネットワークのサイトで観測された有害となる紅斑紫外線量と、それをもとに計算されたビタミンDを生成する紫外線量を、準リアルタイムに提供。
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日本の1990年度以降の温室効果ガス排出量データ
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温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)によって観測されたデータの処理結果を提供
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世界中の数百種類以上にのぼる温室効果ガスの排出予測を整理したデータベース
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森林をはじめとする陸域生態系の炭素収支量データをGoogleEarthで表示できる地図画像データとして提供
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化石燃料の燃焼による人為起源二酸化炭素排出量の全球分布を1x1kmの空間解像度で示したデータを提供
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温暖化に対する高山帯の生態系の脆弱性は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)でも指摘されるなど、モニタリングの必要性は世界的な共通認識となっています。そこで、日本国内の高山帯を対象として、積雪・融雪時期や植物の活動を把握するため、定点カメラの撮影による高山帯のモニタリングを行っています。
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自然科学から社会科学にわたる幅広い情報を格納した6つのGISデータ(流域界データ、河道位置データ、流量観測所データ、自然湖データ、人工湖データ、表面流向データ)から構成されるデータベース。水に関連した様々な分野へ基礎情報を提供。
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全球への適用を想定して開発された分布型水文モデル。自然の陸域水循環と主要な人間活動に関する計算を高い時間・空間解像度で実施することができる。H08のソースコードとマニュアル、入力気象データが入手可能。
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おおよそ400に区分されたわが国の経済活動部門別に産業連関分析法の応用により、各部門における環境負荷原単位を算出したデータベース
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長期生態学研究の促進を目的とした、生態系観測データの検索サービス
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LUIS (Land Use Information System) は、近世末から昭和末までの日本全国の土地利用に関する情報システムで、条件を選択することにより各種の土地利用図を表示できます。