収集車両の経路ログデータを用いた各ごみステーションのごみ収集量推計をもとにした収集運搬によるCO2削減法の検証実験

執筆:牧 誠也(社会システム領域 主任研究員)
2025.6.24

論文情報

Verification Experiments on CO2 Reduction Planning by the Estimated Waste Collection Volume at Waste Stations Using Waste Collection Vehicle Route Log Data
(収集車両の経路ログデータを用いた各ごみステーションのごみ収集量推計をもとにした収集運搬によるCO2削減法の検証実験)

著者: Seiya Maki, Minoru Fujii, Mitsuhiro Murasaki, Takahiro Ohtagaki, Kazutoshi Manabe
発行年: 2025
掲載誌: Waste Management, Volume 200, 1 June 2025, 114756
DOI: https://doi.org/10.1016/j.wasman.2025.114756

キーワード

IoT、廃棄物収集運搬、廃棄物管理、GIS、脱炭素化

論文の紹介

 地球温暖化問題に取り組むことがあらゆる分野で求められています。日本の温室効果ガス排出量の約3%を占める廃棄物処理分野においても、さらなる脱炭素化が求められています。中でも、ごみの収集運搬における排出量削減は欠かせません。一方で日本の労働力人口は減少し、多くの市区町村で一般廃棄物処理、特にごみの収集運搬事業の担い手不足が課題となっています。2018年に策定された「第4次循環型社会形成推進基本計画」では、ごみ収集運搬事業の脱炭素化および担い手不足解消のため、IoTやAI等を活用した集中管理や効率化に大きな期待が寄せられました。

 本研究では、運行状況を逐次把握することを目的とした「デジタコグラフ」といわれるICT機器を各ごみ収集車に設置しました。また、ごみステーションの立地地点との距離から、各車両が集めたごみがどこで収集されているかを推定する計算モデルを開発し、自治体で行われている収集運搬の「見える化ツール」を開発しました。

 今回は、松山市を研究開発の対象とし、疑似ごみを設定して、ごみ収集車の運航速度とトンキロ当たりのCO2排出量原単位の妥当性を確認しました。この結果をもとに、実際にごみを収集している「現行ルート」と、効率化を図った複数の「効率化ルート」を対象に、収集運搬の効率化の可能性を検討しました。ごみステーションに停車している時間が長くなるほど収集量も増加すると仮定し、ステーション近隣でのごみ収集車の停車時間を集計し、各ステーションのごみ収集量を推計するモデルを開発しました。CO2排出量の算定には、実走行試験で原単位の妥当性を確認し、速度別の燃料消費及びCO2排出量の原単位を用いました。

 効率化の検証として、二つの収集運搬ルートを採用しました。松山市では最大3トンを積載できるごみ収集車を使用していますが、一回の収集運搬では平均1トンの積載をしています。図1は実験対象とした2回の収集運搬ルートを示したものです。

図1 現行ルートの詳細(投稿論文をもとに著者作成)

 本研究では、一つのルートの中で経路を変更して効率化する方法と、二つのルートを統合して効率化する方法を検討しました。図2は現行ルート①の運行ルートを変更することで効率化を行ったもので、CO2排出量を約8%削減することができました。図3は二つのルートを統合して効率化を行った結果です。約20%のCO2排出量削減が可能となり、ごみ積載量が多い区間を短くすればさらなる排出量削減が可能であることも実証できました。このように、ごみステーションでのCO2発生量を推計し、その結果をもとにルートの効率化を行うことで、CO2排出量や運行時間を削減できることが確認できました。

図2 経路変更による効率化ルートの詳細(投稿論文をもとに著者作成)
図3 複数のルート統合による効率化ルートの詳細(投稿論文をもとに著者作成)

 上記の結果から、ICTデータをもとにごみ収集運搬計画の効率化を図ることで、CO2排出量を削減できるとともに、各ごみステーションにおける廃棄物発生量の推計方法に基づく計画策定に一定の効果があることが確認できました。今後、ごみ収集運搬事業においては、収集運搬ルートの自動的な策定や、将来の自動運転や電化に伴う蓄電利用を含めたスケジューリングが必要になると考えられます。本研究で作成した「効率化計画ツール」は、そのための基盤となります。さらなる改良に取り組んでいきたいと考えます。

 謝辞
本研究は令和2年度先端的な情報通信技術等を活用した廃棄物処理システムによる脱炭素化支援事業検討委託業務(環境省)、松山市環境部清清掃施設課、及び廃棄物回収委託業者である松山容器株式会社の協力によって行われました。ここに感謝を表したいと思います。