
今は世界のあらゆるものがつながっている時代です。食べ物を作るために森が切り開かれ、気候変動の影響で生き物たちの生息環境が失われるなど、生物多様性、水、食料、健康、気候変動といった、私たちが直面するさまざまな危機もつながっています。こうしたつながり合う危機に対処するには、問題の相互関係を分析し、包括的な解決策を提示することが必要です。
2024年12月、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の生物多様性版として知られる「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学・政策プラットフォーム(IPBES=イプべス)」は、気候変動下での「生物多様性、水、食料及び健康の間の相互関係に関するテーマ別評価報告書(ネクサス評価報告書)政策決定者向け要約」を公表しました。
生物多様性、水、食料、健康、気候変動という複数の危機の相互連関を分析し、問題を同時解決するための“71の具体的な対策”を提示したこの報告書は、生物多様性の問題にとどまらず、食料や農業のあり方なども含めて広く社会に影響を及ぼす内容になっており、同じタイミングで公開されたIPBESの「社会変革報告書」とともに、IPBESが社会により深く関わっていく転換点になったとの声もあります。
ネクサス評価報告書は、具体的にどのような内容を発信しているのでしょうか?執筆者の立場から読み解きます。