気候変動下の害虫リスク評価:作物フェノロジーと空間スケールを統合した予測基盤構築(令和 8年度)Pest Risk Assessment under Climate Change: Development of a Predictive Framework Integrating Crop Phenology and Spatial Scales
- 研究課題コード
- 2629CD006
- 開始/終了年度
- 2026~2029年
- キーワード(日本語)
- 害虫リスク評価,空間スケール,作物フェノロジー,斑点米カメムシ
- キーワード(英語)
- Pest risk assessment,Spatial scale,Crop phenology,Pecky rice bugs
課題代表者
吉岡 明良
- 福島地域協働研究拠点
環境影響評価研究室 - 主幹研究員
- 博士(農学)
- 農学
研究概要
本研究は、気候変動下における農業害虫リスクを、局所(圃場)・景観(地域)・マクロ(地方)といった異なる空間スケールを横断して評価する枠組みの構築を目的とする。分布拡大傾向の異なるイネ害虫カメムシ3種を対象に、過去20年の調査データと気象・リモートセンシング情報を統合し、機械学習と動態シミュレーションにより被害リスクを面的に予測する。特に、イネの生育時期と害虫発生時期の重複に着目し、スケール間の関係性を明らかにすることで、広域かつ実用的なリスク評価手法の確立を目指す。
研究の性格
- 主たるもの:応用科学研究
- 従たるもの:基礎科学研究
全体計画
本課題では、異なる空間スケールに対応した予測モデルアンサンブルと動態シミュレーションを統合し、マルチスケールの害虫リスク評価手法を構築する。初年目から2年目にかけて各スケールのリスク評価モデルを整備し、3年目以降はスケール間の生物応答パターンの関係性検証に注力する。解析は分布の中心(常発地)と周辺(分布拡大地域)に分けて行い、分布拡大中のクモヘリカメムシを主対象とする。
まず過去約20年(2003〜2022年)の東北6県および富山県におけるイネ害虫カメムシ類の個体数データを整理し、気象メッシュデータ、積雪量、植生などのリモートセンシングデータを統合した基盤データベースを構築する。
局所スケールでは、イネ害虫カメムシ類3種について圃場単位の被害リスク評価を行う。既存モデルを拡張して各種に対応した予測モデルを構築し、被害リスクを地図化する。さらに気象データと生育予測モデルに基づく出穂時期予測を取り入れ、害虫発生期との重複を考慮したリスク評価により精度向上を図る。加えて、過去データと気象・土地利用情報からマクロ〜景観スケールの個体群動態を予測する統計モデルを構築する。
マクロスケールでは、将来気象(MIROC5)と土地利用予測を用いてクモヘリカメムシの分布拡大シミュレーションを行い、30〜50年後の高リスク域を推定する。また、主要品種のイネ生育予測と成虫発生時期の重複を面的に評価し、被害リスクの高い地域を抽出・検証する。
さらに、局所からマクロまでの各スケールで、生物応答と環境要因の関係性の安定性や一般性を検証する。東北6県内での地域間比較に加え、富山県で独立解析を行い、得られたモデルの外挿性と汎用性を評価する。
なお、国立環境研究所は分担者として、過去データと気象・土地利用情報から景観スケールの個体群動態を予測する統計モデルを構築を行う。
今年度の研究概要
重要なイネ害虫の一種であるアカスジカスミカメに注目して、過去に構築したモデルを改良する形で、既存データと気象・土地利用情報から景観スケールでの個体群動態を予測するモデルの構築を行う。
外部との連携
農研機構東北農業研究センター、東京都立大学、玉川大学、福島県農業総合センター、富山県農林水産総合技術センター、岩手大学、新潟薬科大学
農研機構東北農業研究センターの田渕研グループ長を代表とする科研費(基盤B)の研究課題である。