マイクロ・ナノプラスチックの母子保健影響に関する多面的評価系の確立(令和 8年度)
Development of a comprehensive multidisciplinary assessment system for maternal and child health impacts of micro- and nanoplastics

予算区分
JPMEERF20265M05
研究課題コード
2628BA006
開始/終了年度
2026~2028年
キーワード(日本語)
ナノプラスチック,脳,母体,胎盤
キーワード(英語)
Nanoplastics,Brain,Maternal,Placenta

課題代表者

前川 文彦

  • 環境リスク・健康領域
  • 上級主幹研究員

担当者

研究概要

マイクロ・ナノプラスチック(MP・NP)は生態系への分布・影響を中心に関心が高まってきたが、最近人体にも無視できない量が取り込まれていることが明らかになった。特にNPはヒト細胞に直接取り込まれると考えられ、腸管壁・気道壁のみならず胎盤関門や脳血液関門も通過することが懸念されている。また近年、胎盤や胎児組織、さらには死後脳組織からの検出報告が相次ぎ、曝露による健康影響に関する社会的関心が急速に高まっている。特に、流産や早産との関連、神経発達への影響、神経疾患との関連等、発達期曝露による有害性を示唆する知見が蓄積しつつあり、母子保健の観点から早急な科学的評価が求められている。これまでの研究は動物実験や培養細胞を用いた基礎的知見が中心であり、実際のヒト曝露実態や粒径・材質の違いによる影響を総合的に理解するには不十分であった。本研究では、環境科学・毒性学・分析化学・生物物理学など異分野の専門家が連携し、新規技術開発を行うことで母体から胎児、さらに成長後に至るまでの影響を多面的に解明する技術基盤を構築することを目指す。具体的には(1)疫学調査試料を用いた曝露量の解析、(2)実環境測定による曝露実態の推定、(3)非ヒト霊長類を用いたADMET(吸収・分布・代謝・排泄・毒性)の精密検証、(4)母体および胎盤への蓄積と障害メカニズムの解明、(5)発達期の情動・認知機能への影響評価、(6)生活習慣病や神経変性疾患など後発的影響の検討を進める。さらに、ヒト疫学調査との連携により実際の生活環境を加味した曝露実験を行い、現実的かつ政策的に有用なリスク評価の実現を目指して実証実験を行う。こうして得られる知見は、科学的根拠に基づく政策立案の観点から環境省の施策形成に直結し、将来的な規制やガイドライン策定に資するもので、母子保健の向上と次世代の健康維持、持続可能な社会形成に大きく貢献することを目指す。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

本研究は現時点では殆ど情報が得られていないマイクロ・ナノプラスチック(MP・NP)の母子保健への影響に関して、毒性学や化学分析等の先端手法を屈指して多面的な評価手法を確立し、環境中からのMP・NP 曝露量推計と有害性評価を組み合わせることで将来的な規制や管理指針策定に資する科学的根拠を創出すための技術を開発することを目標とする。具体的には母体・胎盤・新生児に対する環境・体内動態把握と毒性評価、子どもの神経発達への毒性評価、神経変性疾患や生活習慣病等後発的な健康影響の検討(サブ1)、疫学試料や実環境試料を用いたMP・NP の曝露量の推計手法の解明、非ヒト霊長類等を用いたADMET(吸収・分布・代謝・排泄・毒性)評価(サブ2)における技術開発を多面的に推進する。更にこれら成果を統合し、MP・NP の環境リスク評価手法の高度化と、母子保健を守る政策提言を支える科学的根拠を提供する。

今年度の研究概要

サブテーマ1 健康影響評価に関する技術開発と実証実験
蛍光標識体MP・NP を用い胎盤系・神経系の細胞への取り込みを共焦点顕微鏡、フローサイトメトリー、超解像度顕微鏡で解析する技術開発を行い、細胞内取り込み経路の同定、細胞内局在についても明らかにする。また胎盤・脳など各種臓器へ分配される体内動態の詳細解析を透明化技術とLightSheet 顕微鏡を組み合わせて網羅的に解析する技術基盤を構築する。加えて、神経変性疾患や生活習慣病に関与するタンパク質の凝集, 生体膜とMP・NP の直接相互作用についての情報を中性子散乱、放射光CD で解析するための技術開発を行う。

サブテーマ2 曝露・動態評価に関する技術開発と実証実験
曝露媒体の試料と生体試料を合わせて評価することで曝露源の解明を試みるため、被験者宅のハウスダストに加え、使用したパーソナルケア製品のサンプル中や同じ食事を提供した被験者の尿のMP・NP を分析する。1 年次は、サンプルに含まれるMP・NP を分析するための前処理法を開発し、適切な前処理を行なったサンプルを熱分解GC/MS で分析することで、材質ごとの存在量や割合を評価する。マーモセットを用いたADMET 評価に関しては、蛍光標識したMP・NP 標準品を成体に経口投与することで臓器中のMP・NP が蛍光計測と対応して熱分解GC/MS でも検出できるか実証実験にて、マウスとの比較検証を行う。

外部との連携

大阪大学、広島国際大学、早稲田大学

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