樹木の実生の発芽や定着は、同種の種子が周辺にどれくらい存在するか(量)に依存することが知られています。これを密度依存性といいます。本研究では日本の冷温帯林優占樹種であるブナを対象として、周辺に存在する種子の数だけでなく「種子の質」による影響について、実生の発芽や定着に注目して調べました。
北日本のブナ天然林(白神山地)において調査を行なったところ、周囲に健全なブナの種子が多い場所では種子が発芽し、その後も育つ可能性が高い傾向がありました。一方で、中身が充実していない不健全な種子が多い場所では、種子が健全であっても発芽や定着の可能性は低い傾向がありました。
本研究の結果は、周りに健全な種子が多い場合には捕食者(アカネズミ等)が種子を食べきれないため一部の種子が生き残りやすいという正の効果があるのに対し、不健全な種子が多い場合には捕食者を誘引する効果のみ存在し、健全な種子が捕食されやすくなるということを示唆している可能性があります。

図:高倉森調査区(白神山地)におけるブナ実生の調査風景(矢印はブナ当年生実生を指す).