活動記録

2024年5月23日筑波大学構内緑地見学会

筑波大学の田中健太先生、上條隆志先生のガイドで、筑波大学構内の緑地見学を行いました。生きもの緑地ネットワークのメンバー35名が参加する大見学会となりました。筑波大学から15名、国立環境研究所をはじめ市内の5研究機関から9名、民間企業1名、環境NPOほか10名が参加しました。群生するツリガネニンジンなど、残された里地の植生を見学しつつ、各々のサイト管理の方法について意見交換やアドバイスを交わしました。

筑波大

生きもの緑地とは

学園都市に今なお残る里地のみどり

1970年代に、筑波台地の上で造成工事が開始された筑波研究学園都市。

それぞれの研究機関の建設にあたっては、敷地内の緑地の面積を30%以上確保することが定められていました。そうした緑地のなかには、古くから人間の働きかけを受けて成立してきた里地・里山の自然が残っています。

筑波研究学園都市造成当時の資料

筑波研究学園都市 造成当時の資料
官庁営繕事業記録

筑波研究学園都市の生きものたち

ウマノオバチ
ウマノオバチ
ツリガネニンジン
ツリガネニンジン
コオニユリ
コオニユリ
ウラナミアカシジミ
ウラナミアカシジミ
カワセミ
カワセミ
ノウサギ
ノウサギ
ルリビタキ
ルリビタキ
シマヘビ
シマヘビ

日本の里地・里山の自然は、人間社会の変化によって姿を変えつつあり、そこに生育する植物、生息する昆虫・動物のなかには絶滅が心配されるものも少なくありません。

学園都市の各事業所内のちいさな緑地の断片には、生きものが時に行き来するゆるい繋がりもあり、地域全体の生物多様性の保全にも役立っていることでしょう。そうした繋がり=ネットワークには、里地に由来しない緑地もかかわっているかもしれません。

生きものネットワークを残したい人々のネットワーク

「つくば生きもの緑地ネットワーク」は、いくつかの機関に所属する研究者が発起人となって 2019年に立ち上げた、生きもののネットワークを将来へ残したい人々のネットワークです。

さまざまな分野の専門家の知恵と情報を共有しながら、 まずは研究所内の緑地を生きものに配慮したかたちで今後に残していくことを目指しています。そして将来的には、より広い範囲の緑地を対象にしていけたらよいと考えています。

設立時のメンバーから

石濱史子(いしはまふみこ)

石濱史子(いしはまふみこ)
国立環境研究所生物多様性領域
生物多様性評価・予測研究室主幹研究員

生きものと研究者が揃う地で

学生時代から絶滅危惧植物の保全に関する研究をずっと行っています。現場での地道な調査研究から日本全国のデータ解析まで扱ってきた中で痛感するのは、やはり最後は地域の人々の知識と取り組みがなければ、本当に効果がある保全対策はできないということです。

「とかいなか」つくばの研究所や事業所は、ひっそりと残る里地の生きものとたくさんの“地元”研究者が揃う、特別な場所だと思います。おそらく多くの研究者が、それぞれの身の回りの生きものに愛着を感じたり、心配したりしていることでしょう。

そういった研究者たちの気持ちと知識を繋ぐことで、新たな保全の知を一緒に生み出すことができるような、そんなつくばならではのネットワークが作れたらと思っています。