活動記録

2023年12月2日【ネイチャー・ポジティブを地域にどう落とし込むか?~生物多様性地域戦略と多様なパートナーの参加~】が開催されました

「野生生物と社会」学会第28回大会公開シンポジウム【ネイチャー・ポジティブを地域にどう落とし込むか?~生物多様性地域戦略と多様なパートナーの参加~】が開催され、国立環境研究所の石濱 史子主幹研究員が自然共生サイトに関する講演を行いました。また、つくば環境フォーラム、金田台の生態系を守る会、洞峰いきものSDGsの会など、つくば地域で活動されているNPOのみなさんの活動紹介があり、パネルディスカッションでは自然生態系の回復を目指すための課題感が共有されました。

2023.12.2
「野生生物と社会」学会第28回大会公開シンポジウム【ネイチャー・ポジティブを地域にどう落とし込むか?~生物多様性地域戦略と多様なパートナーの参加~】(PDF)

こどもの森保育園視察IMG

生きもの緑地とは

学園都市に今なお残る里地のみどり

1970年代に、筑波台地の上で造成工事が開始された筑波研究学園都市。

それぞれの研究機関の建設にあたっては、敷地内の緑地の面積を30%以上確保することが定められていました。そうした緑地のなかには、古くから人間の働きかけを受けて成立してきた里地・里山の自然が残っています。

筑波研究学園都市造成当時の資料

筑波研究学園都市 造成当時の資料
官庁営繕事業記録

筑波研究学園都市の生きものたち

ウマノオバチ
ウマノオバチ
ツリガネニンジン
ツリガネニンジン
コオニユリ
コオニユリ
ウラナミアカシジミ
ウラナミアカシジミ
カワセミ
カワセミ
ノウサギ
ノウサギ
ルリビタキ
ルリビタキ
シマヘビ
シマヘビ

日本の里地・里山の自然は、人間社会の変化によって姿を変えつつあり、そこに生育する植物、生息する昆虫・動物のなかには絶滅が心配されるものも少なくありません。

学園都市の各事業所内のちいさな緑地の断片には、生きものが時に行き来するゆるい繋がりもあり、地域全体の生物多様性の保全にも役立っていることでしょう。そうした繋がり=ネットワークには、里地に由来しない緑地もかかわっているかもしれません。

生きものネットワークを残したい人々のネットワーク

「つくば生きもの緑地ネットワーク」は、いくつかの機関に所属する研究者が発起人となって 2019年に立ち上げた、生きもののネットワークを将来へ残したい人々のネットワークです。

さまざまな分野の専門家の知恵と情報を共有しながら、 まずは研究所内の緑地を生きものに配慮したかたちで今後に残していくことを目指しています。そして将来的には、より広い範囲の緑地を対象にしていけたらよいと考えています。

設立時のメンバーから

石濱史子(いしはまふみこ)

石濱史子(いしはまふみこ)
国立環境研究所生物多様性領域
生物多様性評価・予測研究室主幹研究員

生きものと研究者が揃う地で

学生時代から絶滅危惧植物の保全に関する研究をずっと行っています。現場での地道な調査研究から日本全国のデータ解析まで扱ってきた中で痛感するのは、やはり最後は地域の人々の知識と取り組みがなければ、本当に効果がある保全対策はできないということです。

「とかいなか」つくばの研究所や事業所は、ひっそりと残る里地の生きものとたくさんの“地元”研究者が揃う、特別な場所だと思います。おそらく多くの研究者が、それぞれの身の回りの生きものに愛着を感じたり、心配したりしていることでしょう。

そういった研究者たちの気持ちと知識を繋ぐことで、新たな保全の知を一緒に生み出すことができるような、そんなつくばならではのネットワークが作れたらと思っています。