福島第一原子力発電所事故による低線量放射線がサクラの花粉形成に及ぼす影響
論文情報
- タイトル
- Effect of low-dose radiation from the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant accident on cherry blossom pollen formation.
福島第一原子力発電所事故による低線量放射線がサクラの花粉形成に及ぼす影響 - 著者
- Nobuyoshi Nakajima, Kazuhiko Kobayashi, Masanori Tamaoki, Mitsuko Aono
＊下線で示した著者は国立環境研究所所属 - 雑誌
- Asian Journal of Atmospheric Environment
- 受理
- 2025年5月18日受理 2025年6月25日オンライン掲載
概要
福島第一原子力発電所事故による放射性物質の降下が植物に与える影響を調べるため、2014年から2021年の間に、福島県浪江町津島地区の3地点（浪江小学校、浪江中学校、浪江高校）で、ソメイヨシノ（Cerasus × yedoensis）の開花直前の花序を採取し、異常花粉比率を調査した。
空間線量率（SDR）および未熟花粉比率（IPR）の経年変化をモデル化し、SDRがIPRに与える影響の有無を検証した。その結果、福島第一原発事故由来の低線量放射線が、調査地域におけるソメイヨシノのIPRを押し上げていることが示された。特に、SDRが最も高かった2014年には、IPRの相対的増加率は30%～60%に達し、2016年にSDRが低下した際には20%～40%に減少、その後は15%～35%の範囲で推移した。
これらの結果は、他の多年生植物種の花粉形成に影響を与え、その結果、影響を受けた地域全体の生物多様性に長期的な累積的な影響を及ぼす可能性を示している。
