野生鳥獣や外来生物の管理においては、個体群の増減の指標(個体群指数)から動物の個体数や捕獲のインパクトを推定することがよく行われます (参考:論文紹介「導入と防除の履歴から、侵略的外来生物フイリマングースの個体数変化を復元・予測する」)。しかし、正確な推定のためにどのような個体群指数が適しているかは明らかではありませんでした。特に、捕獲数は行政機関への報告が義務付けられていて簡便に収集できることから個体群指数としてよく使われてきましたが、捕獲努力量の変化の影響を受けやすいこと等からその妥当性には議論がありました。
本研究ではシミュレーション実験を行い、捕獲数を個体群指数として用いると捕獲にかけた労力(捕獲努力量)の時間変化が大きいほど個体数を過小評価してしまう一方で、捕獲努力量の時間変化が少ないと個体数が一意に求まらないというジレンマがあることがわかりました(図)。一方、「捕獲努力量当たりの捕獲数(catch per unit effort; CPUE)」のような捕獲努力量の変化に影響を受けにくい個体群指数を用いた場合は真値に近い推定値が得られました。ただし、この場合でも捕獲努力量が時間変化していないと情報不足により個体数が一意に求まらない可能性が高いことがわかりました。これらの結果から、鳥獣管理の適切な評価には、CPUE等の捕獲努力量の影響を受けにくい個体群指数の収集や推定精度を高めるための補助的な個体数調査を組み合わせることが望ましいと考えられました。