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導入と防除の履歴から、侵略的外来生物フイリマングースの個体数変化を復元・予測する


論文情報
タイトル
Reconstruction and prediction of invasive mongoose population dynamics from history of introduction and management: a Bayesian state-space modelling approach
(導入と防除の履歴から、侵略的外来生物フイリマングースの個体数変化を復元・予測する)
著者
Fukasawa, K., Hashimoto, T., Tatara, M., Abe, S.
掲載雑誌
Journal of Applied Ecology (2013), 50(2), 469-478. DOI: 10.1111/1365-2664.12058       
受理・掲載日
2013/1/23 受理、2013/4/19 掲載 オンライン公開への外部リンク
概要

奄美大島では、固有動物の保全のためにフイリマングース(旧ジャワマングース)の防除が2000年度から環境省によって行われている。捕獲作業チーム「奄美マングースバスターズ」による"わな捕獲"が功を奏して、マングースは急速に減少しつつある。
今後の防除計画を考えるためには、残存個体数や根絶までにかかる年数の予測が必要だが、防除によって観察が困難なほどに減少したマングースの個体群調査を行うことは現実的ではなかった。

そこで本研究では、導入個体数、捕獲数と捕獲努力量という事業の中で蓄積されてきた情報から、導入年から現在までの個体数、および自然増加率や防除効率を推定するための状態空間モデルを開発した。
奄美大島のマングースに適用した結果、2011年度の残存個体数は95%の確率で42-408頭にあると推定された。また、推定されたパラメータによるシミュレーションの結果、現在の努力量を継続した場合には、2024年度までの根絶達成確率が90%を上回るという予測が得られた。なお、シミュレーションによる予測には単純化に伴う不確実性が常にあるため、新たに得られた捕獲データにより予測を逐次改善することが望ましい。

本研究で開発した手法は詳細な個体群調査を必要としないため、マングースに限らず多くの外来生物防除の現場に応用可能である。このような捕獲データに基づく推測は、外来種防除においてlearning by doing (実践から学ぶ) を促進するための有用なツールになると考えられる。

奄美大島に侵入したフイリマングース

奄美大島に侵入したフイリマングース
写真提供:環境省奄美野生生物保護センター