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生態系の融合に弱い生態系の性質について


論文情報
タイトル
Properties of ecosystems that are vulnerable during eco-fusion (生態系の融合に弱い生態系の性質について)
著者
Yoshida, K. and Tokita, K.
掲載雑誌
SCIENTIFIC REPORTS (2015), 5,7939. DOI: 10.1038/srep07939
受理・掲載日
2014/12/24 受理、2015/1/29 公開 オンライン公開への外部リンク
概要

大陸移動や気候変動などによって地理的な障壁が消滅し、それまで独立に進化してきた生態系同士が融合する現象がこれまでの地球の歴史の中で何度も起こったことが知られている。その際、生物の移動方向が一方向に偏っていたり、片方の生態系で生物の絶滅率が高くなるなどの非対称性が見られる場合が多々ある。

代表的な例として、約300万年前のパナマ地峡が接続したことに伴うThe Great American Biotic Interchange (GABI)が知られており、ほ乳類に関しては、北米から南米への移動が卓越していたこと、生物相の入れ替わりは南米で大規模で進行したことが知られている。このような非対称性が生じる原因について様々な仮説が提唱されてきたが、生態系の構造についてはこれまでほとんど議論されてこなかった。そこで本研究では独立に長期間進化した二つの生態系を融合させ、生物が相互に侵入するコンピュータシミュレーションを行い、絶滅率に非対称性が見られた生態系の性質を解析した。その結果、融合に弱い(融合したときに絶滅率が高くなる)生態系は、食物連鎖長が短く、植物よりも動物の方が多く、肉食動物が少ないという特徴を持っていた。また、このような生態系は長期間外部からの生物の侵入を受けない条件で特に成立しやすいことが明らかとなった。

この結果は、長く隔離されてきた南米大陸(白亜紀にゴンドワナ大陸から分離した後、パナマ地峡が接続するまで1億年間隔離)の生態系がGABIの時に弱かったこと、オーストラリア大陸(約4000万年前に南極大陸から分離して以降現在まで隔離)の生態系が近年の侵入生物に対して弱いことと関係しているかもしれない。

生態系同士の融合の概念図

図1:生態系同士の融合の概念図

強い生態系と弱い生態系の模式図

図2:強い生態系と弱い生態系の模式図

強い生態系、弱い生態系はそれぞれ図(a), (b)のような形状をしている。
弱い生態系は、植物の種数が少なく、動物の種数が多いが捕食性の動物(肉食+雑食)の種数が少なく、栄養段階の数が少ない。
また、1種あたりの個体数が少ない、という特徴を持つ。