論文情報
Life cycle sustainability assessment for waste-to-energy systems in developing countries: A systematic review and adaptive framework
著者:Cahyo Widoko Laksono, Minoru Fujii, Yasuaki Hijioka, Kenichi Nakajima
発行年:2026
掲載誌:Cleaner Environmental Systems, Volume 22, September 2026, Article 100472
DOI:https://doi.org/10.1016/j.cesys.2026.100472
キーワード
系統的レビュー、計量書誌学的分析、循環経済、動的境界条件ロジック、一般廃棄物、持続可能性指標
論文の紹介
急速な都市化が進む途上国では、増え続けるごみをどう処理するかが大きな課題となっています。その解決策の一つとして注目されているのが、ごみを燃やしたり、発酵させたりして最終的に電力に変える「廃棄物発電(WtE: Waste-to-Energy)」です。しかし、WtEが本当に環境や社会にとって望ましい選択かどうかを判断するには、温室効果ガスの削減量だけでなく、経済性や雇用への影響、資源の循環利用といった複数の側面を総合的に評価する必要があります。このような多角的な評価手法は「ライフサイクル持続可能性評価(LCSA)」と呼ばれていますが、これまでWtEに特化し、かつ途上国の実情に合わせて設計された評価手法は存在しませんでした。
本研究では、まず2014年から2024年に発表された25カ国・61件の関連論文を体系的に調べ、世界のWtE研究における傾向と課題を明らかにしました。その結果、多くの研究が環境面や経済面の評価にとどまり、地域住民や非公式に廃棄物回収を行う人々への影響といった社会的な側面を数値で示した研究は、全体のわずか15%にすぎないことがわかりました。また、既存の評価手法の多くは、電力網の脱炭素化や炭素価格の変化といった将来の政策や社会状況の変化を考慮できていないという弱点も見えてきました。
これらの課題を踏まえ、本研究では新しい評価の枠組み「適応型LCSAフレームワーク」を開発しました。このフレームワークには四つの特徴があります。一つ目は、電力の脱炭素化の度合いや炭素価格、廃棄物の組成、非公式セクターの関与といった外部条件の変化に応じて、評価の範囲そのものを柔軟に調整する仕組みです。二つ目は、資源の希少性や供給リスクを考慮した影響評価です。三つ目は、炭素価格などの政策状況に応じて、環境面と経済面のどちらを重視するかの重みづけを自動的に変化させる仕組みです。四つ目は、統計的な不確実性分析と実際の運用データを組み合わせて、評価結果の信頼性を検証する仕組みです。

このフレームワークの有効性を確かめるため、インドネシアの首都ジャカルタを想定した試算を行いました。試算からは、次の三つの点が示されました。
第一に、電力網の脱炭素化が進むと、WtEによる気候変動対策としての効果が27%減少することです。WtEは発電した電力を電力網に供給することで、本来そこで使われるはずだった電力(およびその発電に伴う排出)を「代替」したとみなされ、その分の排出削減が評価されます。しかし電力網自体の脱炭素化が進むと(本試算では排出係数が0.84から0.40 kg-CO₂/kWhに低下)、代替される電力がもともと低炭素であるため、この削減効果は小さくなります。これは電力網の脱炭素化という望ましい変化の結果ですが、同時に、電力代替のみを根拠としたWtEの気候上の意義が時間とともに薄れていくことを意味します。したがって途上国では、WtEを電力代替だけでなく、廃棄物の減量、資源循環、エネルギー効率、経済性といった多面的な観点から評価していく必要があります。
第二に、公式なルートによらない個人や小規模の非正規廃棄物回収業者 (いわゆるウェストピッカー)による資源回収を評価に組み込むと 、環境負荷が12〜15%低減すると評価されることです。これは、回収された金属やプラスチックなどが、新たに天然資源から生産される必要がなくなり、その生産に伴う環境負荷が回避されるためです。この効果は環境面で有益であると同時に、こうした回収業者の生計を支える社会的な意義も持ちます。一方で、彼らは劣悪な労働環境に置かれていることも多く、その貢献を評価に取り込む際には、労働環境の改善を含む包摂的な政策とあわせて考える必要があります。
第三に、季節による廃棄物の性質の変化がエネルギー回収率に8〜12%の影響を与えることです。
これらの結果は、従来の固定的な評価手法では見落とされてしまう重要な変化を、本フレームワークが捉えられることを意味しています。本研究の成果は、途上国の自治体や政策立案者が、地域の実情に応じてより適切な廃棄物発電技術を選択し、脱炭素社会の実現に向けた計画を立てる際の意思決定を支援するツールとなることが期待されます。




