倉敷市と姫路市でのVOC個別成分高時間分解能測定による光化学オゾン生成機構の解明(令和 8年度)Elucidation of photochemical ozone formation mechanisms through high‑time‑resolution VOC speciation measurements in Kurashiki and Himeji
- 予算区分
- 5MF-2603
- 研究課題コード
- 2628BA007
- 開始/終了年度
- 2026~2028年
- キーワード(日本語)
- 光化学オキシダント,揮発性有機化合物,アルデヒド類,化学イオン化質量分析計,パーオキシアセチルナイトレート類
- キーワード(英語)
- Photochemical oxidant,Volatile organic compound,Aldehydes,Chemical ionization mass spectrometer,Peroxy acetyl nitrates
課題代表者
猪俣 敏
- 地球システム領域
地球大気化学研究室 - 室長(研究)
- 博士(理学)
- 理学 ,化学,地学
研究概要
日本において、大気汚染の原因物質の窒素酸化物(NOx)全量と非メタン炭化水素(NMHC)全量は低減しているが、光化学オキシダント濃度の高濃度水準の改善は芳しくない。前身の推進費課題(5-2106)では、観測データから朝方6-9時の揮発性有機化合物(VOC)ごとのオゾン生成能の寄与を見積もると、夏にはホルムアルデヒドとアセトアルデヒドが3分の1を占めることを示し、アルデヒド類の重要性を見落としている可能性を示した。また、パーオキシアセチルナイトレート類(PANs)の熱分解がNOx律速時のNOx供給源となり、オゾン生成を強める役割を果たしていることも見出した。PANsの生成にもアルデヒド類が関与することから、アルデヒド類が高濃度オゾンイベントの鍵を握っているのではと考えられる。5-2106課題ではアルデヒド類のソースの特定には至らなかった。岡山県倉敷市は、毎年のように光化学オキシダント注意報が発令されている特異な地方都市である。同じ人口規模で、海岸沿いに工業地域が並ぶ点が共通な、兵庫県姫路市では、光化学オキシダント注意報は発令されない。そこでこれら2つの都市の大気環境を比較すれば、高濃度オゾン生成をもたらすメカニズムを解明できると考えた。そこで本研究では、倉敷市と姫路市の海岸沿いの工業地域に近い地点で、夏の約1か月間、VOCの個別成分の高時間分解能連続測定を行う。同時に、PANsの測定も行う。アルデヒド類の排出源があり、それが早いオゾン生成をもたらし、同時に生成されたPANsが気塊の輸送経路上でオゾンの光化学オキシダント注意報レベルの高濃度化に寄与しているのではないかという我々の仮説を証明する。高空間分解能大気化学輸送モデルも用いて、観測値の個別VOCデータを入力した際、オゾン濃度を再現できるかを調べ、また、アルデヒド類の排出源がある場合には排出源の特定を試みる。
研究の性格
- 主たるもの:応用科学研究
- 従たるもの:技術開発・評価
全体計画
光化学オキシダント注意報が毎年発令される岡山県倉敷市で二年目と三年目に、また同じ都市規模・都市環境で発令されない兵庫県姫路市で一年目に、夏の約1ヶ月間集中観測を行い、揮発性有機化合物(VOC)の個別成分(約25種)、大気汚染物質(O3、NO、NO2)、パーオキシアセチルナイトレート類(PANs)の高時間分解能データ(1分間隔程度)を取得する。取得した観測データは、アルデヒド類とPANsとオゾン生成に注目した解析を行うのと同時に、高解像度大気化学輸送モデルとの比較を行う。三年目に倉敷市で観測するオゾン生成速度とも比較・考察する。そして、瀬戸内海海岸沿いの工業地域にアルデヒド類の排出源があり、それが早いオゾン生成をもたらし、同時に生成されたPANsが気塊の輸送経路上でオゾンの光化学オキシダント注意報レベルの高濃度化に寄与しているのではないかという我々の仮説を検証し、最近の光化学オキシダント注意報の発令の原因の特定を行う。
今年度の研究概要
サブ1の今年度の研究内容は、兵庫県姫路市の瀬戸内海海岸沿いの工業地域の近傍の常時監視局で、姫路市環境監視センターの協力のもと、梅雨明け後の1ヶ月程度の期間、光化学オゾンの前駆物質である揮発性有機化合物について、SIFT-MSを用いて個別成分を高時間分解能で測定する。キャニスター捕集とDNPH捕集を行い、NMHC(PAMS-J-56(56種))、有害大気汚染物質(TO-14(44種))、アルデヒド類(10種程度)の測定も行う。サブ2で得られたPANsの測定結果を合わせ、アルデヒド類とPANsとオゾン生成に注目した解析を行うのと同時に、高解像度大気化学輸送モデルとの比較を行い、姫路市での光化学オゾン生成機構を考察する。
外部との連携
加藤俊吾(東京都立大学)、梶野瑞王(気象庁気象研究所)羽賀雄紀、兒玉力也(兵庫県環境研究センター)、定永靖宗(大阪公立大学)、松本淳(早稲田大学)