ターゲットスクリーニング分析との組み合わせによる迅速・網羅的水相パッシブ法の構築 (令和 8年度)Development of a rapid and comprehensive passive sampling method for aquatic environments coupled with target screening analysis
- 研究課題コード
- 2628CD004
- 開始/終了年度
- 2026~2028年
- キーワード(日本語)
- パッシブサンプラー,農薬,モニタリング
- キーワード(英語)
- passive sampler,pesticides,monitoring
課題代表者
野呂 和嗣
- 環境リスク・健康領域
計測化学研究室 - 主任研究員
研究概要
水環境のパッシブサンプリング(PS)法は、標準の採水法では見逃しまたは過小・過大評価しがちな短期的に増減する有機化学物質を捕捉可能であることから、将来環境モニタリングの標準法に換わることが期待される革新的な方法である。
一方で、近年分析技術の進歩により、標準試薬を必要としないターゲットスクリーニング(TS)分析が発展している。この2つの方法を初めて組み合わせることで、時間・物質的な網羅分析が可能な斬新な分析方法が確立する。しかしPS法で定量するためには、有機化学物質種ごとにサンプリングレート(Rs)を算出する校正試験が必要であり、検出を想定していない有機化学物質は定量できないという課題がある。本研究では、(1)Rsを簡易に推定できる予測モデルを構築し、(2)PS法とTS分析を組み合わせた新規手法を構築することで、時間・物質的に網羅できるモニタリング手法を開発する。本研究の成果は、水環境中の有機化学物質濃度の簡易・迅速・網羅的把握を可能とする新しいモニタリング法を確立し、適切なリスク評価を可能とする。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:応用科学研究
全体計画
本研究では、大阪府立環境農林水産総合研究所(以下、環農水研)が中心に実施する「課題1:PS法×TS分析による有機化学物質の網羅的な定量分析手法の構築」、静岡県立大学(以下、静県大)を中心に実施する「課題2:Rs推定モデル構築」、西工大で実施する「課題3:実験河川におけるフィールドキャリブレーションおよびRs推定モデルの検証」が連携し、迅速・網羅的なPS法を開発する。
【課題1-1】TS分析の検討
初年度は、3か月ごとに実験河川(図3)にPOCISを浸漬する。同時に、浸漬期間(14日間)中に2回のGSを行い、PS法のサンプルとGS法のサンプルについてTS分析を実施する。2年目はGS法の頻度を1回/1日とし、自動採水装置を用いて採水を行う。
実験河川周辺および上流は水田等の農地と住宅地があり、農薬や生活由来物質の検出が想定される(予備調査を実施済み)。標準試薬が市販されている有機化学物質について、GC-MS/MSおよびLC-MS/MSによる定量分析も同時に行い、TS分析によって定量可能あるいは不可能な有機化学物質を物性・リテンションインデックス・定量下限値に基づき分類する。
【課題1-2】PS法×TS分析による定量(2年目以降に実施)
Rsが既知の有機化学物質について、PSで得られたサンプルをTS分析で定量する。課題1-1で定量可能と分類された有機化学物質について文献調査を実施し、Rs値を得る。14日間のPSと自動採水器を用いた2回/日以上の超高頻度のGSを並行して実施し、サンプルをTS分析する。GSの平均値とPSで得られる定量値の差の要因を試料由来のマトリックスの影響、気象条件、水温、流速、水質(pH、溶存酸素濃度、EC、濁度、TOCなど) などのパラメータから解析する。精製カラム(GCカートリッジ等)追加やサロゲートの追加変更による回避・補正を行うため、マトリックスの影響の程度と傾向を分析対象有機化学物質ごとに明らかにする。
【課題2-1】Rs推定モデル構築
吸着速度定数と透過速度定数からRsを推定するモデルを作成する。透過試験と吸着試験から吸着速度定数と透過速度定数を算出する。初年度は、水環境中での検出頻度が高く標準試薬も入手しやすい農薬類について、吸着実験および透過実験を実施する。
今年度の研究概要
透過試験と吸着試験から吸着速度定数と透過速度定数を算出する。これらの定数を用いてサンプリングレートを推定するモデル式を構築する。また、既存の手法によってサンプリングレートの測定し、本モデルの推定精度を評価する。
外部との連携
大阪府立環境農林水産総合研究所の矢吹 芳教 主幹研究員が研究代表を務める。また、研究分担者として西日本工業大学の高見 徹 教授、大阪府立環境農林水産総合研究所の伴野 有彩 研究員、伊藤 耕二 主査、小野 純子 主査が参画している。