東京湾における棲息環境変化が生物個体群および群集構造に及ぼす影響(令和 8年度)Effects of changes in habitat conditions on biological populations and community structure in Tokyo Bay
- 研究課題コード
- 2626AH001
- 開始/終了年度
- 2026~2028年
- キーワード(日本語)
- 沿岸生態系,黒潮大蛇行,貧酸素,生活史初期,東京湾
- キーワード(英語)
- Coastal ecosystem,Kuroshio large meander,hypoxia,early life history,Tokyo Bay
課題代表者
児玉 圭太
- 環境リスク・健康領域
生態影響評価研究室 - 主幹研究員
- 博士(農学)
- 水産学,生物学
研究概要
東京湾における魚介類の群集構造は1990年代から2000年代にかけて急激に変化した。湾内で再生産を行う小・中型種は著しく減少した一方、体サイズが大型の魚類(スズキ、サメ・エイ類)が増大している。また、近年には暖海性のクロダイやタチウオ等の資源が増大している。こうした群集構造の変化は水温上昇や貧酸素水塊の影響に加え、2017年から継続した黒潮大蛇行の影響も疑われる。2025年に黒潮大蛇行が収束したことにより、今後湾内の生態系に変化が生じることが予想される。本研究では、生態学的特性、特に種組成・密度の変化および生活史初期の生残について、水温上昇や貧酸素水塊の影響とともに、黒潮大蛇行収束前後の変化を調査することにより、湾内の生物群集構造に棲息環境の変化が及ぼした影響の寄与を推定する。
研究の性格
- 主たるもの:応用科学研究
- 従たるもの:モニタリング・研究基盤整備
全体計画
・2026年度
[神奈川県水産技術センター] 漁業調査指導船「江の島丸」及び「ほうじょう」により、東京湾に設定した17定点において、主要魚種(シャコ、タチウオなど)の卵仔稚・幼生、および餌と想定される魚類(カタクチイワシ、コノシロ等)の卵仔稚や動物プランクトンをNORPACネットの鉛直曳網により採集する。また、湾中央部の観測定点において、開閉式NORPACネットによる層別曳網を実施する。また、東京湾に設定した5定点において試験底曳により底棲魚介類を採集し、種別の現存量を把握する。湾内における水温、塩分、溶存酸素濃度の観測を行うとともに黒潮流路の変動を追跡し、東京湾内の水質への影響を調査する。
[国立環境研究所]卵仔稚・幼生および動物プランクトンの水平・鉛直分布および個体数密度の経月・経年変化を明らかにする。また、底棲魚介類の群集構造の変化も明らかにする。
・2027年度
[神奈川県水産技術センター] 上述の野外調査を継続して実施する。
[国立環境研究所] 生活史パラメタ及び環境要因の経年変動を調査する。層別採集により得られた動物プランクトンの種組成と鉛直分布も調査し、主要魚種の卵仔稚の分布との関係を解析する。
・2028年度
[神奈川県水産技術センター] 上述の野外調査を継続して実施する。
[国立環境研究所] 生活史パラメタ及び環境要因の経年変動を調査する。あわせて、CTD/DOロガーによる水質観測結果から、水温、塩分および溶存酸素濃度等の環境要因の時空間的動向を明らかにして、卵仔稚・幼生の個体数密度および空間分布に及ぼす影響を推定する。過去のモニタリングデータも活用し、距離ベース冗長性分析等の多変量解析により黒潮大蛇行の開始前、継続期間、および収束後の魚介類種組成・密度の変化における環境因子の寄与を推定する。
今年度の研究概要
東京湾の主要魚種の初期生態における減耗要因解明のため神奈川県水産技術センター調査船による現地調査を実施した。シャコの幼生は昼は中層、夜は表層に蝟集する日周変動がみられた。貧酸素が発生した底層にも一部が分布したが、短期曝露では致死しない可能性が示唆された。タチウオは2026年の産卵量が多く、2027年も資源は高水準と予測されるが、黒潮大蛇行解消にともなう海況変化の影響が懸念される。今年度は同調査を継続し、湾内環境の変化が個体群動態に及ぼす影響を評価する。
外部との連携
神奈川県水産技術センターと共同実施