温室効果ガスの長期的変動をモニタリングする事業
地球環境モニタリングステーション(波照間、落石岬)─これまでの運営の歴史
波照間、落石岬での観測が20年以上も継続できたのは、決して個人の力によるわけではありません。何十人もの担当者が、それぞれの時代に必要な仕事を自らに課して、各人の努力でこなしながら長い年月の運営を引き継いで初めて継続できるもので、組織としての運営の成果と言えます。先人の良きアイデアを引き継ぎつつ、改良や合理化を重ねることで、ステーションは徐々に良くなり、観測精度が向上するとともに、観測項目の多様化・高度化などが実現できるようになってきました。
観測は、二酸化炭素とメタンから始まりました。観測の装置や標準品の市販品がほとんどないため、自分たちで観測システムを開発し、改良を重ねました。亜酸化窒素は、放射性物質を用いた電子捕獲検出器(ECD)で観測するために、放射性物質使用の手続きなども新たに行いました。さらに、大気汚染物質である窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾン、一酸化炭素などの観測が加わりました。また、PM2.5やPM10を測定するために、専用のガラス製10mの大気取り込みタワーを波照間に作りました。

23年の観測から見えるもの
─CO2、酸素、ハロカーボン、大気汚染物質などの動きとグローバルな収支の話
このような運用をたゆまず23年繰り返して行うことによって、二酸化炭素の地球上での動きが見えてきます。図に二酸化炭素の季節変化(図13)と長期変化(図14)を示しました。この図13から、夏に二酸化炭素の濃度が減少することがわかります。これは北半球の植生が、春から夏にさかんに光合成を行い、大気中の二酸化炭素を多く使うために大気中の濃度が減少することを示しています。また、北海道にある落石岬の方が二酸化炭素の濃度が大きく減少することもわかります。これは北海道やシベリアを含むこの緯度帯にある森林の面積が大きいことと関係しています。この緯度帯で7~8月に二酸化炭素が植生に吸収された大気の影響が徐々に南に伝播し、波照間では二酸化炭素の濃度の極小が8~9月に現れます。これは、各緯度帯の季節の特性とも関係があり、熱帯域にいくと季節変化はかなり小さくなります。長期的にはこの季節変化の大きさが二酸化炭素の吸収量や放出量に影響されることに注目して研究しています。


また、アジアという地域性で見ると、我が国が中国という現在世界一大きな二酸化炭素発生国の隣にあることの影響が、二酸化炭素のモニタリングに現れるだろうと予想されました。モニタリングの結果、これは特に濃度変動の大きさに現れていることがわかりました。わかりやすく比較するために、1994年冬季の二酸化炭素の濃度変化と2009年に取られたものを図16に示しました。冬季は時々中国大陸から濃度の高い大気が流れてきますが、2009年のデータの方が、明らかに高い濃度の大気が波照間に流れていることがわかります。1994年では、濃度が増加していますがその程度はかなり小さく、この間に中国での二酸化炭素の発生状況が一変しているであろうことが、モニタリングデータから読み取れます。コラム2にあるように中国では、2008年の北京オリンピックに向けた急激な経済発展により、2009年時点では90年代の2倍程度、現在では3倍程度まで二酸化炭素発生量が増加していると報告されています。

これらの二酸化炭素の由来にまつわる事情は、酸素濃度の精密測定や炭素の安定同位体比、放射性炭素濃度などを調べることによってさらに研究が進んでいます。また同様の地域的な発生量変化については、大気汚染物質やメタン濃度測定にも現れています。最近では、非常に高い濃度のPM2.5が観測されるようになってきました。また、フロンなど人為起源発生しかない物質のモニタリング結果に、中国での生産の様子が現れていることもわかってきました。
今後も、このような地球大気のモニタリングは継続しなければなりません。地球温暖化は100年規模の問題なので、数十年後の担当者が現在の記録まで遡り、変化を見つけられるように、精度の高い正確なデータを残しておくことが、現在の担当の役目です。
目次
目次
- 環境儀 NO.62
- Interview研究者に聞く
- コラム1
- コラム2
- コラム3
- コラム4
- コラム5
- コラム6
- コラム7
- 研究をめぐって
- 環境儀 NO.62 [6.6MB]