人の健康と地球環境を両立する食事「プラネタリーヘルスダイエット」を解説する日本語版インフォグラフィックを公開

 国立研究開発法人国立環境研究所(以下「NIES」という。)と(一社)日本LCA学会第17回エコバランス国際会議実行委員会(エコバランス国際会議実行委員会)は、人の健康と地球環境の両立を目指す食事の考え方「プラネタリーヘルスダイエット(Planetary Health Diet:PHD)(以下「PHD」という。)」をわかりやすく解説した日本語版インフォグラフィックを共同制作し、公開しました。PHDは、野菜や果物、豆類、全粒穀物などの植物性食品を中心に、肉や魚、乳製品を必要に応じて適量取り入れることで、健康と環境への配慮を両立させることを目指す国際的な食事指針です。これまで、日本国内では一般消費者や飲食事業者向けのわかりやすい日本語資料が限られていました。本資料では、日本人の現在の食生活とPHDが推奨する食事との違いに加え、食生活と環境負荷との関係や日常生活で具体的にできる行動を図表でわかりやすく紹介しています。本資料は、教育活動、普及啓発活動、講演資料、店舗や事業所での掲示、自治体や企業の情報発信、ウェブサイトやSNSでの紹介などに利用することができます。

1. 背景

私たちの日々の食生活は、自身の健康だけでなく、地球環境にも大きな影響を与えています。食料の生産、加工、輸送、消費、廃棄を含む食料システムは、温室効果ガス排出、生物多様性の損失、水資源利用、土地利用など、さまざまな環境問題と深く関わっています。特に、食に関わる温室効果ガス排出量の約60%は、食材の生産段階で発生していることが報告されています1)。また、同じ量のたんぱく質を得る場合、動物性食品(牛肉・甲殻類・チーズ・豚肉など)と比べて、植物性食品(豆腐・豆・穀物など)の温室効果ガスの排出量は大幅に低い傾向があります2)。

一方で、世界的には栄養不足と過剰摂取が併存し、食に起因する健康問題も大きな課題となっています。このため、近年は「人の健康」と「地球の健康」(プラネタリーヘルス)3)を同時に実現する食生活への転換が求められています。

こうした課題に対して、食・健康・環境分野の専門家からなるイート・ランセット委員会4)は、2019年に「プラネタリーヘルスダイエット(Planetary Health Diet:PHD)」を提唱しました5)。PHDとは、野菜や果物、豆類、全粒穀物などの植物性食品を中心に、肉や魚、乳製品を必要に応じて適量取り入れることで、人々の健康と地球環境の持続可能性の両立を目指す食事の指針です。

しかしながら、日本国内ではPHDの考え方や実践方法を一般消費者や飲食事業者などにわかりやすく伝える日本語資料は限られていました。また、環境負荷や健康面に関する科学的知見を統合的に紹介した普及啓発資料も十分とは言えませんでした。

そこで、NIESとライフサイクルアセスメント(LCA)をはじめとする環境パフォーマンス評価の専門家が集うエコバランス国際会議の実行委員会6)は、食と環境の関係に関する科学的知見をもとに、日本人の食生活とPHDの関係を視覚的に理解できる日本語版インフォグラフィックを共同制作しました。

本インフォグラフィックは、食に関する温室効果ガス排出量などの環境影響、日本人の現状の食生活と、健康と環境の両立を目指した国際的な推奨水準との違いをわかりやすく示すことで、消費者や事業者による科学的知見に基づく食の選択と提供を支援することを目的としています。

2. 公開したインフォグラフィックの概要

本資料では、

  • 食料システムが環境に与える影響
  • 食品別の温室効果ガス排出量の違い
  • 日本人の現状の食生活とPHDが推奨する食事バランスとの比較
  • 人と地球の両方に配慮した食事の考え方
  • 日常の食生活で実践できる具体的な行動

について、図表やイラストを用いてわかりやすく解説しています。

本資料は、一般消費者に加え、レストランや社員食堂、小売事業者、自治体、教育機関、企業などでの活用を想定しています。食と環境のつながりへの理解を深め、人の健康と地球環境の両立に向けた持続可能な食生活への取り組みを支援することを目的としています。

「食」に見る温室効果ガス排出量の割合の図

図1 食材の生産は気候変動に大きく関わる?
食に関わる温室効果ガス排出量の約60%は、食材の生産段階(土地利用・畜産・水産・農業など)で発生しています。データ出所:Crippa et al., Nature Food 2(3), 198-209, 2021, Fig.3(b)

食品別たんぱく質100gあたりの温室効果ガス排出量の図

図2 温室効果ガスの排出量は植物性食品より動物性食品のほうが圧倒的に多い?
例えば、同じ量のたんぱく質を得る場合、植物性食品(豆腐・豆・穀物など)と動物性食品(牛肉・甲殻類・チーズ・豚肉など)では、温室効果ガスの排出量に大きな違いがあります。データ出所:Poore & Nemecek, Science 360(6392), 987-992, 2018

現在の日本人の食生活と地球環境を持続的に守れる食事との比較の図

図3 日本人の「食」と地球を守る「食」のギャップ
私たちの健康と地球環境の両方を守るために、世界の食・健康・環境の専門家グループであるイート・ランセット委員会は、赤身肉や砂糖の摂取を減らし、果物や野菜、豆類、ナッツ類などの植物性食品を増やすことを推奨しています。この図は、イート・ランセット委員会「持続可能なフードシステムからの健康的な食事:食事と地球と健康」2025による各食品グループの目標摂取量を基準(100%の点線)としたときの、日本の現状摂取量が目標からどれくらい乖離しているかを示しています。 データ出所:日本の現状摂取量は Nomura et al. Frontiers in Nutrition, 10, 116105, 2013. 全粒穀物摂取量は Micha et al. BJM Open, 5(9), e008705, 2015. 目標摂取量は Nomura et al.の手法に従い、イート・ランセット委員会の 2500 kcal を日本平均の 1915 kcal に換算したものを用いています。

1日あたりのエネルギー摂取量と主要栄養素の1日あたりの摂取量の図

図4 私たちにも地球にもちょうどいい食事のバランスとは?
毎日の食事で食べる食品の量の約半分を野菜と果物にし、残りを全粒穀物や豆類などの植物性食品を中心に、肉や魚、乳製品を適量取り入れることが推奨されています。 各食品グループの目標摂取量は 2500 kcal/日を想定した場合の下限と上限を示しています。1 食や 1 日でこの目標を満たさなければならないわけではなく、1 週間などの期間における食生活の目安として、2050 年までに世界全体で目指す目標値となります。また、具体的な食事は地域の文化や対象者に合わせた調整が必要であり、厳密な食事内容を規定しているわけではありません。 データ出所:イート・ランセット委員会「持続可能なフードシステムからの健康的な食事:食事と地球と健康」2025 に基づき作成。

図5 私たち一人ひとりにできるプラネタリーヘルスダイエット

3. 利用条件

本資料(解説付きPDFおよびインフォグラフィック集の画像データ)は、出典を明記した上で、閲覧、ダウンロード、印刷、配布してご利用いただけます。教育活動、普及啓発活動、講演資料、店舗や事業所での掲示、自治体や企業からの情報発信、ウェブサイトやSNSでの紹介などに利用することができます。なお、資料中のイラストの著作権は、各権利者に帰属します。
出典表示の例
出典:エコバランス国際会議実行委員会・国立環境研究所「プラネタリーヘルスダイエットとは?」(2026年10月)

4. インフォグラフィックのダウンロード

解説付きのPDFおよび個別のインフォグラフィックを収録した画像集(⽇本語版・英語版)をこちらからダウンロードいただけます。
https://www-cycle.nies.go.jp/jp/report/PHD_Infographic.html

5. 今後の展開

エコバランス国際会議での社会実験

PHDの社会実装に向けた試みとして、2026年11月10–13日に名古屋で開催されるエコバランス国際会議6)のバンケットにおいて、名古屋市の円頓寺商店街と連携し、PHDの考え方を取り入れたメニューを提供する予定です。

本企画では、円頓寺商店街との協働により、地域の食材や日本の食文化を生かしたPHDメニューを提供します。また、食材調達、調理、エネルギー利用、移動などを含むカーボンフットプリント7)の算定を行い、国際会議全体の環境負荷を評価します。

世界各国から集まるLCAをはじめとする環境負荷評価の専門家・実務者が実際にそのメニューを体験することで、持続可能な食の実践可能性や普及のあり方について議論を深めるとともに、飲食店などでの導入に向けた課題や可能性について検討します。

なお、本バンケットは会議参加者向けのイベントですが、報道関係者の取材・参加については個別にお問い合わせください。

世界食料デー・食品ロス削減月間に合わせた情報発信

10月の「世界食料デー月間」および「食品ロス削減月間」に関連して、10月26日から10月30日までNIES社会対話・協働推進オフィスのSNS(https://x.com/taiwa_kankyo)にて本インフォグラフィックを順次発信します。

食と環境の関係や、日常生活の中で実践可能なPHDの考え方を広く紹介し、持続可能な消費行動に関する理解と実践の促進を図ります。

6. 注釈

注釈1:Crippa et al., Nature Food 2(3), 198-209, 2021, Fig.3(b)

注釈2:Poore & Nemecek, Science 360(6392), 987-992, 2018

注釈3:プラネタリーヘルス 人の健康と地球環境は切り離せないという認識に基づき、人の健康と地球環境の健全性を同時に実現することを目指す概念。プラネタリーヘルスダイエット(PHD)は、この概念に基づいて提案された食事指針の一つ。

注釈4:イート・ランセット委員会 人間の健康、農業、環境、政治科学などの分野の専門家37人が16カ国から参加し、健康的な食事と持続可能な食料システムのための世界的な科学的目標を策定した国際的な学術委員会

注釈5:最新の日本語版資料としてイート・ランセット委員会「持続可能なフードシステムからの健康的な食事:食事と地球と健康」2025(https://eatforum.org/wp-content/uploads/2025/09/EAT-Lancet_Commission_Summary_Report_Japanese.pdf)

注釈6:エコバランス国際会議 1994年から隔年で日本にて開催されている、ライフサイクル思考を中核とする環境パフォーマンスの評価および情報開示分野の国際会議(https://ecobalanceconference.org/)

注釈7:製品やサービスの原材料調達から廃棄までのライフサイクル全体におけるCO2などの温室効果ガス排出量。詳細はNIES「脱炭素ライフスタイルの選択肢データベース」をご覧ください(https://lifestyle.nies.go.jp/)。

7. 発表者

本報道発表の発表者は以下のとおりです。
国立環境研究所
資源循環領域 国際資源持続性研究室
 室長 中島 謙一
 主任研究員 小出 瑠
 デザイン担当 鈴木 裕美

8. 問合せ先

【研究に関する問合せ】
国立研究開発法人国立環境研究所 資源循環領域
国際資源持続性研究室 主任研究員 小出 瑠

【報道に関する問合せ】
国立研究開発法人国立環境研究所 企画部広報対話室
kouhou0(末尾に“@nies.go.jp”をつけてください)