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リュウキュウコノハズクOtus elegansの島間移動の初めての直接的証拠


論文情報
タイトル
First direct evidence of inter-island dispersal of Ryukyu Scops Owl Otus elegans
リュウキュウコノハズクOtus elegansの島間移動の初めての直接的証拠
著者
Sawada A., Tatematsu K, Kawano T., Takagi M.
澤田明、立松聖久、川野俊幸、高木昌興
*下線で示した著者は国立環境研究所所属
雑誌
Ornithological Science  
受理・掲載
2023年3月22日受理 / 2023年8月1日 オンライン掲載 オンライン公開への外部リンク
概要

「コノハズク」の仲間が構成するOtus属は、フクロウ目の中でももっとも多くの種を擁する属である。それらの種の多くは亜熱帯から熱帯の島々に分布しており、しばしば島ごとに異なる種や亜種に分かれている。このような進化の原因として、コノハズクの仲間はあまり島間を移動することがなく、集団間の遺伝子流動が少ないことが考えられている。したがって、コノハズクの仲間の島間移動の記録は彼らの島嶼部での進化を理解するための重要な手掛かりとなる。

 著者らは2021年に八重山諸島波照間島でリュウキュウコノハズクOtus elegans 134個体を足環標識し、そのうち1個体を2022年に八重山諸島石垣島で再発見した(図1-図3)。この個体は2021年8月10日に波照間島北東部の林縁でメスの成鳥として標識された。その後、2022年7月17日に標識地点から約52.7km離れた石垣島のバンナ岳ふもとの林内で巣穴を守っているところを再発見された。

 本記録はリュウキュウコノハズクにおける初の島間移動の直接的証拠である。この移動が台風などで飛ばされたことによる偶発的事例かどうかは不明だが、近隣の島間で本種が移動し得ることが示された。進化の道筋を推定するような解析では、しばしば集団間の個体の移動の頻度が重要な仮定となる。今回の記録は解析時のこうした仮定に一つの論拠を与えることで、リュウキュウコノハズクの進化を明らかにしていくうえで重要な基礎知見となる。

 先行研究で波照間島のリュウキュウコノハズクはメスの個体数がオスの個体数よりも少ないことが示されている。その原因の一つとしてメスがオスよりも島から移出する傾向が大きい可能性が指摘されている。今回波照間島から石垣島への移動を行った個体はメスであり、今回の記録はこの可能性を支持する記録ともなった。

図1
            波照間島の標識地点と石垣島の再発見地点の位置関係

図1 波照間島の標識地点と石垣島の再発見地点の位置関係

図2
              2022年の再発見時の写真(撮影者:立松聖久)

図2 2022年の再発見時の写真(撮影者:立松聖久)