情報提供の文脈 “メッセージ・フレーミング*2” は、外来種管理に対する人々の理解や支持に影響を与えることが知られています。外来種管理で得られる利益は多様であるにも関わらず、どのような文脈を強調することが、人々の外来種管理に対する理解や支持につながるのかは知られていません。
本研究では、情報提供に関する実験的なアプローチと表明選好法(Best-worst scaling:BWS)を組み合わせることで、管理に対する合意形成が必要な外来種であるノネコ管理により達成されうる目標(生物多様性保全、感染症予防、公衆衛生、動物福祉(猫の保護))に対する人々の選好を明らかにしました。さらに、メッセージ・フレーミングが人々の管理目標に対する選好にどのように影響するかについても比較検証しました。
その結果、ノネコの野生動物への影響を強調する生態系に関する情報提供(フレーム)は、人々のネコによる生物多様性への懸念を有意に高める一方で、ノネコの管理目標に関する選好には影響を与えないことがわかりました(図1)。また、ネコの飼主か否かによっても情報提供の効果に違いがあることがわかりました。本研究の結果は、外来種管理に対する人々の支持を促すためには、人々の関心に基づいた戦略的なメッセージの組み立てが重要であることを示しています。
*1 本研究では飼主のいない屋外にいるネコをノネコと定義しています。
*2 同じ目的を持ったメッセージにおいて、強調する文脈を変えることにより人々の選好に影響を与えること。
図1:BWSよる推定結果
写真:ノネコは生物多様性に影響を及ぼす可能性がある