本文へスキップ

無限に増殖可能なアマミノクロウサギの細胞の樹立に成功


論文情報
タイトル
Primary and immortalized cell lines derived from the Amami rabbit (Pentalagus furnessi) and evolutionally conserved cell cycle control with CDK4 and Cyclin D1.
無限に増殖可能なアマミノクロウサギの細胞の樹立に成功
著者       
Orimoto, A.#, Katayama, M.#, Tani, T., Ito, K., Eitsuka, T., Nakagawa, K., Inoue-Murayama, M., Onuma, M., Kiyono, T., Fukuda, T.
折本 愛#片山雅史#、谷 哲弥、伊藤圭子、永塚貴弘、仲川清隆、村山美穂大沼 学、清野 透、福田智一

#は本論文の共同第一著者/下線で示した著者は国立環境研究所所属
掲載雑誌       
Biochemical and Biophysical Research Communications, 525(4), 1046-1053
DOI: 10.1016/j.bbrc.2020.03.036       
受理日など       
2020年3月6日 受理、2020年3月13日オンライン掲載 オンライン公開への外部リンク
概要

アマミノクロウサギは、鹿児島県奄美大島及び徳之島の2島にのみ分布する日本の固有種です(図1)。本種は、生息地の減少や分断化、交通事故、ノネコやノイヌによる捕食のため個体数が減少しており、環境省保護増殖事業に指定され、積極的な保護増殖が進められています。

我々の研究グループは、アマミノクロウサギの死亡個体から取得した細胞に、ヒト由来の遺伝子を導入することで、無限に増殖可能なアマミノクロウサギ由来の細胞の樹立に成功しました(図2)。アマミノクロウサギのような希少動物は、個体を用いた実験を進めることは極めて困難であるため、細胞を用いた研究の必要性が強く認識されています。一方で、通常の体細胞は、細胞培養を続けると、細胞増殖が停止してしまうため、細胞を用いた研究を進めることは簡単ではありません。我々が樹立したアマミノクロウサギの細胞は、無限に増殖できるため、アマミノクロウサギの細胞レベルの研究を比較的簡単に進めることができます。したがって、本研究の細胞を用いれば、今後、地球温暖化によって発生が危惧されている新興感染症のリスクや汚染物質のリスクを比較的簡単に評価することができます。

アマミノクロウサギ 樹立したアマミノクロウサギの細胞

左写真:アマミノクロウサギ/右写真:樹立したアマミノクロウサギの細胞


関連リンク

半永久的に細胞増殖可能なヤンバルクイナ由来細胞の樹立-鳥類細胞の細胞増殖制御機構の一部を解明!- 国立環境研究所ウェブサイトプレスリリースへのリンク
本研究では"世界で初めて"絶滅危惧鳥類の無限分裂細胞の樹立に成功しました。