ササはクローナル植物(地下茎の伸長等により自己と同一の子を生産する植物)であり、しばしば地表面を覆います。したがって、ササが優占すると、若くて小さな樹木が受け取る光量が減少し、森林更新の阻害や樹木多様性の減少が起こることが知られています。しかし、林床においてササ個体群がどのように維持されているかについての知見は不足しています。
本研究では、岡山県北東部にあるブナ天然林において、1)チシマザサの稈※(下図)のおよそ一割が一年間で新しい稈に入れ替わっていること、2)林内にふりそそぐ光量が多いほど稈の寿命は長くなること、3)背の高いチシマザサによる遮光は背の低いチシマザサの稈の寿命を短くすることを明らかにしました。このことから、林内においてチシマザサの生理的統合(地下茎を介して光合成産物等を稈同士で受け渡しする現象)は十分ではなく、光環境変化によって稈の寿命にバラツキが生じていることが示唆されました。
※稈(かん):イネ科植物における中空の茎。
図:調査の様子。例として、黄色の矢印でササの稈を示している。