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外来種駆除後の生態系変化―コンピュータシミュレーションによる予測―


論文情報
タイトル
外来種駆除後の生態系変化―コンピュータシミュレーションによる予測―
Ecosystem changes following the eradication of invasive species: evaluation of various eradication scenarios by computer simulation.
著者       
吉田 勝彦*1, 畑 憲治*2*3, 川上 和人*4, 平舘 俊太郎*5, 大澤 剛士*2, 可知 直毅*2
(*1国立環境研究所, *2首都大学東京, *3日本大学, *4森林総合研究所, *5九州大学 )
Yoshida, K., Hata, K., Kawakami, K., Hiradate, S., Osawa, T., Kachi, N.
掲載雑誌       
Ecological Modelling.
DOI: 10.1016/j.ecolmodel.2019.108831
受理日など       
2019年9月26日 受理、2019年10月10日 オンライン公開 オンライン公開への外部リンク
概要

世界自然遺産の小笠原諸島では外来種による生態系の撹乱が問題となっており (図1)、外来種の駆除事業が進められている。しかし、外来種の駆除も現在の生態系に対して撹乱を加えることになるので、駆除後に生態系が思わぬ方向に変化し、生態系の回復が思うように進まない可能性がある。

そこで本研究では、小笠原諸島の媒島を対象とし、この島の生態系をコンピュータの中に再現し、外来ヤギ・ネズミを駆除した後の生態系変化を予測した。その結果、ヤギとネズミは同時に駆除した方が生態系の回復効果が大きいことが明らかとなった。しかし、ヤギ・ネズミ同時駆除後の生態系は全島森林化するか草原化するかの二極化することが予測された (図2)。

本研究の結果は、駆除後もモニタリングを継続し、生態系が極端な状態にならないよう、必要に応じて適切に管理することが重要であることを示している。

ヤギの食害による裸地化が進んだ媒島の写真

図1:ヤギの食害による裸地化が進んだ媒島
(2012年撮影, 撮影者:吉田勝彦)

ヤギ・ネズミ同時駆除後の草原の割合
図2:ヤギ・ネズミ同時駆除後の草原の割合(頻度分布)