自然体験を伴うツーリズム(Nature-based Tourism)は世界で最も成長著しい産業の1つである。なかでも希少な野生動物などの観察を目的とする野生動物観察ツアー(Wildlife
viewing)は国立公園等をはじめとする自然保護地域において人気のアクティビティーであるが、野生動物は「野生」であるが故に必ずしも観察できるとは限らない。
この野生動物を観察できないリスクに対処するため、多くの観光事業者は野生動物が見れなかったときに観光客に対してツアー代金の何割かの返金を行っている。
本研究では奄美大島におけるアマミノクロウサギ観察ツアーを事例に、上記の返金保証メカニズムを考慮に入れた経済モデルを応用することで、人々のツアーに対する潜在的需要の推定を行った。その結果、この返金保証メカニズムは観光客の意思決定とガイドの収入に大きな影響を与えることが示された。
本研究は野生動物の観察機会を維持することで、保全と観光の両立を図りながら、地域社会に観光から得られる便益を還元できる可能性を示唆した。
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