複数流域の長期地下水位変動データを用いた網羅的降雨応答解析による地下水理特性検討(令和 8年度)Groundwater hydraulic characterization through comprehensive rainfall-response analysis of long-term groundwater level records from multiple river basins
- 研究課題コード
- 2426CD028
- 開始/終了年度
- 2024~2026年
- キーワード(日本語)
- 地下水位変動,相関解析,長期データ
- キーワード(英語)
- Groundwater level change,Correlation analysis,Long term dataset
課題代表者
井手 淨
- 気候変動適応センター
気候変動影響評価研究室 - 特別研究員
研究概要
非常時の一時揚水に耐えうる典型的な地下水位変動パターンを、複数の地下水流域圏における多数の地下水観測データから検討するものである。具体的には地下水位に変動を与えうる降水量や揚水量のような時系列データとの関係を複数の流域で調べることで,地下水の流れが活発な地域の地下水位変動パターンや水文特性を割り出す。これにより揚水に対する地下水位の耐性を「地下水位の時間変動パターン」から評価できないか検討する。
研究の性格
- 主たるもの:応用科学研究
- 従たるもの:モニタリング・研究基盤整備
全体計画
本研究では、関東平野、濃尾平野、筑後平野および熊本平野を対象として、浅層地下水位変動パターンを規定する自然・人為影響因子を統計解析により定量化し、その影響が強く現れる典型的な地下水位変動パターンを明らかにする。解析には、降水量や揚水量など複数の説明変数を考慮可能な多変量自己回帰モデル(ARモデル)を用いる。
まずは解析手法の構築および熊本平野での先行解析として、比較的データが整備されている熊本平野を対象として先行解析を実施する。降水量、揚水量および地下水位データを収集・整理し、多変量解析に利用可能な月単位時系列データを作成する。降水量については、観測ベースの1/100°格子の長期降水量データを利用し、地下水観測井近傍の降水時系列を作成する。また、揚水量データとの整合を図るため、データ期間および時間分解能を調整する。降水量や揚水量との因果関係が高い地下水観測井を抽出し、解析手法の妥当性を検証する。次いで、対象平野への展開と地域別解析として、熊本平野で確立した解析手法を関東平野、濃尾平野および筑後平野へ適用する。同時に、自治体および関係省庁が管理する観測井の地下水位データを収集する。取得する地下水位データは、揚水規制による地下水位回復期および定常期を含む長期データ(概ね30年以上)を対象とする。収集した時系列データについてフーリエ解析等を用いて変動特性を把握した後、多変量解析を実施し、各地域における地下水位変動の支配要因を定量評価する。最後に、地域間比較および地下水位変動パターンの類型化として各平野で得られた解析結果を比較し、降水量や揚水量との因果関係が強い地下水位変動を示す地点の地形的位置や水理地質条件の共通性を検討する。さらに、複数地域の解析結果を統合し、各要因の影響が強く現れる代表的な地下水位変動パターンを抽出する。既往研究で指摘されている高標高域における降水応答特性についても検証し、より客観的な指標に基づく地下水位変動パターンの類型化を試みる。
今年度の研究概要
昨年度までに,熊本地域の地下水位時系列データを対象として,地下水位変動の周期成分を抽出する前処理手法(LOESS補間,STL分解等)および,相関構造に基づく地下水位変動パターンの分類手法を構築した。また,解析プログラムについても,他地域へ適用可能な形で整備を完了した。
今年度は,これらの手法を用いて,昨年度までに取得した各地域の観測井戸データを対象とした地下水位変動解析を実施する。具体的には,各観測井の地下水位時系列について周期成分を抽出し,相互相関解析および階層的クラスタリングにより,類似した変動パターンを有する地点群を抽出する。さらに,抽出された地点群について,地形的位置関係や水理地質条件との対応関係を整理し,地下水位変動特性を規定する要因の検討を行う。また,複数地域の解析結果を比較することで,流域や平野帯を越えて共通して現れる地下水位変動パターンの有無を検証する。これにより,地下水位変動と自然・人為要因との関係を定量的に評価するとともに,各地域に共通する地下水位変動特性の抽出を目指す。さらに,統計解析によって得られた結果について既往研究や地域の水理地質学的知見との比較を行い,その解釈可能性および適用範囲を検証する。