水銀同位体で読み解く北極ツンドラ水銀循環:自然火災と永久凍土融解の複合的影響評価(令和 8年度)
Mercury Cycling in the Arctic Tundra Deciphered by Mercury Isotopes: Combined Impact Assessment of Wildfires and Permafrost Thaw

予算区分
基盤研究(B)
研究課題コード
2629CD002
開始/終了年度
2026~2029年
キーワード(日本語)
水銀,永久凍土,放射性炭素
キーワード(英語)
Mercury,permafrost,radiocarbon

課題代表者

山川 茜

  • 環境リスク・健康領域
    環境標準研究室
  • 主任研究員
  • 理学博士
  • 地学

担当者

研究概要

北極の陸域生態系は、その永久凍土層に約597,000トンという全球の土壌水銀蓄積量の半分に匹敵する、膨大な量の水銀(Hg)を貯蔵している。一方、RCP8.5のシミュレーションでは、2100年には、自然起源の水銀放出量が、人為起源を上回るとの予測がされており、極めて脆弱である。また、人為起源の水銀のグローバルなHg(0)のシンクでもある。最新の知見によれば、活発な「短期循環プール」と、数千年スケールで形成された「長期循環プール」から成る北極の水銀システムは、今、二つの深刻な脅威に晒されている。一つは、年間約8.8トンの水銀を大気へ再放出させると見積もられる自然火災の頻発化であり、もう一つは長期プールそのものを不安定化させる永久凍土の融解である。それらの水銀移動経路に関する科学的な理解は極めて乏しい状況にある(Dastoor et al., 2022, Nature Reviews Earth & Environment)。本研究では、水銀安定同位体(d202Hg, D199Hg, D200Hg)と放射性炭素(14C)という二つの強力な同位体ツールを相補的に駆使することにより、火災と温暖化という二大攪乱要因が北極水銀動態に与える複合的影響を初めて統合的に解明し、北極水銀循環の脆弱性の全体像を明らかにする。北極ツンドラ凍土水銀の起源、滞留時間、蓄積時期を明らかにする初の試みである。

研究の性格

  • 主たるもの:モニタリング・研究基盤整備
  • 従たるもの:基礎科学研究

全体計画

本研究は、特性の異なる複数の北極ツンドラ地域を対象とし、大気−植物−土壌系を構成する各要素を網羅的に採取・分析することで、火災が短期的な水銀循環に与える影響をプロセスレベルで明らかにする。特に、同位体データ、水銀濃度、有機炭素量、長期的な物理環境データ を統合解析し、火災後のサーモカルスト進行度や活動層の深さと、水銀の同位体モデルを用いたフラックス推定、14Cを用いた水銀蓄積量の復元とその時間変化との関係過去から現在までの一連の時間スケールで一体的に明らかにする。
2026年度:事前検討、調査地選定・調査
2027年度:試料採取、分析
2028年度:分析
2029年度:解析、まとめ

今年度の研究概要

・事前検討:分析の前処理検討、試料採取の準備
・調査地選定・調査:アラスカ・スワード半島クーガロック
2002年に大規模なツンドラ火災があり、分担者らによって、火災後の地形変化、水文環境の変化、活動層の深化などが10年以上にわたりInSARリモートセンシングによる地表面変位量など計測された (Iwahana, Uchida et a., 2016, JGR) 。よって、環境変化の履歴が明確な「自然の実験場」として極めて価値が高いサイトである。本研究では、この火災跡地と隣接する未火災地を主要な比較調査サイトとして用いる。また本研究では、この火災跡地と隣接する未火災地を主要な比較調査サイトとして用いる。

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