令和4年度におけるこれまでの活動
2023年3月23日(水)、安積黎明高校化学部の生徒を中心とした23名が「環境カフェふくしま活動報告会」に参加するため福島県環境創造センターにやってきました。
昨年は開催直前に震度6強の大きな地震にみまわれ、開催が危ぶまれる場面もありましたが、今年は無事当日を迎えることができました。
昨年度の活動報告会開催レポートはこちら
脱炭素社会には何が必要?「環境カフェふくしま」の報告会を開きました
※「環境カフェふくしま」は、環境課題をテーマに対話を通じて、問いを立てる力、質問力、探求力、観察力、理解力などの科学技術リテラシーを身につけることを目的とした、国立環境研究所福島地域協働研究拠点(以下、福島拠点)が行うプログラムです。
令和3年度の「環境カフェふくしま」は、安積黎明高校化学部の8名に協力いただいて実施しました。
過去記事:
対話で環境を学び合うプログラム「環境カフェふくしま」を安積黎明高校と行いました~オリエンテーション、第1回から第6回~
脱炭素社会には何が必要?「環境カフェふくしま」の報告会を開きました
対話で学ぶ「環境カフェふくしま」を一緒に開催してみていかがでしたか? ~安積黎明高校化学部顧問 益子章先生へのインタビュー~
令和4年度の環境カフェふくしまは、8月から2月のあいだに月1回程度の頻度で開催されました。
通年の対話プログラムのテーマは「持続可能な社会」です。
プログラムの前半では、自然共生社会と生物多様性の課題について考え、後半では、循環型のまちづくりをテーマに“賢い消費者”として自分ができる行動について学び、グループごとに発表を行ってきました。
発表「持続可能な社会に欲しいモノ・コトは何だろう?~2030年、郡山で~」
活動報告会を前に、今回は生徒の皆さんに、環境創造センター研究棟内にある国立環境研究所福島地域協働研究拠点内を見学してもらいました。
いつもはスタッフが高校に出向いて開催しているため、生徒の皆さんが研究所内を見学するのは初めてです。
見学を終えると、いよいよ活動報告会が始まります。
松田拠点長の開会のあいさつのあと、まずは浅野研究コーディネーターが令和4年度環境カフェふくしま活動概要について説明しました。
今年の「環境カフェふくしま活動報告会」の発表テーマは、「持続可能な社会に欲しいモノ・コトは何だろう?~2030年、郡山で~」です。
高校生からの活動報告で発表を行うのは、今年度の環境カフェふくしま参加者の生徒11名です。
それぞれ調査データを交え、現状課題の指摘をし、発表をおこないました。
A班は「町と微生物がつながる社会」として、生物多様性の観点から微生物にフォーカスし、コンポストによる生ごみの堆肥化やプラスチックの分解を提言しました。
B班は「私たちが自然にできること」として、生態系サービスの観点から、自然と人間社会のかかわりについて考えを深め、震災の記憶を語り継ぐ語り部を提言しました。
C班は「郡山市の特色から考えられる循環型のまちづくり」として、循環型まちづくりの観点から、過疎化が進んでいる地域に着目し、人を循環させ人々が繋がる場を設ける提言しました。
発表が終わると、会場にいる高校生、研究者から質問や感想を話してもらいました。
発表を聞いていた高校生からは、
「持続可能な郡山を考える上で、各班それぞれが全く異なる観点から捉えていて面白かった。」
「身近な環境問題をテーマにしており、それを自分たちが住んでいる地域や日常と関連させながら探求をしていて興味深かった。」
「過疎化が進んでいる地域に住んでいるので、Cグループの発表が参考になり面白かった。」
などの感想がありました。
福島拠点の研究者からは、
「生ごみとして収集する前に、乾燥させることで収集量を減らせることができて、運搬費を減らすことができそう。他の国や地域での取り組みも調べてみてほしい」
「原発事故の被害や凄惨さだけではなく、どうやって乗り越えてきたか取り組みや対策を語り継いでいくことに共感した」
「郡山市という単位では見えなかった、中田町や田村町など「地域」の特色に着目したところがよかった」
とコメントがありました。
研究者からも新たな視点の提示があり、ぜひ考え続けてほしいという激励のコメントが多く寄せられました。
今回は、郡山市環境部環境政策課気候変動適応推進係の方にも参加いただきました。
郡山市職員の視点から、「2030年という具体的な未来を想定して、専門的な内容まで調べてまとめられている点がよかった。考え、そして行動に移すことが大事。今後に活かしてほしい。」
というメッセージが贈られました。
研究者と高校生との対話~生態系サービスに支えられる暮らし~
また、今回の活動報告会では、ワールドカフェを企画し、生徒の皆さんと研究者が対話する時間を設けました。
ワールドカフェとは数人のグループに分かれ、テーブルごとに対話するというものです。
ラウンドごとにテーブル間を移動し、グループメンバーを換えて繰り返し対話を行います。
カフェのようなリラックスした雰囲気の中で、その場にいる人の考えを共有し合う企画です。
今回のワールドカフェは、安積黎明高校の生徒22人と、国立環境研究所の研究者7人、郡山市職員の方が参加し、6テーブルに分かれて行いました。
1ラウンド目の前半では「自分の暮らしのなかの自然とのかかわりはどんなことがありますか?」という質問が投げかけられました。
参加者は2分間、思いつく限り付箋にひとつずつ答えを書いていきます。
後半には生態系サービスカードが提示され、カードのどれと関係しているか、グループで話し合いながら分類を行いました。
2ラウンドでは、参加者がテーブル間を移動します。
移動後、テーブルに残ったファシリテーターからラウンド1での話し合いの経緯について説明され、1ラウンド目と同様のテーマで回答を書き足していきます。
再度テーブル間を移動した3ラウンド目では「皆さんが書き出した付箋の中で、「これがなくなると困る!」のはどれですか?そしてなくなる原因や理由は?」という質問が投げかけられ、思いつく答えを付箋に書き出していくとともに、なくならないために何ができるのか、考えを共有し合いました。
高校生たちから積極的に意見が出され、研究者と高校生たちの垣根を感じられない様子で、どのラウンドも活気のあるにぎやかな雰囲気で対話が進みました。
高校生たちも研究者も楽しい様子で、笑顔が見られます。
ワールドカフェ終了後、高校生たちからは、
「自分の思っていること以外のことも知ることができてよかった。」
「今回の話し合いで自分の生活に身の回りの環境が想像していた以上に関わっていたことに気づいた」
「身のまわりの自然をたくさん集めてみると、いくつかの事象が関連して、すべてがつながっていることがわかった。」
というコメントが寄せられました。
新たな気づきを得ることができ、自分たちの暮らしをとらえ直すきっかけとなったようです。
福島拠点では、令和4年度の1年間を通じたプログラムと活動報告会の経験を活かし、令和5年度も継続して「環境カフェふくしま」に取り組んでいきます。
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概要
- 企画名
- 令和4年度環境カフェふくしま活動報告会
- 開催日時
- 2023年3月23日(水) 11:00~15:00
- 開催場所
- 福島県環境創造センター交流棟コミュタン福島
- 参加者
- 福島県立安積黎明高校化学部の生徒を中心とした23名、福島拠点の研究者、郡山市職員
プログラム
- 11:30
- 開会挨拶
松田和久(福島拠点長) - 11:05
- 環境カフェふくしまの活動紹介
浅野希梨(福島拠点研究コーディネーター) - 11:20
- 高校生からの活動報告
- 12:05
- 講評・コメント(NIES職員・自治体職員から)
玉置雅紀(福島拠点室長)/大西悟(福島拠点主任研究員)/遠藤氏(郡山市環境政策課) - 12:15
- お昼休憩
- 13:15
- ワールドカフェの説明・練習
浅野希梨(福島拠点研究コーディネーター) - 13:25
- 全体でのワールドカフェ
浅野希梨(福島拠点研究コーディネーター)、テーブルファシリテーター6名 - 14:25
- 休憩
- 14:35
- 各テーブルの内容を発表 コメント
中村省吾(福島拠点主任研究員) - 14:50
- 全体まとめ~講評・コメント~
林誠二(福島拠点研究グループ長) - 14:55
- 閉会挨拶
林誠二(福島拠点研究グループ長) - 15:00
- 終了