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対話で学ぶ「環境カフェふくしま」を一緒に開催してみていかがでしたか? ~安積黎明高校化学部顧問 益子章先生へのインタビュー~

国立環境研究所福島地域協働研究拠点(以下、福島拠点)は、令和3年度、環境について対話を通じて学び合う「環境カフェふくしま」というプログラムを福島県立安積黎明高等学校化学部(以下、安積黎明高校)と実施しました。
1年にわたるプログラムを協働で運営できたのも、高校側に強力な協力者がいたからです(ダジャレ…?)。
「環境カフェふくしま」実施のキーパーソンである化学部顧問の益子章先生に1年間、福島拠点とプログラムを実施した感想をお伺いしました。

益子先生の写真

安積黎明高校のキーパーソンである益子先生

※「環境カフェふくしま」は、環境課題をテーマに対話を通じて、問いを立てる力、質問力、探求力、観察力、理解力などの科学技術リテラシーを身につけることを目的とした、国立環境研究所福島地域協働研究拠点(以下、福島拠点)が行うプログラムです。
令和3年度の「環境カフェふくしま」は、安積黎明高校化学部の8名に協力いただいて実施しました。
過去記事:
対話で環境を学び合うプログラム「環境カフェふくしま」を安積黎明高校と行いました~オリエンテーション、第1回から第6回~
脱炭素社会には何が必要?「環境カフェふくしま」の報告会を開きました

始まったきっかけと1年を振り返って

——国立環境研究所のイメージ、環境カフェふくしまが始まったきっかけはどのようなものですか。

私は、2021年4月に異動で、安積黎明高校に着任し、化学部の顧問になったのですが、国立環境研究所のことも、福島地域協働研究拠点のことも知りませんでした。
はじめて、研究所の浅野さんから「環境カフェふくしま」について提案の電話を頂いた時も「新たな営業の電話かな?」とだいぶ怪しんだのですが、内容をうかがったら、生徒にとって意義のあるものだろうと思い、2つ返事で「やりましょう」となりました。

安積黎明高校の校門の写真

安積黎明高校の校門から

——私たち福島拠点にとってもはじめての取り組みだったわけですが、1年間一緒にプログラムを行ってみて、いかがだったでしょうか?

令和3年度は「脱炭素社会」がテーマでした。
私は、言葉は聞いたことがあっても、そこまでは知らない、というか、生徒もそうだと思います。
それが、活動報告会では、あんな風に堂々と発表をするようになりました。
私は、「立場は人を変える」と思っています。
活動報告会で、生徒たちは最初、つくばや、札幌からも発表を聞いてくれる人がいるなんて、思っていなかったと思います。
それが、福島拠点のおかげで、発表の場ができた。そうして、生徒もちょっとずつ自信をつけていくんじゃないでしょうか。

また、こんなことがありました。
一度、授業やホームルームの時間が押してしまって、定刻までに集まることができませんでした。
その時に、担当の浅野さんだけでなく、あちら側で調整してくれて、準備してくださっている人たちをお待たせしてしまいました。
そんな風になって感じるのも失礼ですが、「これだけの人たちが、生徒とのプログラムのために時間を調整して、準備を進めてくださっているんだな、有難いな」と感謝の思いと申し訳ない気持ちで複雑でした。

打合せの様子の写真

打合せの様子

生徒たちに起きた変化

——「環境カフェふくしま」に参加した生徒さんたちに何か変化はあったでしょうか?

去年参加したメンバーだと、わりとおとなしい感じの1年生の生徒たちの成長をとくに感じました。
控えめながら、自分の意見をしっかり述べるようになっているな、と。
明確に目に見えるものではないですが、参加した生徒たちの自主性は増したのではないか、と感じています。

前にも話しましたが、こうしたプログラムの成果は、すぐに表れるものではないと思っています。
生徒が成人になって、これから10年後、20年後、あの時の経験が良かったな、と振り返って思うようなものではないでしょうか。
そこまで年数を経ないとしても、参加時に2年生であった生徒が、進路を考える時に知らぬうちに、ちょっと選択肢が広がっているとか、大学に入学した時に、「そういえば『環境カフェふくしま』で話題にしていた“あれ”が、少し進路選びに関係したかな」とか。

令和3年度3月の活動報告会の会場の様子の写真

令和3年度3月の活動報告会の会場の様子

今後への期待

——「環境カフェふくしま」のプログラムに期待していることはありますか?

私は、生徒たちに「選択肢」「出口」を増やしてあげたいと思っているんです。
そして、自分に自信をもって自分で学び、考えていってもらいたい。
以前の赴任先の高校、—そこは外部との交流機会の多い学校だったのですが、生徒たちが外の人達と交流することで、自主的にぐんぐんと成長していく姿を身近で見ました。
素地のある子は、外と繋がり、刺激を受けることでどんどん伸びていきます。
安積黎明の子たちは、少し引っ込み思案な雰囲気がありますが、今回の環境カフェふくしまに参加する様子を見て、成長の兆しを強く感じました。
福島拠点という研究所の人たち、外の人達と繋がるチャンネルを持つことで、自分の殻を破り、自信をつけていってほしいな、と思っています。

インタビュー中の益子先生の写真

インタビュー中の益子先生

——今後、このプログラムの意義についてはどのような考えを持っていらっしゃいますか?

このプログラムは、限られた人数で、定期的に開催し、時間をかけた関係づくりをしながら、対話で学びが進むことが魅力だと思っています。
この貴重な機会を化学部の子だけでなく、もう少し関わる生徒を増やしたいな、と考えて、他の自然科学系の部活動にも声を掛けていて、こうした機会に参加できる生徒の輪を広げたいと思っています。
地学部と物理部の顧問の先生は同じ方なのですが、とても熱心で、全国大会へ導いたこともある方です。この話をしたところ、ぜひ、と乗り気でした。
1年目で手探りのことも多かったですが、これから4年、5年と同じプログラムを続けていき、歴代の参加者が生まれることで、「環境カフェふくしま」の意義が見えてくるんじゃないか、と期待しています。
どうぞ今年度もよろしくお願いいたします。
(取材日:2022年4月22日 場所:福島県立安積黎明高等学校)

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