つながりをみつける思考法
「この商品って環境によいの?」、「あの企業は環境に力をいれているようだけど、本当?」、「環境問題を身近に感じることってできるの?」
そんな疑問を考える際に役立つのがライフサイクル思考です。
私たちが使っている商品やサービスは、目に見えないところで色々なものとつながって循環しています。
利用している時だけに着目するのではなく、原材料の採掘、製造、利用、廃棄の環を「ゆりかごから墓場まで」総合的にとらえることで、より良い選択を手助けする思考法です。
“スマホの生涯”をみてみよう
例えば、スマートフォン(スマホ)を考えてみましょう。
手のひらサイズの箱の中には少なくとも500以上の部品が集まっています(1)。
それぞれは、世界各地で製造されていているので、使っている人には見えない採掘場や工場で、その地域の環境に影響を与えています。
だから、温室効果ガスの排出はもちろんのこと、水・土壌・大気環境、毒性、生物多様性の点でも配慮が必要になります。
ゆりかごから世に出る時期には、資源とエネルギーの両方を必要とするので、その過程での様々な環境影響を把握することが重要です。
手元にあるスマホは、ライフサイクルでは「使用」の段階です。
この時、エネルギーとして電気を使います。
毎日、充電していますよね。
少し想像してみると、コンセントの先には、電線があり、その先には発電所があることに気が付きます。
また、スマホでアプリを動かすには、本体だけでは機能しません。
Wi-Fiなどの通信インフラ、情報を処理するデータセンターといった裏方のお仕事が必要です。
スマホの利用を考えるだけで、たくさんのつながりが見つかります。
役割を終えたら、寿命を迎え、廃棄されます。
もちろん、一部は、中古品で売ったり(=リユース)、分別して再利用したり(=リサイクル)することもあります。
スマホには、希少な金属が含まれているので、リサイクルすることは重要です。
使わなくなったスマホを集めて、東京オリンピック・パラリンピック2020のメダルを作ったことは話題になりました(2)。
ライフサイクル思考により、身近なものがどの段階で環境に悪いあるいは良い影響を与えているのか、を把握する考え方を身に着けることができます。
身近なところでの応用例
次に良い選択を促すために、数値で評価することが重要になります。
その時、頼りになるのがライフサイクルアセスメント(LCA)です。
LCAは、ISO14040シリーズで規格化され、世界で使われています。
ライフサイクルでの環境影響を算定するルールが定められています。
LCAは、多くの商品や企業の評価で実績があります。
身近なところでは、CO2の排出量の足あとを算定したカーボンフットプリントの表示に応用されています。
コンビニなどで商品のパッケージの裏面をのぞいてみると、表示をみつけることができるかもしれません。
ライフスタイルの面では、日々の活動のカーボンフットプリントを示した「脱炭素型ライフスタイルの選択肢」が公表されています(3)(https://lifestyle.nies.go.jp/)。
LCAは、こうして環境や社会に配慮したエシカルな消費やライフスタイルを数値で応援しています。
地域の循環をきちんと評価するために
LCAを地域創生にいかそうという研究も盛んになってきています(4)。
やはり、良い取り組みがきちんと評価されることは大切です。
地域は、製品とサービスの生産と消費、企業活動と日常生活が、同時多発的に起こる場所です。
家庭で不要になった廃棄物が、製品の原材料になったりします。
ただし、その際にエネルギーが必要になるので、無理な循環はかえって環境に悪影響を与えることもあります。
だから、ライフサイクル思考にもとづいて地域の循環を考えていく仕組みづくりが大切だと考えています。
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参考文献
- Joshi, A., Gupta, A., Verma, S., Paul, A. R., Jain, A., & Haque, N. (2021). Life Cycle Based Greenhouse Gas Footprint Assessment of a Smartphone. In IOP Conference Series: Earth and Environmental Science, IOP Publishing , Vol. 795, No. 1, p. 012-028
- 今井亮介. (2020). [都市鉱山からつくる! みんなのメダルプロジェクト」 の成果と小型家電リサイクルにおけるレガシーの継承について. 廃棄物資源循環学会誌, 31(3), 177-188.
- 国立環境研究所.脱炭素型ライフスタイルの選択肢「カーボンフットプリントと削減効果:全国・52都市・10地方・4大都市圏別データベース」https://lifestyle.nies.go.jp/
- 大西悟. (2021). 地域循環共生圏の形成への LCA 研究の貢献にむけて. 日本 LCA 学会誌, 17(4), 212-220.