一年間の活動の集大成、高校生たちが発表の場へ
2024年3月28日(木)、安積黎明高等学校の8名が「環境カフェふくしま活動報告会」で一年間の成果を発表するため福島県環境創造センターにやってきました。
これまで、環境カフェふくしまの参加者は一年間かけて、脱炭素社会実現のために何が必要なのか、郡山市で何ができるのかをグループごとに学び考えてきました。
活動報告会ではその学びの成果として、郡山市の職員の方や福島拠点の研究者の前で、現状と課題についてデータを交えて指摘をし郡山市の強みや特徴を活かした提案を行います。
普段は彼らが通う安積黎明高校で環境カフェふくしまの活動に取り組んでいますが、今回は国立環境研究所福島地域協働研究拠点が所在する環境創造センターでの開催でした。
福島拠点からは、いつも環境カフェに関わっているメンバーだけでなく、河川生態学やサステナビリティなど様々な分野を専門とする研究者が彼らの発表を聞きに参加しました。
昨年度の活動報告会開催レポートはこちら
持続可能な社会に欲しいモノ・コトは何だろう?~2030年、郡山で~[令和4年度環境カフェふくしま活動報告会開催レポート]
※「環境カフェふくしま」は、環境課題をテーマに対話を通じて、問いを立てる力、質問力、探求力、観察力、理解力などの科学技術リテラシーを身につけることを目的とした、国立環境研究所福島地域協働研究拠点(以下、福島拠点)が行うプログラムです。
過去の活動内容はこちら:
環境カフェふくしま 記事一覧
発表~2030年に郡山市が温室効果ガス50%削減を実現するための提案~
松田拠点長の開会のあいさつでは、一年間の活動や取り組みを振り返りながら、高校生らの発表に期待を寄せる言葉がありました。
その後、環境カフェふくしまの立ち上げを行い、今年度は研究協力者である浅野希梨氏から2023年度の環境カフェふくしま活動概要について説明しました。
今回の「環境カフェふくしま活動報告会」の発表テーマは、「2030年に郡山市が温室効果ガス50%削減(2013年度比)を実現するために◯◯◯◯の観点からの提案」です。
参加者は6月から始まった対話プログラムを通じて、脱炭素社会実現のために何が必要なのか、郡山市で何ができるのかをグループごとに学び考えました。グループごとに「◯◯◯◯の観点」にどんなキーワードを入れるか考え、独自の提案を発表してもらいました。
今年度は環境カフェ参加者が3グループに分かれ、発表を行いました。
A班は「郡山の特色を生かした森林の活用」というタイトルで発表を行い、林業従事者を確保し森林の管理面積を増やすために、楽都郡山として楽器の製作に力を入れ、収入源とすることを提案しました。
B班は「エネルギーと環境の両立と課題」というタイトルで発表を行い、ソーラーシェアリングと蓄電池を活用して郡山市のブランド野菜を作ることで、農業におけるエネルギーの自給自足を目指す提案をしました。
C班は「『たらふくふくしま』プロジェクト~福よ『こい』♡~」というタイトルで発表を行い、郡山市で伝統的に食べられている鯉の消費を増やし地産地消を促すことでフードマイレージを減らすための提案をしました。
各班とも、現状と課題についてデータを交えて指摘をし、郡山市の強みや特徴を活かした提言を発表しました。
それぞれのグループの発表の後は、感想や質問の時間です。高校生からも研究者からも、いろいろな感想や質問が出ました。
高校生からは
「林業従事者の確保のために、ITを活用することで林業従事者も働きやすくなるのでは?いろいろな分野でIT化が進んでいるけど、林業でのITの活用の状況を知りたい」
「食用の鯉の認知度を上げるための取り組みは具体的にどんなことをイメージしているのですか?」
などのコメントが出ました。
研究者からは
「林業では『スマート林業』としてIT技術が利用されており、現場ではドローンの活用などが行われている。もし興味を持ったらぜひ調べてみてほしい」
「ソーラーシェアリングを実際に導入している農家の方の意見も聞けると、さらに考えが深まると思う」
「他のグループの提案とコラボできそうな提案もあった。アイディアを発展させられたらもっと面白くなると思う」
など、新しい視点や、考えを深めるためのアイディアが提示されました。
郡山市環境部環境政策課の方にも昨年度に引き続き参加いただきました。
高校生のみなさんが暮らす郡山市職員としての視点から「どのグループもとてもよく調べていて、郡山市ならではの提案もよかった。ぜひ、みなさんと一緒に働きたい」というメッセージが贈られました。
研究者と高校生との対話の時間~100年後の未来を想像する~
午後は、昨年度の活動報告会で好評だったワールドカフェ形式でのワークショップです。
福島拠点の研究者と安積黎明高校の先生方も参加し、総勢18名での対話を行いました。
今年度のテーマ「脱炭素社会」について、目標とする未来像を描き、その未来像を実現するための道筋を考える「バックキャスティング思考」のワークショップを行います。
現実の課題に囚われていた思考を少しでも離れ、新しいアイディアがグループワークから生まれることで他の人の視点を受け取り、テーマについて考えるきっかけにしてもらうための企画です。
参加者は3つのテーブルに分かれて座ります。各テーブルにはそれぞれ「新しいエネルギー源・発電技術」「新しい暮らし方」「新しい運輸システム・技術」という、エネルギーの消費と関連が深い3つのテーマが設定されています。
1ラウンド目は100年後の未来を想像することから始まりました。
それぞれのテーブルテーマに関して100年後の未来を想像し、思いつく限り付箋に書いていきます。たくさん出てきた未来図を、同じグループの参加者と共有します。
2ラウンド目は参加者が別テーブルへと移動します。
テーブルに残っていたファシリテーターから1ラウンド目での話し合いの経緯について説明を受け、参加者は思いついた質問やアイディアを付箋に書き足していきます。
3ラウンド目では、参加者は1ラウンド目にいたテーブルへと戻ります。
そこには、自分たちの100年後の未来図に対する質問やアイディアが書き残されています。
ここで、「100年後はどんな未来?その未来はどんなきっかけ、変化で起きた?」という問いが投げかけられ、参加者は未来から現在までさかのぼり、どんなきっかけがあれば自分たちが想像した100年後の未来へとつながるかを考えます。
高校生たちも、研究者も、普段と違う顔ぶれとの対話が盛り上がりました。
3ラウンドを終えたところで、話し合いの結果を各テーブルごとに発表してもらいます。ここで浅野さんの仕掛けがもうひとつありました。
テーブルごとに「今は西暦2124年」という設定で、ワークショップでの話し合いの結果をまとめてもらいます。
さっきまで、みんなで考えていた100年後の未来、つまり2124年に自分がいると仮定して、この100年間に起こったこと=バックキャスティング思考で想像した出来事について話してもらいます。
突然出された、「100年後の世界にいると仮定して話す」という難題に対し、参加した高校生たちは見事に未来人として発表をしてくれました。
時々、困って顔を見合わせる様子も見られましたが、ほかの参加者とも協力して無事3テーブルともやり遂げました。
一年間の集大成である活動報告会を終えた高校生からは
「自分が考えもしなかったような視点に気づいた」
「地元にもっと興味をもてた」
「身近な所から世界規模まで沢山考えることが出来て楽しかった」
などの感想が寄せられました。
この環境カフェふくしまへの参加をきっかけに、これからの環境課題を一緒に取り組む高校生たちが、環境や地域に興味をもってくれたなら、スタッフとしてとても嬉しく思います。
福島拠点では、これまで3年間に渡り実施してきた環境カフェふくしまの活動の経験を活かし、令和6年度も継続して安積黎明高等学校との協働の取り組みを進めていきます。
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概要
- 企画名
- 令和5年度環境カフェふくしま活動報告会
- 開催日時
- 2024年3月28日(木) 11:00~15:00
- 開催場所
- 福島県環境創造センター交流棟 コミュタン福島
- 参加者
- 福島県立安積黎明高等学校、福島拠点の研究者、郡山市職員
プログラム
- 11:00
- 開会挨拶
松田和久(福島拠点長) - 11:05
- 環境カフェふくしまの活動紹介
浅野希梨 - 11:20
- 高校生からの活動報告
- 12:05
- 講評・コメント
五味馨(福島拠点 室長)/遠藤氏(郡山市役所) - 12:15
- お昼休憩
- 13:15
- ワークショップ
浅野希梨 - 14:20
- 各テーブルの内容を発表 感想シェア
- 14:45
- 全体まとめ~講評・コメント~
中村省吾(福島拠点 主任研究員) - 14:50
- 閉会挨拶
林誠二(福島拠点 研究グループ長) - 15:00
- 終了