災害時の可燃物とは
地震や水害などの大規模な自然災害が発生した際の「災害廃棄物」には、自宅内や周辺にある被災したものを片付ける「片付けごみ」と、壊れた家屋等の解体に伴い排出される「解体ごみ」の2種類があります。
「片付けごみ」は、家電類、金属類、スレート、石膏ボード、畳、ガラス・陶磁器類、布団・マットレス、木くず・生木等、コンクリートがら、可燃物など大体10品目(分類)くらいに分けられて仮置場に保管され、次の処理を待ちます。
そのうち、可燃物には、粗大物、紙類、繊維、プラスチック等が混在しておりますが、生ごみは含まれません。
平常時の燃えるごみとは異なる組成となっています。
可燃物の組成を知ることで、燃えないもの混入量や焼却施設への搬入量など災害時の可燃物の処理に係る必要な情報を得ることができ、災害廃棄物を適正かつ円滑・迅速に処理することに貢献できます。
平常時の燃えるごみの組成調査は定期的に実施されていますが、災害時の可燃物の組成調査は、ほとんど実施されたことがありません。
平常時と組成が明らかに異なることから、災害時の可燃物の組成調査を実施しました。
本稿では、令和元年東日本台風(令和元年台風第19号)における「片付けごみ」について、仮置場に集積された可燃物を対象とし、自治体の協力を得て実施した組成調査の様子を紹介します。
組成調査の方法と結果
組成調査の進め方は、次の四つのステップによって構成されます。
- 積み上げられている可燃物の“山”から、おおよその調査対象エリアを選定します。
- 調査対象のかさ密度(体積から重さを知りたい)を知るため、重機を用いて調査対象とした廃棄物を押しつぶさないように、設置された定容のコンテナに投入して、一定の体積の廃棄物を調査対象にします。
- 重機を用いてコンテナから廃棄物を取り出し、ブルーシート上に展開し、作業員で手選別を行います。展開後、先ずは約1 m以上の粗大な廃棄物を取り出します。次に、目視で判定しやすい約10~100 cmの廃棄物を表1に示す品目の区分に従い手で選別します。残った廃棄物については、目開き約40 mmの網を設置したスケルトンバケットを用いてふるった後、通過した物はふるい下残渣とし、網に残った廃棄物は再度、手選別します。
- 組成分析の品目ごとに重量を測定します。測定した重量の合計とコンテナの体積から、かさ密度を計算します。
今回の調査では、12m3の可燃物を作業員のべ36名程度でおよそ2日かけて手選別しました。
分別された廃棄物の合計重量は約2908kg、コンテナ1.5杯分の体積(12m3)で除すると、かさ密度は約243kg/m3でありました。
可燃物が全体の89%を占め、不燃物は全体の10%でした。可燃物の内、紙類の割合が最も多く(26%)、次いで木くず(18%)、布類(17%)、プラスチック(13%)の順でした。
今回の調査とは異なる自治体ですが、平成27年に行った関東・東北豪雨災害による水害廃棄物の組成調査では、可燃物の重量割合が47%であり、分別が行き届いておりませんでした。
四年が経って可燃物の重量割合が9割まで上がったのは、全国的に、自治体の災害廃棄物への対応力が向上したためと考えられます。
これは、被災地の災害廃棄物処理で受援・支援によって自治体職員が経験を積んだこと、大規模な自然災害が全国各地で続発し、災害廃棄物関連の計画、指針、ガイドライン等の策定、改善によって国の指導力を高まったことなどが要因と思われます。
本研究の結果は今後の水害廃棄物処理における基礎データとして活用が期待されます。
参考文献
- 環境省(2018):災害廃棄物対策指針 1-9
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参考文献
- 環境省(2018):災害廃棄物対策指針 1-9
より専門的に知りたい人はこちら
- 環境省 災害廃棄物対策情報サイト http://kouikishori.env.go.jp/
- 国立環境研究所 災害廃棄物情報プラットフォーム <a href="https://dwasteinfo2.nies.go.jp/">https://dwasteinfo2.nies.go.jp/</a>