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2011年9月26日

チャレンジ25
論文誌Climatic Changeに掲載されたIPCC第5次評価報告書に向けた代表的濃度パス(RCP)シナリオについて(お知らせ)

(筑波研究学園都市記者会配付)

平成23年9月26日(月)
独立行政法人国立環境研究所(029-850-内線番号) 
社会環境システム研究センター
 フェロー 甲斐沼美紀子 (2422)
 統合評価モデル研究室長 増井 利彦 (2524)
地球環境研究センター
 気候モデリング・解析研究室長 野沢 徹 (2530)
 主席研究員 山形与志樹 (2545)
地域環境研究センター
 センター長 大原 利眞 (2491)

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書作成に向けて、国立環境研究所の参画する統合評価モデルコンソーシアム1 が中心となって、新たな気候変動予測シナリオである「代表的濃度パス(RCP)」を開発し、その成果を論文にまとめました。

 このシナリオは、 2007年にIPCCより、気候変動による影響を評価するための新しいシナリオの開発について科学者グループに要請が行われたことを受け、まとめられたものです。統合評価モデルコンソーシアムは、排出シナリオであるRCPを気候モデルグループに提供し、その結果を影響・適応グループが利用しています。 RCPには4つの代表的シナリオがあり、国立環境研究所はAIMモデル2 を用いてその一つを提供しました。また、2℃目標(将来の気温上昇を2℃以下に抑えるという目標)を達成するためのシナリオについても発表しました。

 この論文は論文誌Climatic Change の特集号(電子版)に掲載されました。なお、特集号の印刷版は2011年11月に出版されます。

 IPCC の第5次評価報告書に向けて、統合評価モデルコンソーシアムが中心となって新たな気候変動予測シナリオを開発し、その成果を論文等にまとめました。このシナリオは代表的濃度パス(RCP)と呼ばれ、4つの温室効果ガス濃度に対応した排出シナリオであり、より詳細な空間解像度を持つデータが気候モデルグループに提供され、気候変動研究に使われています。

 この4つのシナリオは、大気中の温室効果ガス濃度が放射強制力3 の上昇に与える影響の大きさをもとに特徴づけられており、それぞれRCP8.5、RCP6.0、RCP4.5、RCP2.6と呼ばれています。これらのシナリオは、工業化以前と比較して放射強制力が今世紀末にそれぞれ8.5W/m2 、6.0W/m2、4.5W/m2、2.6W/m2上昇するというシナリオに対応しています。

 1 統合評価モデルコンソーシアムは、2006 年9月にパチャウリIPCC 議長が行った呼びかけに呼応して同年10月に立ち上げられたもので、統合評価モデルを作成する科学者グループと、気候モデルグループや影響・適応グループとが共同して新しいシナリオを作成することが要請された。

詳細は以下を参照

2 Asian Pacific Integrated Model(アジア太平洋統合評価モデル):国立環境研究所と京都大学の共同研究により、アジア太平洋地域の複数の研究所からの協力を得つつ開発をすすめている大規模シミュレーションモデル。温室効果ガス削減と気候変動影響の回避を目指した政策検討のために用いられている。

 3 対流圏の上端におけるエネルギー収支の変化量のこと。正の値の場合は地表の温暖化を、負の値の場合は地表の寒冷化をもたらす。

 RCP8.5は、新シナリオの開発が決まった2007年時点で既に発表されていたシナリオのうち、90%タイル値4 に相当するものであり、2100年における温室効果ガス排出量の最大排出量に相当するシナリオです。また、RCP2.6 は将来の気温上昇を2℃以下に抑えるという目標のもとに開発されたシナリオで、将来排出量の最も低いシナリオです。さらに、放射強制力8.5W/m2と2.6W/m2の間に2つのシナリオを用意することとなり、RCP4.5とRCP6.0を開発しました。国立環境研究所ではAIMモデルを用いて、茨城大学および(独)海洋研究開発機構と共同でRCP6.0を提供しました。

 RCPシナリオの特徴は次のとおりです。

1) 土地利用および土地利用変化による排出量を0.5度メッシュの単位で提供していること。

2) 非常に高い温室効果ガス排出量のシナリオから、逆に非常に低いものまで、これまで論文として提出されたほとんどの温室効果ガス排出量の予測範囲をカバーしていること。

3) 2300年までの超長期のシナリオを提供していること。2300年までのシナリオでは、RCP8.5 については放射強制力12W/m2に安定化、RCP6.0については6.0W/m2、RCP4.5 については4.5W/m2を維持、RCP2.5については2100年レベルの排出量を維持、となるような温室効果ガス排出パス(道程)を推計しました。またこのうち、RCP6.0に関しては、2100年の放射強制力を6.0W/m2とし、そこから2250年までに4.5W/m2に低下させるオーバーシュートシナリオ(安定化目標からの一時的な超過を許容するシナリオ)についても推計しました。RCP6.0は気温が最大時で約 4.9℃上昇するという気候変動の大きいシナリオですが、そこから150年かけて気温上昇を3.6℃に抑えるためには、2℃目標を達成するためのシナリオであるRCP2.6 よりも速い速度での排出削減と、マイナスの排出量を実現しなければならないという、厳しい排出削減対策が必要です。この推計により、一旦上昇した気温を下げることは非常に困難であることが明らかになりました。

4) 2℃に気温上昇を抑えるシナリオはこれまで限られていましたが、RCPを提供した各グループは、放射強制力を2.6W/m2に抑えるシナリオも同時に提供しました。

 この論文は論文誌Climatic Change の特集号(電子版)に掲載されました。特集号の印刷版は2011年11月に出版されます。特集号には、RCPシナリオ以外にも、土地利用の変化、1980年から2010年までのCO、NOx、SO2、ブラックカーボンの排出量データ、寿命の短い温室効果ガスとエアロゾルの化学−気候モデルを用いた解析、1765年から2300年までの温室効果ガス排出量に関する論文が掲載されています。土地利用の変化に関する論文では、様々な初期値と分布を持つ土地被覆、土地利用シナリオを、統一した初期値からのシナリオとして調和させるとともに、動態植生モデル(Dynamic Vegetation Model)に適応した区分に再分類しました。これによって、シナリオ間の比較を容易にしました。

 なお、国立環境研究所におけるRCPシナリオ開発は、第2期中期計画地球温暖化研究プログラムのもとで、環境省環境研究総合推進費における研究課題A-0808およびS-5を通じて実施しました。

 4 RCP8.5が推計する2100年の温室効果ガスの排出量の値より少ない排出量のシナリオが、2007年までに発表されたシナリオの90%を占める状況を表す。非常に排出量の高いシナリオには実現が難しいと思われるものが含まれるので、最大に予想される排出シナリオとして90%タイル値が採用された。

RCP特集号へのリンク

目次
 

このうち、国立環境研究所からは1、3、6、7、9の論文(下線を引いたURLから取得可)の執筆に参加しました。

関連情報:RCP開発の経緯について

 Moss RH, Edmonds JA, Hibbard KA, Manning MR, Rose SK, van Vuuren DP, Carter TR, Emori S, Kainuma M, Kram T et al. (2010) The next generation of scenarios for climate change research and assessment, Nature 463:747–756.

問い合わせ先

 独立行政法人国立環境研究所 社会環境システム研究センター
  フェロー    甲斐沼美紀子(029-850-2422)

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