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実験用温室

 

高さ18mの観測タワー

国立環境研究所構内および別団地にある生態系研究フィールド(実験圃場)では、植物、微生物、無脊椎動物などからなる生態系を対象とし、環境変化による影響を調べる実験を行っています。ここでは小規模の区画(最大400平方メートル)における実験が可能です。 高さ18mの観測タワーも備えており、試験地に生育させた草地・樹林を半鳥瞰的視野から遠隔計測するために使用されています。
生物・生態系環境研究センターが管理を担当しておりますが、他のセンターの研究にも広く利用されています。 


研究事例『放射性物質により汚染された土壌からの植物による汚染物質吸収に関する研究』

  •  担当者: 生物・生態系環境研究センター 玉置雅紀

福島第一原発事故により放射性物質による広域な土壌汚染が引き起こされました。汚染には高レベルから低レベルまでありますが、そのうち低レベルでの汚染は広い範囲にわたって起きているにも関わらず、そのような場所での除染は進んでいないのが現状です。     
低レベル汚染土壌における除染の方法の一つとして、植物による浄化能力(ファイトレメディエーション)の利用が考えられます。放射性物質の吸収効率が高い植物や条件を明らかすることができれば、除染に有効な方法を提供することができます。     
そこで、本研究では以下のことを明らかにすることを目的としています。     
(1)どのような植物がどの程度放射性物質を吸収するのか     
(2)どのような汚染度の土壌がファイトレメディエーションの対象となるのか

これまでに放射性セシウム(137Cs)に汚染された土壌の植物による吸収能を評価するため、20種26品種の植物による137Csの吸収能力を調べました。その結果、137Csの吸収能力には、植物間で10倍程度のばらつきがあること、 また、地上部における葉の占める割合が多い植物ほど高い吸収能を示すことが明らかになりました。
現在は137Csの吸収能力が高いことが知られている多年生植物について、蓄積能力の世代による変化を調べています。
 

表土回収の様子(2011/7/5)

 

植物栽培の様子


研究事例『ユスリカのDNAバーコーディング』

  •  担当者: 生物・生態系環境研究センター 高村健二・上野隆平・今藤夏子・大林夏湖・及川康子

ユスリカはほとんど全ての淡水域に生息し、しばしば量的にも優占する昆虫です。汚濁の強い水域から大発生して迷惑害虫となる一方で、魚や岸沿いに生息する鳥や昆虫などの餌となるため、生態系の保全・管理の上で重要な生物です。

ところがユスリカはオスの成虫以外では種を判別することが難しいため、十分な研究・調査が行われてきませんでした。そこで、水中にすむ幼虫(いわゆるアカムシ)でも種が判別できるような手法開発(DNAバーコーディング)を進めています。

生物がもつDNAには種固有の遺伝子塩基配列が含まれているため、その塩基配列(DNAバーコード)を調べて種判別に利用します。そのためにまず実験用の淡水域から羽化する成虫を集めたり、幼虫を捕獲して実験室で羽化させてDNAを抽出するための標本を作成しています。
 

羽化したユスリカを捕獲するトラップ


研究事例『トンボを使った環境汚染の広域モニタリング手法の開発』

  •  担当者: 環境計測研究センター 柴田康行

2009年にストックホルム条約の対象物質に追加されたPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)ならびに類縁フッ素系界面活性剤による環境汚染実態を調べる過程で、トンボが比較的高濃度にこれらを蓄積していることが明らかになりました。

そこで、トンボの種類や性別、羽化後の捕獲時期などPFOSの蓄積濃度との関係を明らかにし、相互に比較可能なデータを出すための手法確立を目指した研究を進めています。
 

ヤゴの飼育池


研究事例『遺伝子組換え生物(ナタネ)による影響監視調査』

  •  担当者: 生物・生態系環境研究センター 青野光子

主として食用油に加工するためにわが国に輸入されている遺伝子組換えセイヨウナタネには、除草剤耐性遺伝子が導入されています。セイヨウナタネやその近縁の野生種である在来ナタネ、カラシナ等は農地ではない一般環境、すなわち道路沿いや河川敷のような場所に自生しています。そのような場所に除草剤耐性セイヨウナタネがどの程度生育しているかや、導入遺伝子が在来ナタネ、カラシナ等に花粉を介して移っているかどうかについて継続的にモニタリングをしています。

生態系フィールドでは、道路沿いや河川敷などの野外で採取したナタネ類の種子を温室(遺伝子組換え実験施設)において生育させ、除草剤耐性等の分析を行っています。
 

生育中のナタネ


研究事例『農薬が水田の生物多様性に及ぼす影響調査』

  •  担当者: 生物・生態系環境研究センター 五箇公一

近年、日本の水田では、浸透移行型という、稲の根から吸収されて植物体内に移行することで、害虫の吸汁被害を防ぐ性質を持つ殺虫剤が広く使用されています。主にネオニコチノイド系と呼ばれる新しいタイプの殺虫剤で、極めて微量で害虫に効果を示すとともに、害虫以外の生物に対しては、人間も含めて安全性が高い薬剤とされ、農業現場で推奨されています。

一方で、この新型薬剤が使われるようになってから、アキアカネなど、水田に生息する昆虫類が減ってきているという報告もあります。水田は、日本全国で260万ヘクタールにもおよぶ面積を占め、湿地の代替生息地として生物多様性を維持する重要な役割を果たしています。我々は、同じ面積の実験用水田を複数作り、ネオニコチノイド系薬剤をはじめとする、様々な水田用殺虫剤を実際に使用して、水田中に発生する生物の種数や個体数を調査して、殺虫剤を使用していない水田と比較することで、殺虫剤が水田中の生物多様性に及ぼす影響を研究しています。

これまでに、農薬の影響は、農薬のもつ毒性の強さだけではなく、水への溶けやすさや、土壌に対する吸着の強さ、分解の早さなどの農薬の物理化学的性質によっても大きく変動することが分かってきています。また、メダカやミジンコに安全とされる薬剤でも、実際の生態系では、群集の構造を変えるほどの影響が出ることが明らかとなっています。
こうした野外環境における具体的データを蓄積することで、農薬のリスク管理政策に役立てることが本研究の目的です。


 

止水タンク

 

実験用水田

Last updated Jan. 22, 2013