福島県の「過去」と「現在」を学び、「未来」を共に考える[令和4年度郡山市立郡山第六中学校出張講座レポート]サムネイル
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福島県の「過去」と「現在」を学び、「未来」を共に考える[令和4年度郡山市立郡山第六中学校出張講座レポート]

中学三年生へ「理科」と「社会」の視点から放射線教育

2022年10月11日、福島県郡山市立郡山第六中学校にて、福島県環境創造センターによる出張講座が開催されました。

この出張講座は、福島県が進める放射線教育の一貫として、中学生の皆さんに福島県の環境回復、そして未来の創造について考える機会を持ってもらうため、福島県環境創造センターに所属する三機関(福島県・日本原子力研究開発機構(JAEA)・国立環境研究所(NIES))が、2018年度から毎年行っているものです。

前年(2021年)度の開催レポートはこちら
研究者と生徒がともに、福島の環境を取り戻すための知識や考え方を学ぶ[令和3年度郡山市立郡山第六中学校出張講座・講師派遣レポート]

国立環境研究所は、中学三年生の皆さんを対象に、「理科」と「社会」の視点から、写真等を交えて講義を行いました。

体育館で講義する全体の様子

はじめに「理科編」では、吉岡主任研究員が「原発事故による避難指示と生物」というタイトルで講義を行いました。
避難指示区域が設定され住民が避難したことで野生動物にどのように影響を与えたのか、区域内で昆虫や野生動物を調査するためにはどのような工夫が必要か、実際の調査に使われる装置や撮影された野生動物の映像を見せながらの説明に、興味深そうにスライドに見入る皆さんの姿が印象的でした。

講義資料:避難しない野生生物は避難指示区域でどうなっている?のイラスト

続いて「社会編」。辻主任研究員による「福島原発事故後の社会対応と復興に関する基礎知識」という講義です。
原発事故とその後の福島県内の影響、除染活動や除去土壌の実態等、写真やクイズを交えて説明し、福島県の社会が抱える課題への解決に向けての問題提起を行いました。
帰還困難区域に指定され、現在にいたるまで10年以上故郷に帰る事が出来ない人が居ると知った皆さんの深刻な表情が見て取れました。

講義資料:仮置き場での一時保管の写真

今回の出前講座では、生徒の皆さんはグループ毎にタブレットを持参し、講師からの問いかけに対してグループ内で積極的に議論をし、沢山の回答や意見を作成してくれました。

また、講義終了後のアンケートでは「福島県の避難指示区域に住んでいる虫や動物などをつかまえる方法が自分には想像できない発想で、すごいと思った。」「(震災から)11年以上たった今でも自分の家に帰れない人がいることが印象深かった。」という感想や、「県外の人は、福島のことや放射線のことについて、今どのように感じているのか気になる。」という意見も寄せられ、皆さんの福島県が持つ課題や放射線に対する関心の深さが伺えました。

タブレットを使用しながらグループで議論する生徒たちの写真

今回講義を受けた中学三年生の皆さんは、震災当時は4歳、成長のなかで沢山の情報や復興の過程に直に触れてきた世代です。

そのような若い世代の皆さんが、今回の講座から積極的に学びを得て、福島県が持つ課題に真剣に向き合おうとする姿を目の当たりにすることが出来、地域と共に環境回復と地域環境の創生を目指す国立環境研究所福島地域協働研究拠点の一員として、改めて背筋が伸びる思いがした、とても貴重な一日となりました。

手を挙げる生徒たちの写真

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概要

講義名
令和4年度郡山第六中学校出前講座
開催日時
2022年10月11日
会場
郡山市立郡山第六中学校
対象
中学3年生
参加者
約200名
主催
福島県環境創造センター

講師

吉岡 明良

福島地域協働研究拠点 環境影響評価研究室 主任研究員

東京大学大学院農学生命科学研究科、国立環境研究所生物・生態系環境研究センターを経て同研究所福島支部(現:福島地域協働研究拠点)に着任。景観生態学や昆虫学の視点から生物多様性の保全、自然共生型社会の推進に関わる研究を行う。

辻 岳史

福島地域協働研究拠点 地域環境創生研究室 主任研究員

名古屋大学大学院環境学研究科社会環境学専攻修了、2017年より国立環境研究所福島支部(現:福島地域協働研究拠点)に勤務。専門は社会学。