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サケ科魚類の産卵回遊のタイミングに見られる個体間差異―環境要因と社会性の役割について


論文情報
タイトル
Individual variation in spawning migration timing in a salmonid fish-Exploring roles of environmental and social cues
サケ科魚類の産卵回遊のタイミングに見られる個体間差異―環境要因と社会性の役割について
著者
Fukushima M., Rand P.S. 福島 路生, ピート ランド
*下線で示した著者は国立環境研究所所属
雑誌
Ecology and Evolution  DOI:10.1002/ece3.10101
受理・掲載
2023年5月5日 受理, 2023年5月17日 オンライン掲載 オンライン公開への外部リンク
概要

絶滅危惧種に指定されたサケ科魚類イトウ(Parahucho perryi)の産卵回遊のタイミングを調べるため、123個体をPITタグで標識し、2018・2019年の産卵期の行動を追跡した。その結果、彼らが産卵河川に遡上するタイミング、産卵を終えて降河するタイミングは両年ともシーズン中、個体ごとにその順番がほぼ決まっていた。さらにシーズン間でも一貫性が保たれ、同一個体の遡上・降河のタイミング(順番)は2年間でほぼ一定であった。この回遊行動の一貫性、再現性はメスで特に強く、産卵1週間前に河口付近で経験する(各個体に特異的な)水温と流量を引き金にして回遊が開始される可能性、またその結果再現性が保たれている可能性が示唆された。一方、(魚類でも社会性が行動を左右することが報告されているが)、イトウの産卵回遊に社会性は検出されなかった。

イトウのメス(赤〇)とオス(青〇)の産卵回遊のタイミング

イトウのメス(赤〇)とオス(青〇)の産卵回遊のタイミング。MS1: 本流の観測地点に海から到達(遡上)したタイミング、MS2: 産卵河川(支流)に入ったタイミング、MS3: 産卵後に支流を去ったタイミング、MS4: 本流の観測地点を去った(降河した)タイミング。同一個体を直線で結んだ。スピアマンの順位相関(ρF: メス、ρM: オス)は* 0.01 < p < 0.05, ** 0.001 < p < 0.01, *** p < 0.001

イトウ

絶滅危惧種に指定されたサケ科魚類イトウ(Parahucho perryi