植物の呼吸速度は温度が上昇すると早くなることが多いが、その温度依存性を調べてみると、いわゆる化学反応に見られるアレニウス直線プロット*から逸脱した曲線を描くことが多い。本研究では、植物の呼吸においてATP合成と共役するシトクロム経路CP末端の複合体IV (COX) と、ATP合成と共役しないバイパス経路AP末端酸化酵素 alternative oxidase (AOX) の双方で酸素が消費されている過程に着目し、植物呼吸による酸素消費反応のキネティックモデルを用いて温度依存性のシミュレーションを行った。
実測で観察されるような曲線は、(i) ATP合成と共役するCPの律速段階や (ii) APへの電子配分が温度に応じて柔軟に変化していることによる可能性があることが明らかとなった。
*化学反応において、温度の逆数をx軸、反応速度定数の対数をy軸にとると直線が得られる。直線の傾きは反応の活性化エネルギー。
図: 植物のミトコンドリア呼吸鎖の電子の流れ
流れてきた電子はCOXとAOXで酸素に渡されて、酸素は水になる。