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植物の呼吸速度温度依存性に関する理論研究


論文情報
タイトル
Theoretical analysis of a temperature‐dependent model of respiratory O2 consumption using the kinetics of the cytochrome and alternative pathways
植物の呼吸速度温度依存性に関する理論研究
著者
Inoue T., Noguchi K.
井上 智美, 野口 航
雑誌
New Phytologist DOI:10.1111/nph.16964
受理・掲載
2020年9月14日 受理、2020年9月28日 オンライン掲載 オンライン公開への外部リンク
概要

植物の呼吸速度は温度が上昇すると早くなることが多いが、その温度依存性を調べてみると、いわゆる化学反応に見られるアレニウス直線プロットから逸脱した曲線を描くことが多い。本研究では、植物の呼吸においてATP合成と共役するシトクロム経路CP末端の複合体IV (COX) と、ATP合成と共役しないバイパス経路AP末端酸化酵素 alternative oxidase (AOX) の双方で酸素が消費されている過程に着目し、植物呼吸による酸素消費反応のキネティックモデルを用いて温度依存性のシミュレーションを行った。
実測で観察されるような曲線は、(i) ATP合成と共役するCPの律速段階や (ii) APへの電子配分が温度に応じて柔軟に変化していることによる可能性があることが明らかとなった。

*化学反応において、温度の逆数をx軸、反応速度定数の対数をy軸にとると直線が得られる。直線の傾きは反応の活性化エネルギー。

植物のミトコンドリア呼吸鎖の電子の流れ
図: 植物のミトコンドリア呼吸鎖の電子の流れ
流れてきた電子はCOXとAOXで酸素に渡されて、酸素は水になる。