植物の3次元構造の計測は、植物のモニタリングや、環境変化に対する植物応答を理解するために有用であると考えられる。3Dイメージング技術、特にSfM(Structure from Motion)とマルチカメラ撮影システム(MCP)を組み合わせた技術は、低コスト、近接、高速での画像取得が可能であることから、植物の構造を計測するために研究されてきた。しかし、複雑な3次元構造を持つ植物モデルの構築には時間がかかり、かつ適切な3次元イメージの構築に失敗することがあることが課題であった。そこで、本研究では、MCPをベースとしたSfMシステムを開発し、適切な3次元修復の方法と最適なカメラ撮影角度範囲について検討した。先ず、最適なカメラ撮影角度範囲について検討したところ、天頂角については、12°から60°に設置したカメラからの画像を用いることが適切であることが明らかになった。次に、2つの3次元モデル構築手法について検討を行った。方法1では、各々の適切な天頂角から撮影した画像を用いて部分的な高密度点群をそれぞれ作成し、それらの高密度点群を統合し、3次元モデルを作成した。一方、方法2では、適切な天頂角からの画像全てを用いて3次元モデルを作成した。その結果、方法1では、高速な3次元修復が可能であり、かつ葉面積、葉長、葉幅、茎長などの植物の構造の定量的な再現性も高かった。例えば、葉面積、葉長、葉幅、茎長の誤差範囲は、それぞれ2.6%-4.4%, 0.2%-2.2%, 1.0%-4.9%, 1.9%-2.8%であった。実験の結果、不適切な撮影角度を用いたり、不完全な画像を組み込むと、SfMにより再構築された3次元モデルの精度が低下し、3次元モデル再構築の計算時間が増加することが判明した。
図1. マルチカメラ撮影システム(MCP)の配置イメージ。
天頂角(α)で12°間隔で離れた位置に市販のカメラ(Canon EOS Kiss X7, Canon Industrial Co., Ltd., Tokyo, Japan)が合計10台配置されている。
植物サンプルを設置するターンテーブルはステッピングモーターによって回転する。
図2. ベニベンケイ(Kalanchoe blossfeldiana)の3次元モデルの例。
植物の構造が複雑であるにも関わらず、構築された3次元モデルには葉や枝の情報の欠落は見られない。